「charge」という英単語、意味は知っているのに、文脈によって戸惑う——そんな経験はないだろうか。
「請求する」「充電する」「責任を負わせる」「攻撃する」など、訳語は多岐にわたり、場面によって意味が大きく変化する。
その多義性ゆえに、使い分けが直感的に捉えづらく、誤用や理解のズレを生みやすい。
ときに制度的な負荷を課し、ときに勢いを注ぎ込み、ときに法的な責任を背負わせる——「charge」は、物理・抽象・制度・心理の領域をまたいで機能する、極めて柔軟かつ力強い動詞である。
本稿では、「荷車に荷を詰め込む」という原義に由来する“何かを載せる”というコアイメージを出発点に、「charge」が持つ意味の広がりと類義語との違いを体系的に整理する。
0.今回のテーマは「charge」
【意味】
- (荷物・責任などを)載せる、課す
- (料金を)請求する
- (任務・役割を)与える
- (攻撃を)仕掛ける、突進する
- (電気を)充電する (人を)
- 告発する、責任を問う
「charge」は、日常会話からビジネス、法律、軍事、科学まで、極めて広範な文脈で登場する動詞である。
「請求する」「責任を負わせる」「攻撃する」「充電する」など、日本語訳は多岐にわたるが、いずれも「何かを“載せる”」という共通の感覚に根ざしている。
また、日本語でも「チャージする(電子マネーをチャージする/エネルギーをチャージする)」といった形で外来語として定着しており、意味の一部は直感的に理解しやすい。
しかし、英語の「charge」が持つ意味の広がりはそれをはるかに超えており、文脈によっては「告発する」「突撃する」など、まったく異なるニュアンスを帯びることもある。
本稿では、「charge」の中心にある“荷車に荷を詰め込む”という原義から派生した「エネルギー・責任・攻撃性を載せる」感覚を起点に、意味の広がりと類義語との違いを体系的に整理する。
辞書的な意味の暗記ではなく、英語の“状況感覚”として「charge」を理解することを目指す。
1.なぜ「charge」は難しい?多義性の3つの理由
「charge」が難解に感じられる理由は、主に以下の3点に集約される。
① 意味の幅が広く、文脈によって訳語が大きく変化する
たとえば以下のような用例がある:
- charge a fee(料金を請求する)
- charge a battery(バッテリーを充電する)
- charge someone with theft(窃盗で告発する)
- charge into battle(戦闘に突撃する)
- be in charge of a team(チームの責任者である)
- charge a task to someone(任務を割り当てる)
これらは一見すると無関係に見えるが、いずれも「何かを載せる/課す/注ぎ込む」という感覚でつながっている。
つまり、「charge」は物理的な動作から抽象的な責任まで、幅広い意味領域をカバーしており、文脈によって訳語が大きく変化する。
なお、日本語でも「チャージする」という言い方が定着しており、特に「電子マネーをチャージする」「スマホをチャージする」などの使い方は日常的だ。
しかし、英語の「charge」はそれ以上に多義的で、たとえば「告発する」「突撃する」「責任者である」など、日本語の「チャージ」からは想像しづらい意味も含まれている。
② 物理・抽象・制度的な意味が混在している
「charge」は、電気・軍事・法律・ビジネス・日常会話など、非常に多様な分野で使われる。
- 科学では「電荷を帯びる」
- 法律では「罪を課す」
- ビジネスでは「料金を請求する」
- 軍事では「突撃する」
- 日常では「責任を負う」
このように、具体的な動作から抽象的な制度的責任まで、意味のスケールが極端に広いため、単語の印象が定まらず、使い分けが難しくなる。
③ 類義語との違いが直感的に捉えづらい
「load」「assign」「accuse」「attack」「bill」など、似たような文脈で使われる単語との違いが明確でないため、誤用が起こりやすい。
たとえば:
- load:物理的に積むが、責任や制度的意味はない
- assign:任務を割り当てるが、攻撃性や料金の意味はない
- accuse:罪を指摘するが、制度的な告発とは異なる
- bill:請求書を送るが、chargeほど広義ではない
- attack:物理的な攻撃だが、chargeには勢いと目的が含まれる
このように、「charge」は意味の広がりが大きく、文脈によってニュアンスが激しく変化するため、辞書的な理解だけでは不十分である。
次章では、「charge」のコアイメージ——“荷車に荷を詰め込む”=「エネルギー・責任・攻撃性を載せる」——について詳しく解説する。
2.コアイメージは「“載せる”感覚」。語源から読み解く
「対象に何かを“載せる”ことで、負荷・義務・勢いを生じさせる」 =「注ぎ込む」「課す」「背負わせる」
語源はラテン語 carricare(荷を積む)に由来し、古フランス語 charger を経て英語に定着した。

もともとは「荷車に荷を積む」物理的な動作を指していたが、現代英語ではこのイメージが抽象化され、電気・責任・料金・攻撃性など、さまざまな“負荷”を対象に載せる動詞として機能している。

この「載せる」感覚は、単なる動作ではなく、対象にエネルギーや義務を積載することで、制度的拘束や心理的圧力、あるいは物理的な勢いを生み出す。
つまり「charge」は、何かを“課す”ことで状況に力を加える動詞なのだ。
たとえば:
- charge a battery(バッテリーに電気を詰め込む)
- charge a fee(料金という負荷を課す)
- charge someone with a task(任務という責任を背負わせる)
- charge into battle(攻撃の勢いを注ぎ込む)
- be in charge of a team(管理責任を担う)
これらは一見バラバラに見えるが、いずれも「対象に何かを載せる」ことで、エネルギー・義務・制度的拘束・攻撃性などを生じさせるという共通構造を持っている。

なお、「charge」は動詞だけでなく名詞としても使われる。
たとえば a charge は「料金」「告発」などを意味し、また「person in charge」のような形で「責任者」を表すこともある。

いずれも“何かを負わせる/課す”というコアイメージに根ざしている。
名詞形でもその多義性は健在だといえよう。
日本語でも「チャージする」という言い方が定着しており、特に「電子マネーをチャージする」「スマホをチャージする」などの使い方は直感的に理解しやすい。
しかし英語の「charge」はそれ以上に意味の広がりが大きく、「責任を負わせる」「罪を課す」「突撃する」といった文脈にも展開される。
この「載せる」感覚を押さえることで、「charge」が持つ多義的な意味の広がりを、辞書的な暗記ではなく、状況のリアリティとして直感的に理解することが可能となる。
次章では、このコアイメージをもとに、文脈ごとの具体的な用法を整理していく。
3.コアイメージから広がる多義的な用法
「charge」が持つ「荷車に荷を詰め込む」という原義は、現代英語において「エネルギー・責任・攻撃性・義務・料金などを“載せる”」というコアイメージへと進化している。
この「載せる」感覚は、物理的な動作だけでなく、抽象的な責任や制度的な拘束にも広がり、文脈に応じて多様な意味を生み出している。
以下の表は、その代表的な用法を整理したものである。
用法カテゴリ | 例文 | コアイメージとのつながり |
---|---|---|
電気・エネルギーを充填する | charge a battery | バッテリーにエネルギーを“詰め込む” |
金銭を請求する | charge a fee | 顧客に料金という“負荷”を課す |
任務・責任を与える | charge someone with a task | 人に義務や責任を“載せる” |
告発する | charge someone with theft | 法的責任を“課す”ことで制度的拘束を生む |
突撃する | charge into battle | 攻撃のエネルギーを“注ぎ込み”、前方へ突進する |
管理・監督する | be in charge of the department | 部門の責任を“背負っている”状態 |
このように、「charge」は単なる「請求」や「充電」ではなく、「何かを載せる/課す/注ぎ込む」行為として機能する。
以下では、日常・ビジネス・法的・軍事文脈に分けて具体的な使用例を確認する。
日常文脈での「charge」使用例
① 電気・エネルギーを充填する
- I need to charge my phone before I leave.
- 出かける前にスマホを充電しないと。
- =エネルギーを“詰め込む”感覚。
- 出かける前にスマホを充電しないと。
② 金銭を請求する
- They charged me $10 for the delivery.
- 配達料として10ドル請求された。
- =料金という“負荷”を課された状態。
③ 責任・任務を与える
- She was charged with organizing the event.
- 彼女はイベントの企画を任された。
- =任務という“責任”を載せられた。
- 彼女はイベントの企画を任された。
ビジネス文脈での「charge」使用例
① 請求・課金する
- The hotel charges extra for late check-out.
- ホテルではレイトチェックアウトに追加料金がかかる。
- =制度的に金銭的負荷を課す。
- ホテルではレイトチェックアウトに追加料金がかかる。
② 管理・監督する
- He is in charge of the marketing team.
- 彼はマーケティングチームの責任者だ。
- =チーム運営の責任を“背負っている”。
- 彼はマーケティングチームの責任者だ。
③ 任務・役割を割り当てる
- The manager charged her with improving customer service.
- マネージャーは彼女に顧客対応の改善を任せた。
- =改善という“課題”を載せる。
- マネージャーは彼女に顧客対応の改善を任せた。
法的・制度的文脈での「charge」使用例
① 告発する
- He was charged with fraud.
- 彼は詐欺の罪で告発された。
- =法的責任を“課された”状態。
- 彼は詐欺の罪で告発された。
② 突撃する
- The soldiers charged at the enemy position.
- 兵士たちは敵陣に突撃した。
- =攻撃のエネルギーを“注ぎ込む”行為。
- 兵士たちは敵陣に突撃した。
このように、「charge」は物理的な動作だけでなく、心理的・制度的・社会的な“負荷”や“責任”を載せる動詞である。
日本語でも「チャージする」という言い方が定着しているが、英語の「charge」はそれ以上に多義的で、文脈によっては「告発」「突撃」「任務の割り当て」など、まったく異なる意味を帯びる。
この「載せる」感覚を理解することで、「charge」が持つ多義的な意味の広がりを、文脈に応じて自然に使い分けることが可能となる。
次章では、こうした意味の広がりを踏まえたうえで、「load」「assign」「accuse」「attack」などの類義語との違いを明確にしていく。
4.類義語との違いを徹底比較
「charge」は「請求する」「責任を負わせる」「攻撃する」「任務を与える」などと訳されることが多いが、同じような文脈で使われる load、assign、accuse、attack、bill などとはニュアンスが異なる。
以下の表は、それぞれのコアイメージと違いを整理したものである。
単語 | コアイメージ | 違いのポイント |
---|---|---|
load | 物理的に積む | 単なる物体の移動であり、制度的・抽象的な意味はない |
assign | 任務を割り当てる | 責任の所在は明示されるが、攻撃性や金銭的負荷は含まれない |
accuse | 過ちを指摘する | 感情的・道徳的な非難が中心で、制度的拘束は弱い |
attack | 物理的に攻撃する | 行動の激しさはあるが、制度的・抽象的な負荷は伴わない |
bill | 金銭的に請求する | 商業的な文脈に限定され、責任や義務のニュアンスは弱い |
charge | 負荷・責任・勢いを載せる | 制度的拘束・攻撃性・金銭的負荷などを広く含む多義的動詞 |
ここから、類義語との違いを英文と和訳のセットで紹介する。文脈ごとのニュアンスの違いを直感的に理解してほしい。
① charge vs load:抽象性と制度性の違い
- I loaded the boxes onto the truck.
- 箱をトラックに積み込んだ。
- =物理的な動作。抽象的な意味はない。
- 箱をトラックに積み込んだ。
- I charged the team with delivering results.
- チームに成果の達成という責任を課した。
- =制度的・抽象的な負荷を“載せる”行為。
- チームに成果の達成という責任を課した。
▶︎「load」は物理的な積載、「charge」は制度的・心理的な負荷——意味の抽象度が異なる。
② charge vs assign:責任の重さと拘束性の違い
- She was assigned to lead the project.
- 彼女はそのプロジェクトのリーダーに任命された。
- =業務的な割り当て。拘束性は限定的。
- 彼女はそのプロジェクトのリーダーに任命された。
- She was charged with leading the reform.
- 彼女は改革の責任を負わされた。
- =制度的・社会的な義務を“課された”状態。
- 彼女は改革の責任を負わされた。
▶︎「assign」は任命、「charge」は責任の課題——制度的拘束の有無が違いを生む。
③ charge vs accuse:制度的告発と感情的非難の違い
- They accused him of lying.
- 彼は嘘をついたと非難された。
- =道徳的・感情的な指摘。法的拘束は弱い。
- 彼は嘘をついたと非難された。
- He was charged with fraud.
- 彼は詐欺罪で告発された。
- =法的責任を“課された”制度的拘束。
- 彼は詐欺罪で告発された。
▶︎「accuse」は非難、「charge」は告発——制度の介入があるかどうかが分かれ目。
④ charge vs attack:勢いと制度性の違い
- The dog attacked the intruder.
- 犬が侵入者を攻撃した。
- =物理的な行動。制度的意味はない。
- The soldiers charged the enemy lines.
- 兵士たちは敵陣に突撃した。
- =勢いを“注ぎ込む”戦術的行動。軍事的制度にも関わる。
- 兵士たちは敵陣に突撃した。
▶︎「attack」は行動の激しさ、「charge」は勢い+制度的文脈——目的の構造が異なる。
⑤ charge vs bill:商業文脈での使い分け
- We billed the client for the service.
- サービスに対して顧客に請求書を送った。
- =商業的な処理。制度的拘束はない。
- サービスに対して顧客に請求書を送った。
- We charged the client $500 for the consultation.
- 相談料として顧客に500ドルを請求した。
- =金銭的負荷を“課す”行為。価格設定の責任も含む。
- 相談料として顧客に500ドルを請求した。
▶︎「bill」は請求書の発行、「charge」は金銭的負荷の課題——商業的責任の深さが違う。
このように、同じ「責任を負わせる」「請求する」「攻撃する」と訳される単語でも、英語では「物理的な積載」「業務的な割り当て」「道徳的な非難」「戦術的な行動」「商業的な処理」など、細かなニュアンスの違いが存在する。
「charge」はその中でも、「対象に負荷・義務・勢いを載せる」という抽象的かつ制度的な力を持つ点が特徴的である。
次章では、こうした違いを踏まえたうえで、実践的な使い方を確認していく。
5.実践:文脈で使い分ける
以下の文の空欄に、適切な語句(charge / load / assign / accuse / attack / bill)を入れてみよう。
文脈に応じたニュアンスの違いを意識することで、単語の選択精度が高まる。
- We need to ___ the battery before the trip.
- (旅行前にバッテリーを充電する必要がある)
- 答え:charge ※エネルギーを“詰め込む”感覚。
- They ___ the truck with supplies for the shelter.
- (彼らは避難所向けの物資をトラックに積み込んだ)
- 答え:loaded ※物理的に“積む”動作。抽象性はない。
- The manager ___ her with leading the new campaign.
- (マネージャーは彼女に新しいキャンペーンの指揮を任せた)
- 答え:assigned ※業務的な割り当て。制度的拘束は限定的。
- He was ___ of leaking confidential information.
- (彼は機密情報の漏洩を非難された)
- 答え:accused ※道徳的・感情的な非難。法的拘束は弱い。
- The dog ___ the intruder without warning.
- (犬が侵入者に何の前触れもなく襲いかかった)
- 答え:attacked ※物理的な攻撃。制度性や命令性はない。
- The commander ordered the troops to ___ the hilltop.
- (司令官は部隊に丘の頂上への突撃を命じた)
- 答え:charge ※軍事的な勢いと命令による制度的行動。
- The hotel will ___ you for any damage to the room.
- (部屋の損傷についてホテルから請求されます)
- 答え:charge ※金銭的負荷を“課す”制度的処理。
このように、同じ「載せる」「責任を負わせる」「請求する」「攻撃する」と訳される行為であっても、文脈によって選ぶべき単語は異なる。
- charge:負荷・義務・勢いを“載せる”制度的・抽象的な動詞である。
- load:物理的に“積む”動作を表す。
- assign:業務的な“割り当て”を意味する。
- accuse:感情的・道徳的な“非難”を示す。
- attack:物理的な“攻撃”を指す。
- bill:商業的な“請求書の発行”を表す。
それぞれのコアイメージを把握することで、場面に応じた語の選択がより的確に行えるようになる。
次章では、これまでの整理を踏まえ、「charge」という語が持つ多義性の理解が実践にどう活かされるかを総括する。
6.まとめ:「charge」は“載せる”感覚でとらえる
「charge」は、エネルギー・責任・攻撃性・制度的拘束などを“載せる”ことで、状況に力を加える動詞である。
充電や請求にとどまらず、任務の割り当てや法的告発、突撃の勢いまで、文脈に応じて多様な意味を生み出す。その根底には、「何かを課すことで対象を変化させる」という構造がある。
類義語と比べても、「charge」は物理・抽象・制度・心理の領域を横断し、負荷の質と深さを表現できる点で独自性が際立つ。
重要なのは、語義を暗記することではなく、「何が載せられているのか」を場面ごとにイメージすること。
それが、「charge」を実感を伴って使いこなすための第一歩となる。