『促す』を品よく言い換えると? ビジネスの類語・品位語|プロの語彙力

『促す』を品よく言い換えると? ビジネスの類語・品位語|プロの語彙力

今回は『促す』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。

目次

1.『促す』——便利だが単調になりがちな口ぐせ

報告や会議で『促す』を多用すると、進行なのか合意形成なのかが曖昧になる。

便利さに頼りすぎれば、説明の厚みも説得力も削がれてしまう。

典型的な使われ方を見てみよう。

口ぐせで使われがちな例

  • 会議の進行を促しました
  • 資料提出を促しました
  • 交渉における合意形成を促しました
  • 参加者の発言を促しました
  • 期限内の対応を促しました

例を置き合わせると、気づけば“いつもの言い方”に引っ張られ、説明が同じ方向へ収束していたことが分かる。

次章で文脈別の品位ある言い換えを示してみたい。

2.『促す』を品よく言い換える表現集

ここからは『促す』を7つの文脈に分けて紹介する。

2-1. 柔らかい依頼・お願い

  • お願いする
    • 最も一般的で丁寧な依頼表現。社内外の文書や会話で幅広く使える。
      • 例:会議資料の提出をお願いするメールを送った。
  • お声がけする
    • 柔らかく社交的な依頼。参加や協力を自然に促す。
      • 例:新たなメンバーにお声がけし、参加を得た。
  • ご協力をお願いする
    • 協働や共同作業を依頼する際に最適。丁寧で品位ある響き。
      • 例:新制度導入にあたり、各部署にご協力をお願いする文書を配布した。
  • 働きかける
    • 行動を促すために積極的にアプローチするニュアンス。
      • 例:経理部に予算承認を働きかけた

2-2. 期限・速度を意識した催促

  • リマインドする
    • 締切や約束を思い出させる柔らかい催促。現代ビジネスで自然に響く。
      • 例:提出期限をリマインドするためのメールを送った。
  • フォローアップする
    • 進捗確認や追跡を促す表現。英語由来だが定着しており、柔らかい印象。
      • 例:商談後、メールでフォローアップし、返答を促した。
  • 進捗をご確認いただく
    • 催促を直接言わず、確認依頼として伝える婉曲的な表現。
      • 例:プロジェクトの進捗をご確認いただくよう連絡した。
  • 念押しする
    • 重要事項を再度強調することで、行動を促す表現。やや強めだが自然。
      • 例:契約条件を念押しし、誤解を未然に防いだ。
  • 督促する
    • 法的・公式な場面での強い催促。一般的なビジネス会話では限定的。
      • 例:未入金について正式に督促する文書を送付した。
  • ご案内する
    • 催促を感じさせない婉曲的で上品な表現。メールで頻用される。
      • 例:締切が近づいておりますので改めてご案内いたします
  • 再確認をお願いする
    • 「念押し」より柔らかく、確認を促す表現。
      • 例:提出物について再確認をお願いするメールを送った。
  • お声かけする(催促文脈)
    • 個別に注意を促す柔らかい表現。依頼分類にもあるが催促にも応用可能。
      • 例:未提出者に個別にお声かけし、回収率を高めた。

2-3. 行動を後押し・推進する

  • 後押しする
    • 相手の決断や行動を支援する柔らかい促し。心理的ハードルを下げる。
      • 例:提案内容が意思決定を後押しした
  • 推進する
    • プロジェクトや施策を前進させる正式な表現。組織的な文脈に適する。
      • 例:新規事業を推進するため、専門チームを設置した。
  • 活性化する
    • 停滞している場や議論に活気を与えるニュアンス。
      • 例:部門間の交流を活性化する施策を導入した。
  • 喚起する
    • 注意や意識を呼び起こす表現。説明が必要だが知的に響く。
      • 例:注意を喚起する通達で、事故を未然に防いだ。

2-4. 参加・関与を呼びかける

  • ご参加いただく
    • イベントや会議への参加依頼に最適。丁寧で自然。
      • 例:説明会へご参加いただくよう案内した。
  • 参画いただく
    • プロジェクトや施策への主体的関与を促す表現。
      • 例:有識者に委員会へ参画いただき、議論を深めている。
  • ご参集いただく
    • 会議や式典など、集合を促すフォーマルな表現。
      • 例:全社員にご参集いただくよう案内した。
  • 巻き込む
    • ややインフォーマルだが協働を促す表現。
      • 例:関係部署を巻き込み、改革を進めた。
  • 協働を呼びかける
    • 共同作業を促す表現。参画と重複するが補足的。
      • 例:外部パートナーに協働を呼びかけ、協力を得た。

2-5. 助言・提案で方向性を示す

  • 提案する
    • 相手に選択肢を示す丁寧な表現。押し付けがましくない。
      • 例:改善策を提案し、議論を前へ進めた。
  • 推奨する
    • 専門性を帯びた助言。フォーマルな場面に適する。
      • 例:新システム導入を推奨する報告書を提出した。
  • 検討をお願いする
    • 相手に熟考を促す表現。意思決定前の依頼に最適。
      • 例:契約条件のご検討をお願いし、取引先へ連絡した。
  • 提言する
    • 「提案」より公的・建設的で、意見の重みを感じさせる。
      • 例:業務改善について提言する報告書をまとめた。

2-6. 進行を加速・円滑化する

  • 加速する
    • プロジェクトや改革をスピードアップさせる表現。
      • 例:改革を加速するための新施策を導入した。
  • 進展させる
    • 停滞している状況を次段階へ進める表現。
      • 例:協議を進展させるため、追加の提案を行った。
  • 調整を図る
    • 関係者間の調整を進める表現。業務推進や工程管理に必須。
      • 例:関係部署との調整を図り、円滑な進行を実現した。
  • 円滑化する
    • 障害を取り除き、スムーズに進める表現。業務プロセスや組織運営に適する。
      • 例:部門間の連携を円滑化する仕組みを整えた。
  • 前進させる
    • 停滞を打破して進める表現。抽象度が高いが、改革や改善の文脈で自然。
      • 例:新方針の採用で組織改革を前進させた
  • 展開を図る
    • プロジェクトや施策を広げていく表現。ビジネス文書で頻出し、知的な響き。
      • 例:全国での展開を図る計画を策定した。
  • 推し進める
    • 強い意志で前進させる表現。やや文語的だが品格がある。
      • 例:構造改革を推し進める方針を打ち出した。

2-7. 動機づけ・意欲喚起

  • 奨励する
    • 良い行為を積極的に推奨する表現。制度や方針の文脈でよく使われる。
      • 例:資格取得を奨励する制度を導入した。
  • 鼓舞する
    • 強い感情や士気を高める表現。スピーチやリーダーの発言に適する。
      • 例:リーダーの言葉がチームを鼓舞した
  • 動機づける
    • 心理的に意欲を引き出す表現。教育や人材育成の場面で自然。
      • 例:明確なビジョンで社員を動機づけた
  • 背中を押す
    • 比喩的で柔らかい促し。意思決定や挑戦を支えるニュアンス。
      • 例:上司の一言が、転職の決断の背中を押した
  • 士気を高める
    • チーム全体の意欲を強める表現。マネジメントや組織運営で頻用。
      • 例:成功事例の共有でチームの士気を高めた
  • 意欲を引き出す
    • 柔らかく心理的に促す表現。教育・人材開発の文脈に適する。
      • 例:対話を通じて部下の意欲を引き出す取り組みを行った。

3.まとめ:『促す』の言い換えが表現の品位を形づくる

「促す」という一語に依存すれば、依頼も推進も同じ調子に埋もれてしまう。

だが文脈に応じて言い換えれば、協働の呼びかけから意欲の喚起、進行の加速まで多彩な姿が立ち現れる。

語彙の工夫が説明の厚みを増し、信頼の糸を編み上げていく。

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