今回は『提案』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『提案』——便利だが単調になりがちな口ぐせ
『提案』ばかりに依存すると、示すべき内容の違いがぼやけ、説得力が薄れてしまう。
“言葉の使い回し”が際立つ例をここで見てみたい。
口ぐせで使われがちな例
- 会議の進行で新しい提案が繰り返され、議題が散漫になっている。
- 提出資料に追加の提案を盛り込み、確認作業が煩雑になった。
- 契約交渉で相手側の提案に応じ、合意形成に時間を要した。
- 会議中に発言を促すため、複数の提案を投げかけた。
- 期限対応で急ぎの提案をまとめ、上司に送付した。
並べてみると、“提案”という定番に寄りかかり、表現の奥行きが薄れていたことが見えてくる。
次章では文脈ごとの品位ある言い換えを紹介する。
2.『提案』を品よく言い換える表現集
ここからは『提案』を5つのニュアンスに整理し、文脈ごとの適切な言い換えを提示する。
『提案』は幅広いニュアンスを持つため、言い換えの選択肢を整理することで表現の厚みが増す。
2-1. アイデア・計画を出す
- 企画
- 新しい取り組みやプロジェクトを具体化する表現。社内外で最も一般的に使われる。
- 例:営業部は新商品の企画を立ち上げ、準備を進めている。
- 新しい取り組みやプロジェクトを具体化する表現。社内外で最も一般的に使われる。
- 立案
- 計画を体系的にまとめる実務的な表現。企画より具体性があり、知的な響きを持つ。
- 例:経営企画室が新規事業を立案し、役員会に諮(はか)った。
- 計画を体系的にまとめる実務的な表現。企画より具体性があり、知的な響きを持つ。
- 構想
- 大きなビジョンや方向性を示す表現。抽象度が高く、戦略的な場面に適する。
- 例:研究開発部は次世代技術の構想を描いている。
- 大きなビジョンや方向性を示す表現。抽象度が高く、戦略的な場面に適する。
2-2. 問題・論点を提示する
- 提起
- 議論すべき問題や課題を取り上げる表現。知的で分析的な響きがある。
- 例:会議でコスト削減の課題が提起された。
- 議論すべき問題や課題を取り上げる表現。知的で分析的な響きがある。
- 提示
- 条件や選択肢を客観的に示す表現。フォーマルで押し付けがましくない。
- 例:営業部は契約プランを提示し、判断を仰いだ。
- 条件や選択肢を客観的に示す表現。フォーマルで押し付けがましくない。
- 論点提示
- 議論の焦点を明確にする表現。提起と提示の中間で、会議や討議に適する。
- 例:会議で主要な課題を論点提示し、議論を整理した。
- 議論の焦点を明確にする表現。提起と提示の中間で、会議や討議に適する。
2-3. 意見・助言を述べる
- 提言
- 政策や方針に関する建設的な意見。硬質でフォーマルな場面に適する。
- 例:専門委員会は働き方改革について提言を行った。
- 政策や方針に関する建設的な意見。硬質でフォーマルな場面に適する。
- 推奨
- より良い選択肢を勧める表現。専門的判断やコンサルティングでよく使われる。
- 例:コンサルタントはクラウド導入を推奨している。
- より良い選択肢を勧める表現。専門的判断やコンサルティングでよく使われる。
- 意見
- 最も中立的で汎用性が高い表現。社内外の議論で自然に響く。
- 例:社員からの意見を施策に反映した。
- 最も中立的で汎用性が高い表現。社内外の議論で自然に響く。
- 所見
- 意見よりも客観的・分析的なニュアンスを持つ格式ある表現。調査や分析結果に基づく。
- 例:調査結果を踏まえた所見を示した。
- 意見よりも客観的・分析的なニュアンスを持つ格式ある表現。調査や分析結果に基づく。
2-4. 申し出・提供をする
- 申し出
- 自発的に協力や支援を差し出す表現。柔らかく丁寧な響きがある。
- 例:社員が対応を申し出たことで遅延を防いだ。
- 自発的に協力や支援を差し出す表現。柔らかく丁寧な響きがある。
- ご提供
- サービスや情報を差し出す表現。営業や顧客対応でよく使われる。
- 例:当社は最適なソリューションをご提供している。
- サービスや情報を差し出す表現。営業や顧客対応でよく使われる。
2-5. 上位者・組織への提言
- 具申(ぐしん)
- 目下から目上に正式な意見を申し立てる儀礼的な表現。硬質でフォーマル。
- 例:部長は新規事業案を社長に具申した。
- 目下から目上に正式な意見を申し立てる儀礼的な表現。硬質でフォーマル。
- 建言(けんげん)
- 政策的・公的な場面で目上に意見を述べる表現。格式が高いが理解しやすい。
- 例:有識者が教育改革について政府に建言している。
- 政策的・公的な場面で目上に意見を述べる表現。格式が高いが理解しやすい。
3.まとめ:『提案』を文脈に応じて品よく言い換える
『提案』という一語に寄りかかれば、案の性質や文脈の違いが伝わりにくくなる。
だが適切に言い換えれば、説明の精度が増し、伝え方の説得力を高める。
語彙の選択が説明の奥行きを広げ、組織の対話の可能性を支えることを改めて胸に刻みたい。

