オーダーすると最短1週間で手元に届く。
そんな離れ業をやってのけるオーダースーツブランドがある。
オンワードパーソナルスタイルが運営する「KASHIYAMA(カシヤマ)」だ。
老舗のアパレル企業、オンワードホールディングス傘下のブランドで上質な着心地のスーツが3万円台からオーダーできる。
高額で納期がかかると敬遠されていたオーダースーツをぐっと身近にしたことでユーザーからの支持も熱い。
いったいどんなからくりでそんなことがKASHIYAMAには実現できたのだろう?
本記事では老舗のアパレル企業らしい強みやこだわりを明らかにする一方で、従来のオーダースーツの常識にはとらわれない先駆的な取り組みにも迫ってみたい。
KASHIYAMA(カシヤマ)とは?
好調に沸くオーダースーツブランドがある。
オンワードパーソナルスタイルが運営する「KASHIYAMA(カシヤマ)」だ。
昨今のオーダースーツ人気を追い風に業績拡大に成功し、新規顧客の獲得数も急伸しているという(PR TIMES 2024.7.4)。
オーダースーツといえば、「洋服の青山」や「コナカ」など紳士服量販店の台頭が著しいが、KASHIYAMAはその出自で一線を画す。
アパレル最大手オンワードホールディングス(前身はオンワード樫山)傘下のブランドなのだ。
老舗アパレル企業が手掛けるオーダースーツにはどんな特徴があるのだろう?
今回の記事ではKASHIYAMAの強みやこだわりを読み解き、そのオーダースーツの実力に迫ってみたい。
テーマは「オーダースーツの民主化」
KASHIYAMAが掲げるブランドのテーマが「オーダースーツの民主化」。
公式サイトでは「上質な着心地を、低価格・短納期で。」と銘打つ。
百貨店などでスーツをオーダーしようものなら最低ランクでも10万円は下らない。
納期も1~2ヵ月は当たり前だった。
それゆえオーダースーツは裕福な中高年など客層が長らく限られていた。
そのハードルを下げるべく、KASHIYAMAは良質なスーツを価格は3万円台から、納期も最短1週間で提供することを目指し、見事に実現させたのだ。
口コミ・レビューで高評価
「オーダースーツの民主化」が着実に進みつつあることは、ネット上に書き込まれたKASHIYAMAの口コミやレビューからも読み取れる。
フィット感や着心地、リーズナブルな価格設定が総じて高く評価されており、コストパフォーマンスへの高い納得度をうかがわせる。
KASHIYAMAは全国主要都市に67のオーダースーツ専門店を展開しているが(2024.8時点)、そこでのプロフェッショナルで親身な接客にも感謝の念が吐露されている。
そしてKASHIYAMAの口コミで特徴的なのが、最短1週間という短納期への高い満足度だ。
結婚式などたとえ着用機会が迫っていなくとも、気持ちがホットなうちに早く袖を通したい。
そんな“はやる思い”に寄り添えることもKASHIYAMAの魅力なのだろう。
KASHIYAMAの強みとこだわり
では「上質な着心地を、低価格・短納期で。」を、KASHIYAMAは具体的にどう実現してきたのだろう?
その取り組みを紐解くとともに、老舗アパレル企業が手掛けるKASHIYAMAの強みやこだわりにも迫ってみたい。
最短1週間で手元に届く
民主化を進める上で、重要な原動力となったのが同ブランドが「スマートファクトリー」と呼ぶ中国は大連にある自社工場である。
ショップやスマホからスーツをオーダーすると、そのデータが即時で工場に送られ、裁断や縫製に4日、工場からの配送に3日、約1週間ほどでスーツが手元に届く。
「パックランナー」と呼ばれる圧縮パック梱包で届けられるため、配送中に型崩れしたり、よごれやシワがついたりする心配もないそうだ。
既製スーツでも裾上げやウエスト調整など「お直し」には1週間ほどかかる。
KASHIYAMAの納期はもはや既製スーツと大差がないことになる。
本格的なオーダースーツでこれほどの短納期というのは類がない。
とりわけ、若い世代からは成人式や就活、春の入卒式など、いわゆる“オケージョン需要”を満たすのに歓迎されているという。
最新のテクノロジー×熟練の手作業
さらに大連の自社工場には老舗アパレル企業らしい品質へのこだわりも見てとれる。
「安かろう、早かろう、悪かろう」ではないのだ。
KASHIYAMAが制作した「なぜオーダーメイドスーツが1週間でできるのか」の動画にその秘密が明かされている。
工場自体は高度な機械化・自動化が施され、生産ライン全体がスピード重視で設計されている。
しかし、スーツの美しさや着心地に影響する工程では熟練した職人たちの手作業を多く残しているという。
それゆえKASHIYAMAのスーツはその美しいシルエットも含めプレミアムな品質感が漂うのだ。
要はKASHIYAMAは「マスカスタマイゼーション」のしくみをいち早く完成させたのである。
それはすなわち、大量生産に近い生産性を保ちつつ、個々の顧客ニーズに合う商品を作り出すしくみのこと。
その量産体制ゆえ低コスト化にも成功する。
生地の仕入れなどにおけるスケールメリットを享受し、アパレル業界の宿命ともいえる在庫負担もゼロとなる。
工場から直送(Factory to Customer/F2C)とすることで流通マージンも圧縮している。
盛んに口コミされるコスパのよさはこんなところからも来ているのだ。
上質な着心地の秘密
そしてもう1つ、「上質な着心地を、低価格・短納期で。」の実現に向けてKASHIYAMAが切ったカードがある。
上質なオーダースーツとなれば、かなり繊細な要求にも応えなければならない。
単に身体のサイズに合うだけではない。
動きやすさやフィット感、着心地なども問われるのだ。
そのため、オーダースーツといえば昔から、着用する人の身体を細かく採寸し、その採寸データに従って型紙(パターン)を一から起こすのが慣行だった。
その型紙に沿って生地が裁断され、縫製されるのだ。
KASHIYAMAはこの工程にメスを入れる。
いちいち型紙を起こす代わりに160種類を超えるスーツのサイズパターンを予め用意したのだ。
どんなサイズ、どんな体型の人でも必ず自分のベースとなるパターンが見つかるという。
ショップで採寸を行うと、その採寸データが直ちに工場に送られ、一瞬のうちに最適なサイズパターンが抽出される。
そして即座に裁断と縫製の工程に進むのだ。
工期が著しく短縮されるのはいうまでもない。
なぜ、160種のサイズパターンか?
この160種類ものサイズパターンがいかに画期的かを理解するのに、既製スーツと比べてみよう。
既製スーツでも気の利いたブランドなら20~30種のサイズが用意されている。
紳士服売り場でよく見かけるが、「Y体」「A体」といった体型区分に伸長を掛け合わせたものだ。
その既製スーツのサイズに自分の身体がピタリと合うのであればわざわざオーダーする理由はない。
しかし、実際はそんな幸運な人は少数派で、たとえ標準体型を自称する人でもどこかの部位に違和感を覚えていたりする。
既製スーツに「お直し」という形で調整を加える人もいるだろう。
ただし、スーツは肩幅、胸囲、ウエストなど、様々なパーツの寸法が互いに関連し合い、全体のバランスを保っている。
そこにたとえ1箇所でも調整を加えるとシルエットが不自然に見えてしまうのだ。
KASHIYAMAのサイズパターンが160種を超える数に帰着したのも、全体のバランスを保ちつつ、1人ひとりのサイズや体型にフィットすることにとことんこだわったためである。
KASHIYAMAは「創業100年の技術とデータから作られる良質」とうたう。
160種を超える最適解の割り出しには、メンズスーツに長年取り組んできたアパレル企業のノウハウが生かされているという。
オーダーのハードルを下げた3本の矢
ここまでKASHIYAMAの自社工場「スマートファクトリー」を中心に、同ブランドのオーダースーツの民主化に向けた取り組みを見てきた。
しかし、そうした「マスカスタマイゼーション」の体制づくりが民主化のすべてではない。
ほかにもオーダーへのハードルを下げ、とりわけ既製スーツで間に合わせていた“オーダースーツ入門者”を振り向かせた取り組みがいくつもある。
以下に3つほど示そう。
生地やオプションのナビゲーション機能
オーダースーツは生地や様々なオプションを自由に選べるという利点がある。
自分でスーツをデザインする感覚にも近く、それがオーダースーツの醍醐味といえるだろう。
しかし、一方でオーダースーツ入門者にとって、まだ見ぬ姿を想像しながら、生地やオプションを選ぶのは少々荷が重い。
完成形をパッと見て決められる既製スーツのほうがはるかに手軽だ。
そこでKASHIYAMAは入門者でも納得の選択ができるよう選択肢の提示の仕方にひと工夫している。
スマホでKASHIYAMAの公式サイトにアクセスし、メンズスーツの生地を選ぶとしよう(アイテムから選ぶ→スーツ)。
最初におびただしい数の生地画像の一覧が表示される。
この際に活用したいのがスマホ画面右上の「条件で絞り込む」のボタンだ。
着用シーズン(all season、spring & summerなど)、価格帯、カラー、柄、機能性、生地メーカーで生地の選択肢を自由に絞り込めるようになっている。
とりわけ、価格帯別に生地を絞り込めるのは予算の枠内で選ぶのに重宝するだろう。
3万円台~9万円台まで7段階(2024.8時点)に分かれている。
いったん選ぶ価格帯を仮置きし、今度はカラーや柄、機能性(ストレッチ・撥水・防シワなど)などで絞り込んでいく。
選択肢が整理・構造化されているのが実にわかりやすい。
好みの生地を1つに絞り込むと、今度はオプションの選択に進む。
デザインやポケット、裏仕様、裏地、袖口形状など14ものオプションメニューが立ち上がり、そのメニューごとに複数の選択肢がビジュアル付きで示される。
さらにそれぞれの選択肢が「どんな着用シーンにふさわしいのか?」や「どんな印象を与えるのか?」などの短い解説文も添えられている。
有り難いのは、たとえばジャケットのフロントを2つボタンにしたときや腰ポケットをナナメに入れたときなど、全体の印象がどう変わるかがスーツを着た男性モデルの画像を通して確認できることだ。
1着目のスーツであれば、最終的にショップに行って生地やオプションを選ぶことになるかもしれない。
生地の風合いを実際に触って確かめたり、オプションの実物を見たりできるメリットもあるためだ。
しかし、予習代わりに一通りサイト上でシミュレーションしておくといい。
この後に触れるショップのスタイルガイドとのコミュニケーションが格段にスムーズになり、納得のいく選択につながることうけあいだ。
実はこうした生地やオプション選びのわかりやすいナビゲーション機能もKASHIYAMAが目指す「オーダースーツの民主化」と軌を一にしている。
オーダースーツといえばショップに陣取って何時間も費やし、生地やオプションを選ぶといったイメージがつきまとう。
それゆえ「タイパ」を重視する世代からは敬遠されてしまうのだ。
情報の提示をシンプルにわかりやすくした背景には、過度に迷うこともなく納得のいく選択ができることがオーダーのハードルを下げるのに必要不可欠だとの判断があるのだろう。
2着目以降のオーダーにも弾みがつくはずだ。
スタイルガイドの提案力
とりわけオーダースーツ入門者にとって心強いのは各ショップで接客するスタイルガイドの存在だ。
細やかな採寸から生地やオプションの提案を行う、さながら水先案内人の役割を果たす。
その経験値や提案力は口コミでも高く評価されている。
来店予約をした上でショップに赴(おもむ)くと、まずはカウンセリングが始まる。
スタイルガイドがスーツの用途や着用シーン、好みのスタイルなどをヒアリングし、「スーツに何を求めるか?」のビッグピクチャー(大きな絵)をつかむ。
そこから生地やオプションをともに選んでいく。
顧客とスタイルガイドが大きな絵に沿って世界に1着のスーツをつくり上げていくイメージだ。
生地にせよ、オプションにせよ、その多くは失敗の少ないスタンダードな選択肢というのが用意されている。
オーダースーツ入門者であればそれらを手堅く選びつつ、どこでエッジを効かせるかをスタイルガイドと相談しながら決めていくといいだろう。
スタイルガイドと賢く向き合うことで、生地やオプション選びも決して難しくないと思えてくるはずだ。
一度経験を積んでおくと、2着目以降にスマホからスーツをオーダーするのにも役立つだろう。
生地やオプションを選び終えると次は採寸となる。
ヌード寸法と呼ばれる身体の素のサイズを正確に測った上で、スタイルガイドは1人ひとりの体型や骨格、姿勢などを把握し、どの部位にどれだけのゆとりを加えるかを判断していく。
さらに着用したときの動きやすさも重要なファクターだ。
座ったり、立ったり、手を動かしたりした際に、窮屈さやツッパリ感が残ってはいけない。
スタイルガイドは経験と知識の積み重ねからくる“透視能力”を働かせ、ヌード寸法にゆとりを加え、「出来上がり寸法」を決めていく。
この「出来上がり寸法」がスーツの着心地や美しいシルエットを大きく左右することになる。
3万円台の価格と学割
KASHIYAMAのオーダースーツの価格についても見ていこう。
公式サイトで盛んに訴求されているが、税込33,000円(税込)からオーダーできることを売りの1つにしている。
とある調査によれば、スーツにかける予算で一番多いのは「2万円以上~3万円未満」のレンジだという(PR TIMES 2023.1.12)。
オーダーへのハードルを下げるには3万円のラインが外せないと踏んだのだろう。
オーダーが初めてなら、とりあえずこのエントリー価格で試してみるのもいい。
他のブランドであれば、エントリーラインの選択の幅が極端に狭められていることも多く、否応なしに上のランクに誘導されることになる。
しかし、KASHIYAMAに限ってはそんなことはない。
エントリーラインでも生地の選択肢も豊富で選びやすいだろう。
また、この記事の執筆時点(2024.8)では「1st SMART ORDER」と称し、KASHIYAMAで初めてオーダーする人に限って20%OFFとなる割引サービスも実施されている。
税込33,000円が税込26,400円で買えるのだ。
また、2着同時購入すると同様に20%OFFになるようだ。
家族や友人と一緒に利用して2着購入し、割引を受けるのもいいだろう。
さらにこちらは学生が対象となるが、学生証を提示すると税込33,000円のスーツが税込22,000円となる「KASHIYAMA学割」のサービスも実施されている。
いずれもオーダースーツの民主化を推し進めようとするKASHIYAMAの割引サービスだ。
新規顧客を1人でも多く獲得するのがねらいだろう。
割引対象となる生地は限定されるものの、KASHIYAMA品質は保たれており、ぜひ利用してオーダースーツを体験してみるといい。
一方で、公式サイトでみる限り、KASHIYAMAには上の価格帯が税込99,000円まで品揃えがあるようだ(2024.8時点)。
そこは出自が老舗のアパレル企業。
顧客の層も厚く品揃えの幅は広い。
同じKASHIYAMAでいずれランクアップできることも頭の片隅には入れておこう。
オーダースーツ×高機能
昨今、スーツ業界で話題をさらっているのが高機能スーツだ。
素材にポリエステルなどを使い、「ストレッチ性」「軽量性」「撥水(はっすい)性」などを盛んに売りにする。
しかし、それらの高機能スーツの多くは既製スーツのみでの展開となる。
一方でKASHIYAMAは、本格的なオーダースーツであっても高機能スーツのラインアップ拡充に抜かりない。
オーダースーツといえば「勝負スーツ」「一張羅」と考えがちだ。
しかし、「オーダースーツの民主化」を掲げるKASHIYAMAは、そんな固定観念は排したい。
オーダースーツに高機能素材を惜しげなく採用することで、普段使いのスーツとしての定着を目論む。
そのKASHIYAMAの高機能ラインについてもいくつか紹介しておこう。
洗えて伸びる「モダンテーラー」
昨今、スーツ業界で話題をさらっているのが自宅で洗える「ウォッシャブルタイプ」のスーツだ。
メンテナンスが楽でコスパもよく、ヘビーローテーションで着用するスーツにはもってこいだろう。
KASHIYAMAがこの「ウォッシャブルタイプ」を打ち出したのが、モダンテーラー(MODERN TAILOR)というラインだ。
「きちんと見えで快適 “洗える”オーダースーツ」とのコピーが掲げられている。
正確には上下のセットアップとなるが、従来のクラシックスーツの伝統的なスタイルは踏襲されており、ウールと変わらない見た目で品格も感じられる。
それでいて自宅で簡単に洗濯ができ、一日中座っていてもシワになりにくい。
そして何より軽量でストレッチが効いており、着心地も快適だ。
パンツには見た目にはわからないウエストゴムが採用されている。
高機能だからといって、生地やオプションの選択肢の数がクラシックスーツと見劣りしないのもKASHIYAMA流といえるだろう。
スマホで簡単オーダー「EASY」
また、KASHIYAMAにはショップでの採寸なしでオンラインのみでオーダーできるラインもある。
それがカスタムメイド・セットアップ「EASY(イージー)」だ。
今やオーダースーツでもオンライン完結型のサービスは珍しくないが、いずれも自分の全身写真を撮影し、その画像をアップロードする必要があった。
一方、「EASY」は「身長」「体重」「お腹の形状」「胸の形状」など8項目を入力するだけで注文者の体型を推定し、最適なサイズを割り出してくれるという。
1着目から来店不要でスマホからオーダーできるのは「タイパ」重視の人にとっては嬉しいだろう。
「EASY」に採用された素材は「ストレッチ性」「軽量性」「撥水(はっすい)性」を兼ね備えており、その名の通り「イージー」な着心地が実現されている。
繊細なウールであれば難易度が上がってしまうが、こうした機能性素材のラインだからこそ、採寸精度が高められたという事情もあるようだ。
ストレスフリーの「eスーツ」
最後に2023年9月に発売された「eスーツ」についても触れておこう。
こちらは「ウールスーツにも機能を」というコンセプトから生まれたライン。
ウールとポリエステルの混紡で高機能というのは他のブランドでもよく見かけるが、「eスーツ」はウール素材で高機能にこだわっている。
公式サイトでは「ストレスフリー」であることを前面に打ち出し、「超ストレッチ」「超軽量」「イージーケア」の3拍子が揃うと訴求する。
ストレッチ性では伸縮率が通常のウールの最大3.5倍に及ぶ。
縦横の動きに強く身体を大きく動かしても生地が伸び、反発性があるという。
そしてもう1つ「eスーツ」には「アンコン仕立て」という特徴がある。
「アンコン」とは「unconstructed/非構築的」を略した言い方のこと。
通常のスーツは肩パットや表地と裏地の間に芯地を挟むことで立体的でカッチリとした見た目を保っている。
一方、「eスーツ」はその見た目は保ちつつも軽量化を図るため、表地を裏側まで贅沢に使う「大見返し仕様」を採用しているという。
さらに肩パッドや襟裏のカラークロスをなくし、芯地は軽量のものに変更している。
それゆえ身体にスッと馴染み、窮屈感もなく軽やかな着心地となるのだ。
柔らかな印象で長時間着ていても快適なため、昨今定着しつつあるビジカジ(ビジネスカジュアル)スタイルにはうってつけだろう。
プライベートな街着としても使える。
本格的なウール生地にこだわっているため価格は5万円台からとなるが、着回しが効くため、1着もっておくと重宝するだろう。
「民主化」の取り組みに死角なし
以上、今回の記事では「オーダースーツの民主化」をテーマに掲げるKASHIYAMAの強みやこだわりを見てきた。
自社工場の「スマートファクトリー」を起ち上げ、「上質な着心地を、低価格・短納期で。」の実現にまい進してきたことがお分かりいただけただろう。
とりわけ、ジャストフィットの1着を最短1週間で届けるしくみはスーツ業界でも先駆的といっていい。
そこにショップで細やかな採寸とデザイン提案を行うスタイルガイドの陣営も加わる。
その一方で、採寸なしでオーダーできるオンライン完結のラインも取り揃えた。
さら高機能スーツの開発にも積極的に取り組んでいる。
「民主化」の取り組みにもはや死角は見当たらない。
今回の記事では取り上げなかったがオーダーシャツ、ウィメンズにおいてはオーダーシューズも手掛けており、もはやオーダースーツブランドではなく「オーダーメイドブランド」に変貌しつつあるようだ。
変わりゆく顧客ニーズに敏感に応えようと多芸多才ぶりを発揮するKASHIYAMA。
スーツを保有する男性の4割がオーダースーツの購入経験があるとの調査結果もある(PR TIMES 2023.1.12)。
「オーダースーツの民主化」を掲げたKASHIYAMAが、残りの6割をどう攻略するのか?
繰り出される次なる一手にぜひとも注目したいところだ。