今回は『増やす』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『増やす』とは何を指す言葉か?
まず押さえたい定義
「増やす」とは、数量・水準・範囲・価値など、ある対象の状態を基準点より上の方向へ変化させる行為を広く指す言葉である。
意味のコア
- 変化の方向が「多くする」に集約されている
- 対象が数量にも抽象概念にも及ぶ
- 手段や過程を含まず、結果に焦点が当たりやすい
使う際の注意点(誤解されやすいポイント)
- 何をどの側面で増やすのかが省略されやすい
- 量的増加と質的向上が混同されやすい
- 意図や方法が伝わらず、表現が大づかみに受け取られることがある
こうした曖昧さは、「増やす」が複数の意味を一語で担う点にあるため、場面に合った表現を選ぶ必要がある。
2.『増やす』を品よく言い換える表現集
ここからは「増やす」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 数を確実に増やすとき(数量)
- 増加させる
- 数値や件数など、客観的な量を多くするときの最も中立的でフォーマルな表現。
- 例:今期は施策を強化し、会員数を増加させる方針です。
- 数値や件数など、客観的な量を多くするときの最も中立的でフォーマルな表現。
- 積み上げる
- 実績や経験を一つずつ重ね、結果として全体量を増やしていくニュアンスをもつ。
- 例:成功事例を積み上げ、部門の信頼を高めてきました。
- 実績や経験を一つずつ重ね、結果として全体量を増やしていくニュアンスをもつ。
2-2. 水準を一段上に導くとき(向上)
- 高める
- 質・意識・価値など、抽象度の高い対象のレベルを上の段階へ引き上げるときに使える。
- 例:研修を見直し、問題解決力を高める施策を進めています。
- 質・意識・価値など、抽象度の高い対象のレベルを上の段階へ引き上げるときに使える。
- 向上させる
- 能力・品質・生産性など、評価可能な水準を「以前より良い状態へ」と進歩させる表現。
- 例:新システム導入により、業務効率が向上しました。
- 能力・品質・生産性など、評価可能な水準を「以前より良い状態へ」と進歩させる表現。
2-3. 領域や体制を広げるとき(拡張)
- 拡大する
- 市場・規模・シェアなど、対象の「大きさ」や「広がり」を増やすときの基本語。
- 例:施策を強化し、アジア市場での存在感を拡大する計画です。
- 市場・規模・シェアなど、対象の「大きさ」や「広がり」を増やすときの基本語。
- 拡充する
- 人員・設備・制度などの「中身」を整えながら体制を増やすときに適した語。
- 例:サポート体制を拡充し、対応品質の安定化を図ります。
- 人員・設備・制度などの「中身」を整えながら体制を増やすときに適した語。
2-4. 進行の勢いを増幅させるとき(勢い)
- 加速させる
- すでに動き始めている取り組みのスピードや勢いをさらに強めるときに使える。
- 例:新商品投入により、需要拡大を加速させます。
- すでに動き始めている取り組みのスピードや勢いをさらに強めるときに使える。
- 促進する
- 物事の進行や変化がスムーズに進むよう後押しし、結果として動きを増やす語。
- 例:部門間の連携を促進し、意思決定の流れを早めています。
- 物事の進行や変化がスムーズに進むよう後押しし、結果として動きを増やす語。
2-5. 価値や魅力を上乗せするとき(付加)
- 付加する
- 機能・サービス・意味合いなど、新しい要素を上乗せして価値を増やすときの基本語。
- 例:既存プランに新たなサービスを付加し、顧客満足度を高めました。
- 機能・サービス・意味合いなど、新しい要素を上乗せして価値を増やすときの基本語。
- 磨きをかける
- 既存の強みをさらに洗練させ、質的な価値を増やしていく比喩的な表現。
- 例:資料構成に磨きをかけ、提案力を高めました。
- 既存の強みをさらに洗練させ、質的な価値を増やしていく比喩的な表現。
2-6. 信頼や中身を深めるとき(深化)
- 醸成する
- 信頼・文化・機運など、時間をかけてゆっくりと育っていく無形のものを豊かにする語。
- 例:部門横断の取り組みを通じ、協働文化を醸成しています。
- 信頼・文化・機運など、時間をかけてゆっくりと育っていく無形のものを豊かにする語。
- 強化する
- 体制・連携・仕組みなどの「強さ」や「安定感」を高め、中身の厚みを増すときに用いる。
- 例:監視体制を強化し、インシデントリスクを抑えてきました。
- 体制・連携・仕組みなどの「強さ」や「安定感」を高め、中身の厚みを増すときに用いる。
3.まとめ:『増やす』の多義性を整理する
「増やす」とは、数量・水準・価値など異なる側面の変化を、一語で包括的に示す利便性の高い動詞である。
その状態は対象や目的によって意味の重心が変わるため、どの側面を動かしたいのかによって適切な表現も異なってくる。
2章で整理したニュアンスを手がかりに、増加の中身を見極めて言葉を選び直すことで、意図はより正確に伝わっていく。

