ギャツビー・メタラバー 若い男性に高評価のワケ

ギャツビー メタラバー
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マンダムの「ギャツビー」から新しいヘアスタイリングシリーズ「メタラバー」が発売された。

ワックス、バーム、クレイ、グロス、ジェル、フォームの6つの剤型があり、その剤型のイメージからどんなヘアスタイルに向いているのかが直感的に分かるのが最大の特徴だ。

コンセプトのキーワードは「エフォートレス」。

「エフォート(努力)」が「レス(ない)」の意味がある。

「時間やお金のコストをかけたくない」「失敗したくない」などの心理的なストレスを払拭し、エフォートレスにヘアスタイルを表現できることを目指したという。

目次

ギャツビーの傑作、「メタラバー」誕生

マンダムの男性化粧品ブランド「ギャツビー」から新しいヘアスタイリング剤「メタラバー」シリーズが2023年2月に発売された。

ブランド名には「ラバー」とある。

そう聞くと多くの人はシリコンやウレタンと同一線上にあるような、柔らかい素材をイメージするだろう。ラケット靴底などに使われているあの類(たぐい)だ。

そこに「メタ」が付く。

「メタ」といえば、フェイスブックの新しい社名「メタ(メタ・プラットフォームズ)」「メタバース」として昨今は富みに耳目を集めており、ちょっと近未来的な響きがある。

メタ

「メタ」は一般的には「超越した、高次の」といった意味があるが、「変化」という意味もあるらしい。

「メタボリック症候群」は国民的な知名度を獲得したが、もともとは「メタボリズム(metabolism)」から来ている。

これには古いものと新しいものとが入れかわる「代謝」の意味がある。

ブランド名の「メタラバー」はおそらく、人々の頭の中に「超越的で近未来的であり、融通無碍(むげ)に形を変え得るもの」をイメージさせる役割を担うべく命名されたのだろう。

また、「ギャツビー」には2006年から発売されているへアワックスの「ムービングラバー」がある。

ヨーヨーのような形の容器に入った8種類ものアイテムがそろう人気シリーズで、男性用ヘアワックス市場では売上NO.1だという。

その「ムービングラバー」をも超える次世代シリーズといった意味も「メタラバー」には込められているのかもしれない。

コンセプトは「エフォートレス」

「メタラバー」のコンセプトを一言でいえば「エフォートレス(effortless)」となる。

「エフォート(努力)」が「レス(ない)」の意味があり、転じて肩肘張らない、リラックス感のあるスタイルとしてファッション分野ではよく使われる言葉だ。

「メタラバー」はなりたいヘアスタイルをエフォートレスに表現するスタイリング剤で、そのためには高いセット力と使いやすさを両立しているのだという。

「ギャツビー」の公式サイトにはキャッチフレーズに「超ラクに、超自在に、超キマる」とある。

「超ラクに」とはエフォートレスな使用感で洗い落ちもよく、すべてがストレスフリーであることを、「超自在に」ではワックスだけではない、どんなスタイルにも応える幅広いラインナップを、「超キマる」では軽い使用感なのに強いセット力、しかもサロン品質であることをそれぞれ指している。

「剤型」別編成のラインアップ

そして、この「エフォートレス」のコンセプトを実現するのに「メタラバー」が力を注いだのが、若い男性が求める多様なヘアスタイルに対応できるよう、豊富な剤型ラインアップを用意したことだ。

ワックス、バーム、クレイ、グロス、ジェル、フォームの6つの剤型がある。

ワックスならワックス、バームならバームと、それぞれの剤型ならではのパフォーマンス性が最大限に発揮されるように独自の処方技術を用いて開発されている。

「ギャツビー」の公式サイトには「メタラバー」シリーズの各剤型のポジショニングマップが掲載されている。

縦軸がセット力(高/低)、横軸が質感(マット/ツヤ)の2軸四象限のマトリクスをイメージして欲しい。

そこにワックス、バーム、クレイ、グロス、ジェル、フォームがそれぞれどの位置にあたるかを一目で俯瞰できるようにしているのだ。

たとえば、セット力が強く、質感がマットな剤型なら「ワックス ハード」「クレイ フレックス」となる。

それらと同等のセット力でよりツヤのある質感を求めるなら「ジェル プレイフル」だ。

もともとの剤型の特質を頭に思い浮かべれば、期待できるパフォーマンス性がイメージしやすいのも、剤型別ラインアップの大きなメリットといえよう。

また、各剤型の名まえに続く「フレックス」「プレイフル」といったショルダーが効いている。

その仕上がりがよりイメージしやすくなる。

また、「メタラバー」の発売にあたり、公式サイトやプロモーション動画など様々なメディアを通して、各剤型の特質を生かしたヘアスタイルが数多く提案されている。

それらのヘアスタイルの監修はZ世代(1990年代中盤以降に生まれた世代)に対して絶大な影響力を持つ人気メンズサロン「fifth」が務めているという。

VS. ムービングラバー

実は従来からある人気の「ムービングラバー」シリーズもプロダクトコンセプトはかなり近いところを狙っている。

「ギャツビー」の公式サイト「ムービングラバー」を覗いてみると、「ムービングラバー成分配合により、何度でも思い通りに動かせる」「これで、思い通りの仕上がりに」とある。

「エフォートレス」という表現は使っていなにせよ、使いやすさにこだわり、ラインアップも豊富で自分が望むヘアスタイルを叶えるアイテムをみつけやすい。

目指すところは「ムービングラバー」と同じだろう。

しかし、両シリーズには決定的な違いがある。「ムービングラバー」は8種類というラインアップがあるにせよ、すべて「ワックス」なのだ。

へアワックス

そこから求めるヘアスタイル別にアイテムが枝分かれする格好となっている。

たとえば髪を立ち上げハネ感を出すには「スパイキーエッジ」、クシュクシュとしたパーマ感を出すには「ルーズシャッフル」を選ぶといった具体だ。

一方の「メタラバー」はいわば剤型別編成で、そもそもの剤型のイメージをいわば「借景」とすることで、それぞれのアイテムの特徴を打ち出している。

AIトレンド兆し探索ツールの活用

この「メタラバー」の開発にはAIが一役買っているという。

マンダムはこれまで20歳前後の男性にフォーカスし、調査や観察を通して、彼らの価値観情報の集め方購買行動のなどの変化を熱心に追ってきた。

たとえば、ギャツビーの公式サイトによれば、先に触れた「ムービングラバー」もトレンドやユーザーの声を反映し、商品がアップデートされることを特徴の一つとしている。

その察知力こそ、売り上げNO.1を維持し続ける秘訣とさえうたっているのだ。

その察知力に磨きをかけ、さらに察知するスピードを加速させるために、マンダムではAIを活用した「トレンド兆し探索ツール」の開発にかねてから取り組んでいた。

ツール開発にはAI開発を手掛けるベンチャー「エクサウィザーズ」の協力を得ている。

「メタラバー」においては、同AIツールが、SNS上のおしゃれや身だしなみに関する投稿内容、とりわけインフルエンサーやマイクロインフルエンサーたちの投稿から、今後トレンドになりそうな兆候を自動的に抽出・分析するのだという(読売新聞オンライン 2023.1.7)

このAIツールを絡めた分析を通して浮かび上がったのが、ターゲットとする世代がスタイリングする際に「スマートさ」を重視していることである(PR TIMES 2023.2.10)

好みのヘアスタイルを叶える「セット力」は当然として「ベタつかない」「洗い落ちがいい」などのストレスのない使いやすさが必須の要件となる。

それだけではない。

そうした物理的なストレスの解消に加え、「時間やお金のコストをかけたくない」「失敗したくない」などの心理的なストレスを感じさせないことも合わせて重視されていたのだ。

「メタラバー」がコンセプトに「エフォートレス」を打ち出した背景にはこうしたターゲットインサイトがあった。

メタラバーはムービングラバーを超えるのか?

本ブログでは以前に心理法則の一つとして「接近動機づけ」と「回避動機づけ」について記事にしている。

人はこれまで蓄えてきた快・不快の感情の記憶を頼りに、極めて直感的に対象に接近するか、あるいは対象を回避するかを決めているところがあるのだ。

もちろん、快・不快の感情などに頼らず、慎重に時間をかけて吟味することもあるが、願わくば自分の脳に負担がかかるような煩わしい思いはしたくない。

とかく「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視するといわれる若い世代ならなおのことそうだろう。

たとえ十分に吟味したからといって、必ずしも正解にたどり着けるとは限らないのだ。

「ムービングラバー」は8種類ものアイテムがあり、実現しようとするヘアスタイルの微妙なニュアンスにも答えてくれそうではある。

しかし、「どう使い分けれるのか」「買って合わなかったからどうしよう」といった一抹の不安も伴う。

快か不快かの感情に従って接近するか・回避するかが決まるルールなら、「ムービングラバー」は決して心地よい対象にはなり得ず、むしろ「回避」する対象になってしまいかねない。

仮に若い世代がマンダムの読み通り「エフォートレス」を重視するというなら、ヘアワックスNO.1のシリーズといえども、「ムービングラバー」が彼らの間尺に合っているとは言い難いのだ。

そこで「ムービングラバー」を超える「メタラバー」なのである。

「こういう髪形にしたい」という思い思いのがあって、その像に近づくのに最適なアイテムを手早く確実に選べる、そしてストレスなく使える設計になっているのだ。

マンダムは今回のコンセプトメイクや商品設計にはよほどの自信があるらしく、ギャツビーの公式サイトには「傑作誕生 時代が求めた売上NO.1ブランドの答え」とある。

果たして、若い男性たちは狙い通り、「メタラバー」に手を伸ばすのか? 

AIツールの実力も試されるだけにこれからの新シリーズの進展に注目したいところだ。

主な情報源
  • ギャツビー公式サイト(参照日2023年06月09日)
  • 「超ラクに、超自在に、超キマる。スマートなヤング男性のヘアスタイルをエフォートレスに表現『ギャツビー メタラバーシリーズ』が2月20日(月)より新発売!」
  • 「マンダム、AIを活用した『トレンド兆し探索ツール』を開発 ~培ってきた生活者理解力にAIによるSNS分析を加え、新価値創造を加速~」 2022年12月14日 PR TIMES
  • 「男の美容トレンド AIで先読み マンダム、SNSの投稿分析」 2023年05月08日 日本経済新聞
  • 「メンズコスメの流行先読み、インフルエンサーの投稿からAIが分析…マンダムから第1弾商品」 2023年01月07日 読売新聞オンライン
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