melt(メルト)シャンプー 休息美容の価値創造|ブランドコンセプト分析

 melt(メルト)シャンプー 休息美容の価値創造|ブランドコンセプト分析

「休息美容」という新たな美容観で、ヘアケア市場の価値軸を根本から再定義。

花王の新ヘアケアブランド「melt(メルト)」が提唱する「休みながら美しく”休息美容”」は、効果追求一辺倒のヘアケア業界に「プロセス価値創造型」への転換を促し、美容の存在意義そのものを問い直す注目すべきコンセプトである。

単なるヘアケア用品から脱却し、「感覚体験と自己肯定の融合」によって新たな美容価値の哲学を実現する。

このことを通じて、せわしない日常に「自分を大切にする時間」を取り戻すという戦略的アプローチを分析する。

目次

1.melt(メルト)とは?

花王株式会社が2024年4月に発売した、ヘアケア事業変革の第一弾ブランド「melt(メルト)」

同ブランドが掲げる「休みながら美しく”休息美容”」という新たな価値提案。

「感覚体験と自己肯定の融合」を軸に、従来のヘアケア業界における「効果重視」「時短追求」という既成概念を覆(くつがえ)し、「プロセス自体が価値である」という根本的な価値転換を実現している。

音・泡・感触・香りによる多感覚アプローチを通じて、ヘアケア時間を単なる身だしなみから「自分を大切にする時間」へと昇華させることを目指す。

単なる商品機能論を超えて、「美容行為の質的変化」という哲学的な問いから出発し、セルフケア文化全体の在り方に新たな指針を提示している戦略的なブランドアプローチである。

2.コアコンセプト

休みながら美しく”休息美容”

3.コンセプト評価

コンセプト評価
  • 独創性:★★★
    • 美容業界の「効果追求一択」を「プロセス価値」へと転換させる発想の逆転
  • 魅力度:★★★
    • 五感体験と自己肯定感による理性と感性への強力な訴求力
  • 完成度:★★☆
    • 成分設計から体験型イベントまで一貫したコンセプト体現の高い完成度
  • 時代性:★★★
    • セルフケア志向とウェルネス文化の高まりに完全対応
  • 影響力:★★☆
    • ハイプレミアム市場における新たな美容カテゴリー創造

評価軸について

  • 独創性:他との差別化、新規性、アイデアの斬新さ
  • 魅力度:ターゲットへの訴求力、感情的インパクト
  • 完成度:コンセプトが実際の商品・サービスで適切に体現されているか
  • 時代性:社会トレンドや時代背景への適合性
  • 影響力:市場や社会への波及効果、文化的意義

総評

成熟したヘアケア市場において「休息美容」という新たな価値軸を創造し、競合他社とは全く異なる土俵での明確な差別化を実現している。

この戦略により、効果訴求が中心となりがちなヘアケア市場において、プロセス体験と情緒価値を軸とした独自の価値提供モデルを確立。

発売から短期間での累計250万本突破と、特に追加投入した「うねり髪」向けスムースシリーズ発売後のブランド全体売上約2倍拡大が、その有効性を実証している。

4.誕生背景

生活者の意識変化として「セルフケア重視」の消費行動が高まる時代背景があった。

社会情勢の変化やデジタル社会の情報過多により「自分の心と身体を大切にしたい」という気持ちが拡大し、単なる機能性ではなく、情緒的な癒しや自己肯定感のある美容体験への需要が高まっている。

同時に、ハイプレミアム市場(1,400円以上)の構成比が高まる中で、生活者は商品機能だけでなく、世界観やコンセプト、感情にはたらきかける要素を重視する傾向が鮮明になっている。

花王としては、「髪の生きる力を、人の生きる力へ」という新たな事業ビジョンのもと、感情ニーズに基づくブランドフォーメーション再編を決定。

100年のヘアケア研究の知見を活かしながら、「ヘアケアタイムを自分を大切にする時間に変える」という新たな価値基準を設定する方針を決定した。

この情緒的アプローチの有効性が、発売後の急速な市場拡大とブランド認知向上として実証されている。

5.コンセプトの特徴分析

「休みながら美しく”休息美容”」は、美容業界における価値創造の新たな基準を示している。

3つの視点から分析してみよう。

注目ポイント1:「休む」と「美しくなる」の同時実現による逆説的価値創造

最大の革新性は、「休息」と「美容効果」という従来対立する概念の統合による新カテゴリーの創造にある。

従来の美容業界では、「効果の高さ」「時短の便利さ」などの機能性価値訴求が主流であったが、meltは「心地よい時間の質」という体験価値を追求している。

この発想転換により、単なる髪質改善ではなく「自分をいたわる行為」という物語性を創造し、ヘアケアの「儀式化」を実現している。

注目ポイント2:五感への訴求による包括的ウェルネス体験の設計

コアとなる「音・泡・感触・香り」は、単一感覚ではなく包括的な感覚体験による差別化を表している。

生炭酸シャンプーの「とろシュワ」体験、濃密泡の「ふわとろ」感触、天然精油ブレンドの「マインドフルアロマ」など、「感覚の重層性」という独自の商品哲学を確立。

この多感覚アプローチにより、「ヘアケアを瞑想的体験」へと昇華させる総合的な価値創造姿勢を示している。

注目ポイント3:「うねり髪」市場参入による顧客層の戦略的拡大

「乾燥・ぱさつき髪」のモイストシリーズに続き、「うねり髪」に特化したスムースシリーズを投入することで、20-30代女性の二大髪悩みを包括的にカバーする戦略を実現している。

スムースシリーズ発売後、ブランド全体の売上が約2倍に拡大した事実は、「悩み別セグメンテーション」の有効性を実証している。

この段階的な市場拡大アプローチにより、単なる新商品投入を「ライフステージに寄り添うブランド成長」へと昇華させている点が戦略的である。

6.感情マーケティングの技術分析

この「感覚体験による情緒価値創造」戦略は、現代マーケティングにおける感情アプローチの技術的精度の高さを示している。

meltが採用する多感覚マーケティングは、単なる五感刺激ではなく、「感覚→感情→記憶→愛着」という心理プロセスの設計に基づいている。

生炭酸シャンプーの「シュワシュワ音」は聴覚から期待感を、「とろシュワ泡」は触覚から安心感を、「マインドフルアロマ」は嗅覚から癒し感をそれぞれ喚起し、総合的な幸福感を創造している。

さらに、「自分を大切にする時間」という概念により、ヘアケア行為を「自己肯定感の向上」と直結させる高度な感情設計を実現している。

この技術は、SNSでの自発的な商品体験共有や、美容高感度層からの継続的支持として具現化されており、感情マーケティングの有効性を実証している。

7.コンセプト言語の戦略性

「休みながら美しく”休息美容”」という表現は、従来対立していた概念を統合した戦略的な言語設計である。

「休みながら」という癒しの状態と「美しく」という美容効果を同時に実現できるとすることで、美容行為の負担感を軽減し「努力ではなく癒し」として再定義している。

“休息美容”というカテゴリー名称も秀逸である。

従来の「アンチエイジング」「ダメージケア」といったネガティブ起点の言語から、「休息」というポジティブ状態を価値の中心に据えることで、美容への向き合い方自体を変革している。

「melt」という英語表現は、「とろける」という感覚的体験と「溶け合う」という精神的融合の両方を暗示する高度な言語技法により、ブランド世界観の一体感を演出している点が印象的である。

8.体験・入手方法

  • 主要商品ライン(2025年8月時点)
    • 展開を拡大するmeltシリーズの中核として、「乾燥・ぱさつき髪」向けのモイストシリーズ(シャンプー・トリートメント)、「うねり髪」向けのスムースシリーズ(シャンプー・トリートメント)、ヘッドスパ発想の生炭酸シャンプー「クリーミーメルトフォーム」などが主要ラインナップを形成。
  • 感覚体験
    • 音:生炭酸のシュワシュワ音、泡立ち音
    • 泡:ふわとろ濃密泡、とろシュワ炭酸泡
    • 感触:なめらかな洗い心地、プルプル濃厚トリートメント
    • 香り:マインドフルアロマ(天然精油ブレンド)
  • 価値体験
    • 「自分を大切にする時間」への変換
    • ヘアケアタイムの「儀式化」「瞑想化」
  • 購入方法
    • 全国のドラッグストア、スーパー、オンラインストア等
本連載について

話題のブランドコンセプトを徹底分析するシリーズ。新商品・新サービスから既存ブランドのリニューアルまで、注目を集めるコンセプトの戦略性と仕組みを解き明かしている。

独創性・魅力度・完成度・時代性・影響力の5軸で評価し、なぜそのコンセプトが響くのか、どんな工夫が込められているのかを分析。顧客の心をつかみ、競合との差別化を実現する「価値の約束」をつくるヒントを、マーケティング実務者に提供することを目指す。

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