青山のオーダースーツ「シタテ」 評判とその実力、留意点

青山商事のオーダースーツ クオリティオーダー・シタテ(SHITATE)
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青山商事のオーダースーツブランド「クオリティオーダー・シタテ(Quality Order SHITATE)」が好調という。

税込み3万円台からと既製スーツと大きく変わらない値段で購入でき、全国700店弱の「洋服の青山」全店でオーダーできる。

手の届きやすい価格と高いクオリティが両立し、自分の好みやサイズにフィットする一着が仕立てられると評判も上々だ。

普段は既製スーツで十分という人たちや、フレッシャーズなどスーツを初めて着る人たちから支持を集めているという。

本記事では「シタテ」の評判や好調の要因を解き明かし、リピート意向率が94%に達するその実力に迫る。

さらに、オーダースーツ入門者にとって利点や留意すべき点などもひも解いてみたい。

目次

お手ごろ価格のオーダースーツ

オーダースーツが今、若者の間で人気を呼んでいる。

オーダースーツといえば、かつては羽振りのいい熟年のビジネスマンが着るイメージだった。

価格も最低でも20~30万円、100万円を超えることもざらではなかった。

高級オーダースーツ
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ところが今、その状況は一変している。

既製スーツと大きく変わらない値段で買えるようになっているのだ。

コストパフォーマンスを追求しつつ、より自分の好みやサイズにフットしたスーツが仕立てられる。

グローバルスタイル、オーダースーツSADA、FABRIC TOKYO、ユニクロなど、お手ごろ価格のオーダースーツに商機を見いだすブランドも数多い。

紳士服量販店の大手ではコナカの「ディファレンス」、AOKI の「クイックオーダースーツ(QOS)」などもある。

紳士服市場といえば長らく低迷が続く。

カジュアル化の波在宅勤務の広がりにより、スーツの着用機会が減ったことが要因だ。

そこにオーダースーツが一筋の明るい光をともしつつある。

ネット上の口コミも活況

ネット上でもオーダースーツの話題が活況を呈している。

比較サイトやランキングサイトなどが次々にオーダースーツを取り上げる。

グーグルのWEB検索トレンドを見ても、高止まりの傾向にあり、関心の高さがうかがえる。

オーダースーツにまつわるSNS上の投稿やレビューサイトの口コミも尽きることがない。

フィット感や着心地、シルエットについてなど総じてポジティブな書き込みも多く、「もう既製スーツには戻れない」という声もみかける。

想定以上の満足感ゆえ、人にすすめたい、シェアしたいという意欲が高まるのだろう。

既にオーダースーツを経験した人からこれから経験する人への情報のバトンが盛んに渡されているのだ。

クオリティオーダー・シタテ(SHITATE)

そんなブームの兆しを見せるオーダースーツだが、その中でもひときわ売れ行き好調なオーダースーツブランドがある。

青山商事の「クオリティオーダー・シタテ/Quality Order SHITATE(以下「シタテ」)」だ。

発売の開始は2019年。

お手ごろ価格のオーダースーツとしては他社に比べ遅い立ち上がりだったが、今や急先鋒的な存在になりつつある。

普段は既製スーツを着ている人や新入学や新入社などを迎えるフレッシャーズの心をつかみ、販売は堅調な伸びを維持している。

オフィス回帰や冠婚葬祭の復活でスーツの着用機会が戻ってきたこととも相まって、「シタテ」が青山商事の増収総益にも寄与しているという。

「2着目半額セール」など低価格が基本路線だった同社だが、その平均の販売単価も上昇傾向にあるようだ。

競合ブランドも多く存在するなか、とりわけ「シタテ」が評判を呼び、好調をキープするのはなぜか?

結論からいえば、それはひとえに業界最大手の青山商事店舗網や人員など持てるスキルとリソースを「シタテ」に最大限に生かしているからだ。

市場のパイが膨らんでいるなら、大きな分け前にあずかれるのはリーダー企業ということなのだろう。

ここからは、「シタテ」のオーダースーツとしての実力に迫り、その評判と好調の要因をひも解いてみたい。

「シタテ」の評判の要因は?

圧倒的なコストパフォーマンス

まずはなんといってもオーダースーツ1着が税込31,900円~という手ごろな価格帯が支持される要因だろう。

既製スーツと大きく変わらない。

そもそも「シタテ」は “もっと多くの人に、もっと気軽に”をテーマとするブランド。

その敷居の低さが普段は既製スーツ派の人たちや、フレッシャーズなどスーツを初めて買う人たちに試してみようという気にさせたのだ。

一方で後述するが、オーダースーツならではの高いクオリティも担保されており、高級生地やオプションの選択によっては10万円を超えるスーツもオーダーできる。

昨今はスーツの着用機会が減った分、ここぞというときのために一着の質にこだわろうという人も増えているらしい。

勝負スーツ
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勝負スーツ
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「シタテ」はそんな「勝負スーツ」を揃えたいというニーズにも十分応え得るブランドなのだ。

「洋服の青山」全店で購入可能

「シタテ」は青山商事が手がける「洋服の青山」全店でオーダーできる。

この面的な販路展開がブランドの好調を支える要因だろう。

従来のオーダースーツブランドの多くはオーダースーツしか扱わないオーダー専門店まで出向く必要があった。

そうした店舗はたいてい大都市圏に集中する。

一方の「シタテ」は、地方の郊外もカバーし、47都道府県で700弱の「洋服の青山」にそれぞれ受注コーナーがある。

オーダー専門店であれば、一度足を踏み入れれば囲い込まれてしまいそうな不安がよぎる。

一方、「シタテ」であれば慣れ親しんだ店舗で、しかも既製スーツと併設するスペースでオーダーできるのだ。

その隔てのなさオーダースーツ入門者にとっては心理的な安心感につながる。

さらに初めてのオーダーするとなれば慎重を期したいもの。

「寄らば大樹の陰」の心理も働く。

たとえ普段は「洋服の青山」で滅多に買わない人でも、ブランドや店舗の存在には馴染んでいる。

オーダースーツに何となく興味を感じたとき、その身近さが強力な引きとなるだろう。

パターンの選択肢の幅広さ

お手ごろ価格のオーダースーツはたいていはパターンオーダーとなる。

自分の体形に合ったパターン、いわゆる見本服(ゲージ服)をまず選び、そこから着丈、袖丈、股下、ウエストなどを好みのフィット感に応じて調整していく。

「シタテ」はその見本服が実に豊富に用意されているのだ。

まずは「スリム」と「ベーシック」2スタイルがある。

公式サイトには、「スリム」カジュアルにも合わせられる、より細身で、スタイリッシュなシルエット、「ベーシック」定番的なベーシックモデルで、体格のしっかりした人に向いているとある。

そのうえで全60種類のサイズがあり、身長150~195センチ、ウエスト68~127センチに対応するという(2024年4月時点)。

この見本服は住宅展示場でいえば注文住宅用のモデルハウスにあたるのだろう。

モデルハウス
モデルハウス

理想にもっとも近いモデルハウスを選び、住み心地などを疑似体験しながら、外観や内装、間取りや設備などの細部を詰めていく。

スーツのパターンオーダーも同様のイメージだ。

そうだとすれば、起点となる見本服のバリエーションは豊富にあったほうがいい。

細部は未調整ながら、こういうシルエットでここにこんなゆとりができて、こんな着心地になるんだとリアルに体感できる。

「シタテ」のパターンオーダーはそこにこだわったのだろう。

実は「シタテ」のリアルユーザーにはスーツに人一倍関心がある人たちだけに限らない。

体格が大きい、上下でサイズが合わない、筋肉質体形といった既製スーツではサイズやフィット感に難があった人たちも多くいるそうだ。

生地やオプションの種類の豊富さ

そして「シタテ」は200種類以上の高品質な生地から選べることも強みの1つだ。

公式サイトによれば、ベーシックなものから個性的なものまで取り揃えられており、しかもシーズンごとに刷新されるため、オントレンドのデザインでスーツを仕立てられという。

200種類以上の高品質な生地

一度オーダーを経験するとそのブランドと長いつきあいとなることもある。

一度「シタテ」をオーダーすると、ほぼ全員がまたまたオーダーしたいと思うらしい(リピート意向率94%)

他のブランドへの乗り換えがしにくくなるロックイン効果(囲い込み効果)が自然と働くのである。

最初は持て余し気味だった生地の種類の多さも、徐々にスーツへのこだわりが出てくると、その選択の幅が必須条件とさえ思えるときも来るだろう。

また、生地以外の選択肢も実に豊富だ。

裏地素材やボタンの種類、襟の形、ポケットのデザインまでディテールのカスタマイズを存分に楽しめる。

逆にいえば、既製スーツがどれほど狭い選択肢の中から選ばされていたかを思い知ることになる。

また、スーツの機能性という点でもきめが細かい。

ストレッチ性撥水(はっすい)加工、ウォッシャブル加工、形状記憶プリーツ(折り目)など選ぶ生地にもよるが様々な機能が選択できる。

専任スタイリストによる接客

自分にしっくりと馴染むスーツを仕立てるには接客を担当するスタイリスト(フィッター)の役割は大きい。

どういう用途やオケージョンで着るために仕立てようとしているのか、そもそもどんなイメージをスーツに求めるのか。

そのモヤっとしたことの言語化を助け、上手に最適解に導いてくれるのが「シタテ」専任のスタイリストたちだ。

またパターンオーダーでは自分の体形に合った見本服を選ぶことになるが、そのためには基本部位の身体の採寸が必要となる。

採寸
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採寸
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それもスタイリストが担う役割の1つといえる。

見本服にいったん袖を通し、その後は対話を重ねながら着丈、袖丈、ウエストなどをミリ単位で調整していく。

さらにはスーツ入門者となれば、生地やオプションを選択する際に、それらのメリットやデメリット、あるいは仕上がりのイメージなども改めて説明を受けたいところだろう。

専任スタイリストはソムリエやコンシェルジュ、あるいはパーソナルジムのトレーナーといった役回りにも近いのだ。

専任スタイリストはソムリエやコンシェルジュ、あるいはパーソナルジムのトレーナーといった役回り

青山商事は700近い「洋服の青山」の全店で「シタテ」を導入するのに4年の歳月をかけている。

ニーズをくみ取り、的確に対応する力を備えた専任スタイリストを養成するのにそれだけの時間が必要だったのだ。

また、青山商事ではオーダースーツ専門店「ユニバーサルランゲージ メジャーズ(UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S)を展開しているが、その専門店ならではの接客ノウハウを共有できることも大きかったようだ。

「シタテ」でオーダーする際の留意点

ここまで「シタテ」が評判を勝ち取った理由を説明してきたが、実際に「シタテ」でオーダーする際にはいくつか留意点がある。

専任スタイリストの共同作業でスーツを仕立てる以上、オーダーする側にも協力と寛容さが求められるのだ。

歩み寄りや譲歩といってもいい。

とりわけ、初めてオーダーするという人は、ふらっと店に立ち寄ってサクッと買ってかえるという既製服の前提を無意識に置いてしまいかねない。

そこで「シタテ」でオーダーする際の留意点をここでまとめておこう。

店舗でのオーダーは予約制

初めて「シタテ」でオーダーする場合、来店予約したうえで「洋服の青山」の各店舗に出向く必要がある。

既製スーツのように店に行けばいつでも対応してくれるわけではない。

公式サイトには当日予約は原則不可とあり、やむを得ず当日予約を希望する場合は直接店舗に問い合わせることになる。

所要時間は映画1本の長さ

公式サイトには店舗に出向いてから接客が終わるまでの所要時間は約30分~1時間がおよその目安とある。

ただし、それも仕立てるスーツへのニーズがどれほど絞られているかによるだろう。

オーダースーツ入門者が専任スタイリストと対話を重ねて、自分が求めるものを固めていくとなると、1本の映画をみるぐらいの時間は見込んでおいたほうがいいだろう。

数ある生地やオプションから選ぶとなれば、それぞれの選択肢がどう仕上がりや着心地に影響をするのかを理解しないといけない。

このあたりが普段は既製スーツ派という人には一番面倒に感じるかもしれない。

しかし、一度ハードルを越えると2着目以降はずっとスムーズになる。

オンライン上でも注文できるようになるのだ。

時間的に余裕のあるときに予約を入れ、スーツの解剖学の個人レッスンを受けるぐらいの気持ちで臨みたい。

生地選択は事前にシミュレートを

中でも時間がかかるのが200種類以上あるという生地の選択だろう。

公式サイトには「オンラインオーダー体験」というページが開設されている(2024年4月時点)。

ここでざっくりと予習をしておくとよい。

そのページではすべてのサンプル生地の画像が閲覧できるが、色や柄、ブランド、着用シーズン、価格などで絞り込み検索ができるようになっている。

たとえば色であればサイドバーにネイビー、チャコール、ダークブラウンなど十数種の色名が一覧となって表示され、そこにチェックを入れると該当するサンプル生地の画像が絞り込まれて表示される。

ただし、初期設定ではサンプル画像が「おすすめ順」に表示されるため、3万円台とはかけ離れた高価な生地も入り交じることになる。

そこで設定を「価格が安い順」に変更した上で、手の届きやすい現実的な選択肢を優先的に表示させるのもいいだろう。

200種類以上あるとはいえ、予算や自分の好みの傾向でその数はみるみるうちに絞り込まれていく。

予め生地番号を控え、店舗で伝えることもできるが、何となく生地のバリェーションの分類体系を頭に入れておくぐらいでもよい。

生地選択時のスタイリストとの対話がスムーズになること請け合いだ。

なお、店舗では生地見本に触ることができる。

人の触覚はとても鋭敏で、柔らかさやハリ、コシなどが生地によって違うことがビビットにわかるらしい。

自らの触覚情報を頼りに、フィット感や着心地をイメージし、生地を選ぶのが一番の近道かもしれない。

納期は「最短」で2週間

「シタテ」はパターンオーダーのため、フルオーダーのスーツに比べ納期は短い。

公式サイトには発注から引き渡しまで14日~16日程度とあるが、ばらつきはあるだろう。

何かの集まりなど着用する日時が既に決まっているのであれば、そこから逆算してオーダーすることになる。

その場合はある程度バッファーを見ておいたほうがよい。

前述の公式サイトの「オンラインオーダー体験」で生地を「納期」でも絞り込めるようになっているが、「最短2週間納期」にチェックを入れるとグッと選択肢が減ってしまう。

最短の納期が希望なら、そのなかから選ぶことになる。

試着のうえ仕上がり確認を

公式サイトによれば、「シタテ」では引き取りは郵送費はかかるものの、郵送でも可能らしい。

ただし、基本は店舗での引き渡しを推奨している。

既製服でウエストを直したぐらいなら、試着せずにそそくさと持ち帰る人もいるかもしれない。

しかし、そこはひと呼吸おいて一度試着してみよう。

サイズの微調整が必要となれば無料で請け負ってもらえるようだ。

ただし、なかなか自分では気づきにくいこともある。

可能であれば担当してくれたスタイリストと一緒に最終チェックをするようにしよう。

ミリ単位で採寸を担ったスタイリストなら、プロの目線で調整の余地を指摘してくれることも期待できる。

オーダースーツはスタイリストとの共同作業であり、最終チェックもその一環なのだ。

また、「シタテ」では1年間のロングアフターケアがついており、その期間内であればウエストや裾上げなど無償で微調整してくれるという。

せっかく細部まで採寸して仕立てたスーツだが、生活環境や仕事の繁閑の影響で急に体型が変わることもまれではない。

フィット感や着心地を維持するのにはうれしいサービスだろう。

予算の上限は決めておく

高嶺(たかね)の花だったオーダースーツが3万円台で仕立てられるのが「シタテ」の魅力の1つ。

その触れ込みを信じてオーダーを決めた人もいるはずだ。

しかし、実際は生地やオプションの選択次第で最終的な価格は大きくぶれる。

既製スーツなら「作業着」と割り切って無難なものを選んでいればよかった。

ところがオーダースーツともなるとあれこれこだわりたくなってくる。

様々な選択肢が提示され、風合いや着心地の違いなどに否応なしに注意が向かい、自分の好みも段々と分かってくる。

ついつい財布のひもが緩むことにもなりかねない。

ましてや親身な接客を受けているのだ。

気持ちが冷静なうちに予算の上限を決めておいたほうがよいだろう。

共通言語を押さえておく

ファッション雑誌にはエレガントやクラシック、ゴージャスといったファッションイメージを表す用語がよく登場する。

業界内では共通言語になっており、商品のデザインやテイストを言い表すのに使われ、効率的なコミュニケーションに一役買っている。

そこで基本的な用語を押さえておき、自分がオーダースーツに求めるイメージにそれらの用語でラベルを貼っておくとよい。

たとえば「カジュアルに寄ったスーツは既にあるので、今回は少しシックな感じにしたい。」といった伝え方ができるようになる。

以下は日本カラーデザイン研究所が開発した「言語イメージスケール」から、スーツとの相性のよいクール&ハード系ゾーンの感性用語を抜粋したもの。

ちなみにイメージスケール全体では16イメージに分類され、180の感性用語が付されている。

全体像をネット上で確認するには印刷インキ大手のartience(アーティエンス、旧東洋インキSCホールディングス)のコラムページが比較的わかりやすい。

ファッションイメージの分類
  • クール・カジュアル
    • 軽快な、青春の、若々しい、スカッとした、スポーティな
  • モダン
    • モダンな、スピーディな、進歩的な、革新的な
  • シック
    • シックな、洗練された、スマートな、しゃれた、都会的な、さりげない、文化的な、知的な、質素な、微妙な、慎ましい、静かな、冷静な、閑静な、風流な、枯れた、ひなびた、地味な
  • ダンディ
    • ダンディな、渋い、紳士的な、男性的な、りりしい、きりりとした、真面目な、堅実な
  • クラシック
    • クラシックな、伝統的な、アンティークな、丹念な、味わい深い、なつかしい、古風な
  • フォーマル
    • フォーマルな、高雅な、高尚な、気高い、神聖な、荘厳な、厳粛な

オーダースーツネイティブの時代へ

今回の記事では青山商事のオーダースーツブランド「シタテ」の評判の要因やその実力を探ってきた。

オーダースーツながら税込み3万円台から購入でき、一人ひとりの好みやサイズにフィットする一着が仕立てられる。

しかも全国の「洋服の青山」全店専任のスタイリストの接客を受ける形でオーダーできるのだ。

お手ごろ価格とオーダーメイドの高いクオリティが両立できる背景には業界最大手の青山商事ならではのスケールメリットが存分に発揮されていることがあるだろう。

既製スーツと同じ店舗で隔てなくオーダーできることはユーザーの利便性と安心につながると先に述べたが、青山商事にとっても店舗や人員を含むインフラへの新規投資を抑えられるというメリットもあったはずだ。

買い付けた生地は既製スーツとオーダースーツの双方に使えるため、それだけコストを抑えた形で多くの種類を取り扱える。

「シタテ」はランダムな要因がいくつも絡んでたまたま軌道に乗ったというわけではない。

その好調を支えているのは、青山商事がしかるべきタイミングで、しかるべき経営資源を新たなオーダー事業に上手に割いたことにある。

青山商事は「シタテ」以外にも2016年からオーダースーツ専門店の「ユニバーサルランゲージメジャーズ(UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S)」を展開している。

さらにはオーダースーツの老舗「麻布テーラー」の運営会社の子会社化も果たした。

同社は近い将来、スーツの総販売着数に占めるオーダーの比率を5割まで引き上げる意向だという。

「シタテ」でオーダースーツに馴染んだユーザーが、その後はランクアップし、同社傘下のオーダースーツ専門店を利用することも考えられる。

その意味では「シタテ」は青田買い的なエントリー・ブランドとしての役割も担っているといえる。

今やガラケーをうっすらとしか記憶にないスマホネイティブ世代がスーツを着る年代になった。

今後は既製スーツは急場しのぎに買う程度という「オーダースーツネイティブ」がやがてふつうになる時代が来るかもしれない。

そのブースターとなるのは「シタテ」なのだろう。

主な情報源
  • 「SHITATEは手軽で至極の体験!オーダースーツの魅力」 2021年02月03日 「シタテ」公式サイト
  • 「『オーダースーツ』好調、紳士服に復活兆し」 2024年3月11日 PR TIMES
  • 「洋服の青山、全店でオーダースーツ 『一張羅需要』開拓」 2023年12月13日 日本経済新聞(日経MJ)
  • 「洋服の青山、ここ一番での「勝負スーツ」となる本格オーダースーツブランド全店導入」 2023年09月28日 PR TIMES
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