今回は『進める』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『進める』とはどんな性質の言葉か?
「進める」は、仕事や計画を一歩ずつ前へ運ぶ場面で最もよく使われる言葉である。
まずは、この語が持つ基本的な輪郭を確かめておきたい。
意味のコア
「進める」は、物事を目的に向かって前へ運ぶことを指す言葉である。
着実に前へ運ぶ響きを持つ一方、その進め方や役割までは必ずしも示さない。
実務では「案件を進める」「手続きを進める」「検討を進める」のように、非常に幅広い対象に使われる。
その汎用性の高さゆえに便利な反面、何をどのように前へ動かすのかが伝わりにくくなることもある。
こうした性質を踏まえ、次章では「進める」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『進める』を品よく言い換える表現集
ここからは「進める」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 業務を前へ動かすとき(推進)
▶『プロジェクトを進める』『施策を進める』など、業務や計画を着実に前へ動かす際の言い換え。
- 推進する
- 方針や計画を主体的に前へ進める場面で最も汎用性が高く、行政・企業の実務でも幅広く用いられる。
- 例:関係部署と連携しながら、新制度の導入を推進した。
- 方針や計画を主体的に前へ進める場面で最も汎用性が高く、行政・企業の実務でも幅広く用いられる。
- 遂行する
- 与えられた責任や任務を着実に果たす場面で重宝し、責任感や確実性を伝えやすい。
- 例:限られた人員の中でも、担当業務を最後まで遂行した。
- 与えられた責任や任務を着実に果たす場面で重宝し、責任感や確実性を伝えやすい。
- 実行する
- 計画や決定事項を実際の行動へ移す場面で用いられ、実践に重点を置く表現。
- 例:会議で決まった対応策を、翌営業日から実行した。
- 計画や決定事項を実際の行動へ移す場面で用いられ、実践に重点を置く表現。
- 実施する
- 施策や調査、研修などを予定どおり行う際に適し、客観的で落ち着いた印象を与える。
- 例:影響範囲を確認したうえで、システム更新を実施した。
- 施策や調査、研修などを予定どおり行う際に適し、客観的で落ち着いた印象を与える。
- 展開する
- 取り組みや施策を複数の部署や地域へ広げる文脈で使いやすく、発展性を含意する。
- 例:試験運用の成果を踏まえ、全国拠点へ順次展開した。
- 取り組みや施策を複数の部署や地域へ広げる文脈で使いやすく、発展性を含意する。
- 前進させる
- 停滞していた案件や交渉を前へ動かしたい場面で用いられ、進展を強調できる。
- 例:双方の譲歩案をまとめ、難航していた契約交渉を前進させた。
- 停滞していた案件や交渉を前へ動かしたい場面で用いられ、進展を強調できる。
- 推し進める
- 強い意思を持って計画や改革を前へ運ぶ場面で使われ、主体性を印象づける。
- 例:現場の意見も踏まえながら、業務改革を推し進めた。
- 強い意思を持って計画や改革を前へ運ぶ場面で使われ、主体性を印象づける。
2-2. 実施の準備を整えるとき(準備)
▶『準備を進める』『手続きを進める』など、実施に向けた準備を整える際の言い換え。
- 手配する
- 必要な人員や物品、日程などを事前に整える場面で最もよく使われる実務表現。
- 例:納期変更に備え、代替の配送車両を手配した。
- 必要な人員や物品、日程などを事前に整える場面で最もよく使われる実務表現。
- 手筈(てはず)を整える
- 関係者との調整を済ませ、滞りなく実施できる状態を整える際に適した表現。
- 例:関係各所と調整を終え、当日の運営の手筈を整えた。
- 関係者との調整を済ませ、滞りなく実施できる状態を整える際に適した表現。
- 手続きを進める
- 申請や契約など、所定の手順を着実に進行させる場面で重宝する。
- 例:必要書類がそろったため、契約更新の手続きを進めた。
- 申請や契約など、所定の手順を着実に進行させる場面で重宝する。
- 準備を進める
- 実施に向けた作業全般を進行させる際に使いやすく、幅広い場面に対応できる。
- 例:来月の展示会に向け、会場設営の準備を進めている。
- 実施に向けた作業全般を進行させる際に使いやすく、幅広い場面に対応できる。
- 整備する
- 設備や制度、運用環境などを使いやすい状態へ整える場面で用いられる。
- 例:新制度の運用開始に向け、社内規程を整備した。
- 設備や制度、運用環境などを使いやすい状態へ整える場面で用いられる。
- 体制を整える
- 人員配置や役割分担を見直し、円滑に実施できる状態を築く際に適する。
- 例:繁忙期に備え、問い合わせ対応の体制を整えた。
- 人員配置や役割分担を見直し、円滑に実施できる状態を築く際に適する。
2-3. 検討を前へ進めるとき(協議)
▶『検討を進める』『協議を進める』など、議論や意思決定を円滑に前へ進める際の言い換え。
- 進行する
- 会議やプロジェクト、審査などが予定どおり進む場面で使われ、進み具合を客観的に示せる。
- 例:議題を絞ったことで、定例会議は予定どおり進行した。
- 会議やプロジェクト、審査などが予定どおり進む場面で使われ、進み具合を客観的に示せる。
- 協議を進める
- 関係者と意見を交わしながら、結論や合意に向けて話し合う場面で重宝する。
- 例:取引先と条件を整理しながら、契約内容の協議を進めた。
- 関係者と意見を交わしながら、結論や合意に向けて話し合う場面で重宝する。
- 検討を進める
- 複数の選択肢を比較し、判断材料を整理する過程で幅広く用いられる。
- 例:現場の意見を踏まえ、新しい運用方法の検討を進めている。
- 複数の選択肢を比較し、判断材料を整理する過程で幅広く用いられる。
- 合意形成を図る
- 利害や立場の異なる関係者の認識をそろえ、意思決定へ導く際に適した表現。
- 例:各部門の意見を丁寧に聞き、早期の合意形成を図った。
- 利害や立場の異なる関係者の認識をそろえ、意思決定へ導く際に適した表現。
- 審議する
- 会議体や委員会で議案を慎重に検討し、結論を導く場面で用いられる。
- 例:提出された改定案を役員会で審議した。
- 会議体や委員会で議案を慎重に検討し、結論を導く場面で用いられる。
- 取り進める
- 関係者との調整を重ねながら、実務を着実に前へ運ぶ場面で使いやすい表現。
- 例:現場の状況を確認しながら、引き継ぎ作業を取り進めた。
- 関係者との調整を重ねながら、実務を着実に前へ運ぶ場面で使いやすい表現。
2-4. 相手を後押しするとき(促進)
▶『導入を進める』『普及を進める』など、新たな取り組みや利用を広げる際の言い換え。
- 促進する
- 新たな制度や取り組みの浸透を後押しし、前向きな行動を引き出したい場面で最も汎用性が高い。
- 例:利用率向上に向け、社内ポータルの活用を促進した。
- 新たな制度や取り組みの浸透を後押しし、前向きな行動を引き出したい場面で最も汎用性が高い。
- 推奨する
- 複数の選択肢の中から望ましい方法として勧める場面で用いられ、押しつけになりにくい。
- 例:情報漏えい対策として、多要素認証の導入を推奨している。
- 複数の選択肢の中から望ましい方法として勧める場面で用いられ、押しつけになりにくい。
- 働きかける
- 相手の理解や協力を得るため、継続的にアプローチする場面で重宝する。
- 例:関係部署へ働きかけ、早期の運用開始を目指した。
- 相手の理解や協力を得るため、継続的にアプローチする場面で重宝する。
- 後押しする
- 相手が一歩踏み出せるよう支援や応援を行う際に適し、柔らかな印象を与える。
- 例:新任担当者の提案を上司が後押ししたことで導入が決まった。
- 相手が一歩踏み出せるよう支援や応援を行う際に適し、柔らかな印象を与える。
- 促す
- 必要な行動や判断を自然に引き出したい場面で使いやすく、簡潔ながら幅広く応用できる。
- 例:提出期限が近づいたため、関係者へ回答を促した。
- 必要な行動や判断を自然に引き出したい場面で使いやすく、簡潔ながら幅広く応用できる。
3.まとめ:『進める』を理解する——仕事を動かす言葉の基本
「進める」は、前へ動かす対象によって選ぶ語が変わる。
| 文脈 | 代表語 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 業務を前へ動かすとき(推進) | 推進する・遂行する | 業務や計画を実行段階へ移す視点 |
| 実施の準備を整えるとき(準備) | 手配する・手筈を整える | 実施前の手配や受入体制づくり |
| 検討を前へ進めるとき(協議) | 協議を進める・合意形成を図る | 議論や意思決定を前へ運ぶ視点 |
| 相手を後押しするとき(促進) | 促進する・推奨する | 行動や導入を後押しする働きかけ |
語を選ぶ基準は、<自ら物事を前へ運ぶ>か<相手の行動を前へ促す>かでまず分かれる。
前者なら「業務を前へ動かすとき(推進)」「実施の準備を整えるとき(準備)」「検討を前へ進めるとき(協議)」を、後者なら「相手を後押しするとき(促進)」を軸に据える。
「進める」が持つ幅広さを意識するほど、語の選択によって伝えたい行為の輪郭はより明確になるだろう。

