今回は『可否』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『可否』とはどんな性質の言葉か?
「可否」は、物事の良し悪しや賛否、許可の有無など、判断の向きを広く扱う言葉である。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「可否」は、対象が適切かどうか、許容できるかどうか、賛成か反対かといった判断の有無を指す言葉である。
判断の基準や立場によって焦点が変わり、許可・妥当性・賛否・選考など複数の領域にまたがる点に特徴がある。
実務では、許可として応えるべきか、妥当性の検証として扱うべきかなど、判断の向きに差が生じることもある。
背景の流れを見据え、視点に合う語を慎重に選びたい。
この性質を踏まえ、次章では「可否」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『可否』を品よく言い換える表現集
ここからは「可否」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 実行の許可を判断するとき(許可)
『着手の可否を判断する』『契約の可否を決める』など、実行してよいかどうかを問う際の言い換え。
- 可不可(かふか)
- 実行してよいかどうかを端的に問う、最も汎用性の高い定番語。
- 例:追加予算の可不可について、来週の役員会で判断する方針だ。
- 実行してよいかどうかを端的に問う、最も汎用性の高い定番語。
- 諾否(だくひ)
- 依頼や提案を受け入れるかどうかを、フォーマルな場面で問う際に向く。
- 例:先方には来月中までに参加の諾否を伝えてほしいと依頼した。
- 依頼や提案を受け入れるかどうかを、フォーマルな場面で問う際に向く。
- 許否(きょひ)
- 許可するか拒むかという、権限を持つ側の判断を示す際に重宝する。
- 例:特例扱いの許否について、担当部署からの回答待ちとなっている。
- 許可するか拒むかという、権限を持つ側の判断を示す際に重宝する。
- 応否(おうひ)
- 依頼や招待に応じるかどうかを、案内文書などで控えめに問う表現。
- 例:懇親会へのご応否について、今週中にご一報いただきたい。
- 依頼や招待に応じるかどうかを、案内文書などで控えめに問う表現。
2-2. 妥当か適切か見極めるとき(適正)
『施策の可否を見極める』『判断の可否を検証する』など、内容が適切かどうかを論理的に見極める際の言い換え。
- 是非
- 物事の善悪・適否を総合的に問う、最も使用頻度の高い基本語。
- 例:新規取引先との契約条件について、法務部に是非の確認を依頼した。
- 物事の善悪・適否を総合的に問う、最も使用頻度の高い基本語。
- 適否
- 状況や条件に対して適切かどうかを、客観的・実務的に判断する際に向く。
- 例:現行プランの適否を見直し、来期の方針に反映させる予定だ。
- 状況や条件に対して適切かどうかを、客観的・実務的に判断する際に向く。
- 妥当性
- 判断や数値が理にかなっているかを、分析的な文脈で示す際に重宝する。
- 例:見積金額の妥当性を検証した結果、一部項目に修正を加えた。
- 判断や数値が理にかなっているかを、分析的な文脈で示す際に重宝する。
- 当否
- 判断や処置が正しいかどうかを、やや硬めの文書調で問う表現。
- 例:処分の当否については、改めて社内規程と照らして確認した。
- 判断や処置が正しいかどうかを、やや硬めの文書調で問う表現。
- 正否
- 物事の正しさそのものに焦点を当て、結果の良し悪しを端的に示す。
- 例:報告内容の正否を確かめるため、現場担当者に再確認を取った。
- 物事の正しさそのものに焦点を当て、結果の良し悪しを端的に示す。
- 良否(りょうひ)
- 品質や状態の良し悪しを、検査・評価の文脈で淡々と示す表現。
- 例:納品されたサンプルの良否を確認し、結果を品質管理部に共有した。
- 品質や状態の良し悪しを、検査・評価の文脈で淡々と示す表現。
2-3. 賛成か反対かを示すとき(賛否)
『議案の可否を決する』『出席の可否を伝える』など、意見や対応を明確に表す際の言い換え。
- 賛否
- 賛成か反対かを問う、会議や議決の場面で最も自然な定番語。
- 例:新制度の導入について、来週の全体会議で賛否を確認する。
- 賛成か反対かを問う、会議や議決の場面で最も自然な定番語。
- 異同
- 意見や見解が一致しているか相違しているかを、冷静に整理する際に向く。
- 例:各部署からの回答を集め、方針との異同を確認する作業を進めた。
- 意見や見解が一致しているか相違しているかを、冷静に整理する際に向く。
- 容否(ようひ)
- 申し出を許容するかどうかを、やや格調高い文脈で示す際に向く。
- 例:特例適用の容否について、上長の判断を待っている状況だ。
- 申し出を許容するかどうかを、やや格調高い文脈で示す際に向く。
2-4. 採用するか選び抜くとき(選考)
『候補の可否を選ぶ』『応募者の可否を出す』など、複数の中から選び取る際の言い換え。
- 採否
- 案や人材を採用するかどうかを、決定の場面で端的に示す定番語。
- 例:新規プロジェクトの採否は、予算審議の結果を踏まえて決定する。
- 案や人材を採用するかどうかを、決定の場面で端的に示す定番語。
- 合否
- 試験や審査の結果を、客観的な基準に基づいて示す表現。
- 例:選考の合否は、書類選考の通過者に個別で連絡する予定だ。
- 試験や審査の結果を、客観的な基準に基づいて示す表現。
- 取捨(しゅしゃ)
- 必要なものと不要なものを選び分ける判断そのものを示す際に重宝する。
- 例:提出された企画案の取捨を進め、優先度の高いものから着手した。
- 必要なものと不要なものを選び分ける判断そのものを示す際に重宝する。
3.まとめ:『可否』を言い換える——判断基準を描き分ける技法
「可否」は、判断の向きがどこに置かれるかによって適切な語が変わる表現である。
| 文脈 | 代表語 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 実行の許可を判断するとき(許可) | 可不可・諾否 | 実行の可否を問う基準 |
| 妥当か適切か見極めるとき(適正) | 是非・適否 | 内容の妥当性を測る視点 |
| 賛成か反対かを示すとき(賛否) | 賛否・異同 | 意見の向きを示す判断 |
| 採用するか選び抜くとき(選考) | 採否・当否 | 選び取る基準の明確化 |
語を選ぶ基準は、判断の焦点が〈内容の適切さ〉にあるのか〈意思や対応〉にあるのかでまず分かれる。
前者なら「実行の許可を判断するとき(許可)」や「妥当か適切か見極めるとき(適正)」を、後者なら「賛成か反対かを示すとき(賛否)」や「採用するか選び抜くとき(選考)」を軸に据える。
判断の向きを整えるほど、可否の分岐点がどこにあるのかが静かに浮かび上がってくるだろう。

