今回は『その通り』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『その通り』とはどんな性質の言葉か?
「その通り」は、相手の発言を受け止める場面で最もよく使われる相づちの一つである。
まずは、この語が持つ基本的な輪郭を確かめておきたい。
意味のコア
「その通り」は、相手の意見や判断に同意することを表す言葉である。
素直な賛意を示す一方、口語的で率直な響きを持つ表現として受け取られやすい。
「その通りですね」「まさにその通りです」「おっしゃる通りです」といったように、「その通り」は日常からビジネスまで幅広く使われている。
一方で、実務では「何に同意しているのか」「どこを評価しているのか」をもう少し明確に示したい場面も少なくない。
こうした性質を踏まえ、次章では「その通り」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『その通り』を品よく言い換える表現集
ここからは「その通り」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 率直に賛意を示す(同意)
▶相手の意見や提案に賛同し、円滑な対話を促したい際の言い換え。
- 仰る(おっしゃる)通りでございます
- 目上の相手の意見を丁重に受け止め、敬意を保ちながら賛同を示す場面で重宝する。
- 例:ご指摘の点は仰る通りでございます。契約書案を修正いたします。
- 目上の相手の意見を丁重に受け止め、敬意を保ちながら賛同を示す場面で重宝する。
- ごもっともです
- 相手の指摘や懸念に十分な理由があると認め、柔らかく応じたい場面に適する。
- 例:納期へのご懸念はごもっともです。対応策を整理してご説明します。
- 相手の指摘や懸念に十分な理由があると認め、柔らかく応じたい場面に適する。
- 全面的に賛同いたします
- 提案や方針を強く支持し、異論のない姿勢を明確に示したい場面で用いる。
- 例:部門横断で進めるご提案に全面的に賛同いたします。
- 提案や方針を強く支持し、異論のない姿勢を明確に示したい場面で用いる。
- 同感です
- 相手と考えや問題意識を共有していることを、自然かつ簡潔に伝えたい場面で使いやすい。
- 例:現行フローの見直しが必要とのご意見に同感です。
- 相手と考えや問題意識を共有していることを、自然かつ簡潔に伝えたい場面で使いやすい。
- 異論ございません
- 提案や決定事項に反対しない意思を、落ち着いた調子で表明する場面に適する。
- 例:修正版の進行案につきましては異論ございません。
- 提案や決定事項に反対しない意思を、落ち着いた調子で表明する場面に適する。
2-2. 指摘の正しさを認める(判断)
▶相手の指摘や分析が適切であると認め、客観的に伝える際の言い換え。
- ご指摘の通りです
- 相手の指摘が正確であると認め、素直に受け入れる場面で最も汎用性が高い。
- 例:仕様書の記載漏れはご指摘の通りです。修正版を共有します。
- 相手の指摘が正確であると認め、素直に受け入れる場面で最も汎用性が高い。
- 的を射ております
- 指摘や分析が本質を捉えていることを、評価を添えて伝える場面で重宝する。
- 例:人員不足をご指摘いただいた点は、的を射ております。配置を再検討します。
- 指摘や分析が本質を捉えていることを、評価を添えて伝える場面で重宝する。
- 正鵠を射ております
- 本質を正確に捉えた見解であることを、やや格調高く評価したい場面に適する。
- 例:設備更新を急ぐべきとのご見解は、正鵠を射ております。早急に予算案をまとめます。
- 本質を正確に捉えた見解であることを、やや格調高く評価したい場面に適する。
- ご認識の通りです
- 相手の理解や認識に誤りがないことを、確認するように伝える場面で使いやすい。
- 例:現時点の状況はご認識の通りです。変更はございません。
- 相手の理解や認識に誤りがないことを、確認するように伝える場面で使いやすい。
- ご主張は理に適(かな)っています
- 相手の意見に十分な合理性があることを、やや改まって評価する場面に適する。
- 例:コストを優先するご主張は理に適っています。
- 相手の意見に十分な合理性があることを、やや改まって評価する場面に適する。
2-3. 着眼点の鋭さを称える(洞察)
▶相手の洞察や着眼点の価値まで評価して伝えたい際の言い換え。
- ご明察です
- 相手が本質を見抜いたことを、簡潔かつ敬意を込めて称えたい場面で重宝する。
- 例:今回の遅延要因へのご判断はご明察です。
- 相手が本質を見抜いたことを、簡潔かつ敬意を込めて称えたい場面で重宝する。
- ご慧眼(けいがん)に恐れ入ります
- 優れた洞察力を高く評価し、敬意を丁寧に表したい場面で用いる。
- 例:市場動向を見抜かれたご慧眼に恐れ入ります。
- 優れた洞察力を高く評価し、敬意を丁寧に表したい場面で用いる。
- 示唆に富むご指摘です
- 今後の検討や改善につながる視点を評価したい場面で使いやすい。
- 例:設計変更まで見据えたご意見は、示唆に富むご指摘です。
- 今後の検討や改善につながる視点を評価したい場面で使いやすい。
- 本質を突いたご見解です
- 問題の核心を捉えた見解であることを、明確に評価したい場面に適する。
- 例:人員配置へのご指摘は本質を突いたご見解です。
- 問題の核心を捉えた見解であることを、明確に評価したい場面に適する。
- 深いご見識と存じます
- 豊富な知見に裏打ちされた考え方へ敬意を示す場面で重宝する。
- 例:業界全体を踏まえたご意見は深いご見識と存じます。
- 豊富な知見に裏打ちされた考え方へ敬意を示す場面で重宝する。
- 核心を突いています
- 論点の中心を的確に捉えていることを、率直に評価したい場面で使いやすい。
- 例:議論が枝葉に逸れていた中、ご指摘は核心を突いています。
- 論点の中心を的確に捉えていることを、率直に評価したい場面で使いやすい。
まとめ:『その通り』を言い分ける——賛同の伝え方を磨く
「その通り」は、示したい評価の焦点によって選ぶ語が変わる。
| 文脈 | 代表語 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 率直に賛意を示す(同意) | 仰る通りでございます・ごもっともです | 相手の意見への率直な賛同の表明 |
| 指摘の正しさを認める(判断) | ご指摘の通りです・的を射ております | 指摘や論理の妥当性を客観的に認める評価 |
| 着眼点の鋭さを称える(洞察) | ご明察です・ご慧眼に恐れ入ります | 洞察力や着眼点そのものへの敬意と評価 |
語を選ぶ基準は、相手の意見に賛同したいか、内容そのものを評価したいかでまず分かれる。
前者なら「率直に賛意を示す(同意)」を、後者なら「指摘の正しさを認める(判断)」や「着眼点の鋭さを称える(洞察)」を軸に据える。
「その通り」が持つ同意の性質を踏まえるほど、語を選ぶことで示したい評価の焦点がより明確に伝わるだろう。

