今回は『伝える』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『伝える』とはどんな性質の言葉か?
「伝える」は日常からビジネスまで幅広く使われる一方で、どこまでの内容を相手に届けたいのかが曖昧になりやすい。
まずは、この語が持つ性質を簡潔に整理しておきたい。
意味のコア
「仕組み」は、複数の要素が一定の目的に向けて連動し、結果を生み出すための構成や働きを示す語である。
その際、事実の共有から理由の説明、組織としての発信、他者の言葉の媒介、価値の引き継ぎまで、複数の方向性が重なりやすく、文脈によって射程が揺れやすい性質を含む。
なぜ、人は「伝える」の言い換えを探すのか?
「伝える」だけでは、報告なのか説明なのか、あるいは組織としての発信なのかが判然とせず、責任範囲が不明確になることがある。
また、敬語化すると「お伝えします」が続き、文章が単調に見えるおそれもある。
さらに、内容の範囲や責任の所在が曖昧になり、実務では意図が十分に届かない場面が生じやすい。
揺れを抑えるには語の射程を文脈に合わせて整える必要があり、次章でその手がかりとなる言い換えを示していく。
2.『伝える』を品よく言い換える表現集
ここからは「伝える」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 事実を確実に届ける(報告)
事実・決定事項・進捗を正確に届ける中核領域
- 報告する
- 客観的な事実や進捗を整理し、責任を伴う形で相手に示す語である。
- 例:先週のクレーム件数を集計し、部署の改善会議で報告した。
- 客観的な事実や進捗を整理し、責任を伴う形で相手に示す語である。
- 連絡する
- 必要な情報を素早く共有し、関係者間の認識を揃える際に用いられる。
- 例:会議の延長が決まった時点で、参加者へすぐに連絡した。
- 必要な情報を素早く共有し、関係者間の認識を揃える際に用いられる。
- 通知する
- 決定事項を公式な形で伝え、誤解の余地を残さないための語である。
- 例:内定辞退の申し出を受け、補欠合格者へ繰り上げ採用を通知した。
- 決定事項を公式な形で伝え、誤解の余地を残さないための語である。
2-2. 理解を深めるために述べる(説明)
背景・理由・意図を含めて相手の理解を促す領域
- 説明する
- 背景・理由・意図を整理し、相手の理解を確実に前へ進める中心語である。
- 例:競合他社との優位性を比較表で説明し、新規受注を勝ち取った。
- 背景・理由・意図を整理し、相手の理解を確実に前へ進める中心語である。
- 補足する
- 既存の説明に不足がある部分を補い、認識のズレを防ぐために用いられる。
- 例:契約条件の解釈差を防ぐため、条文意図を補足した。
- 既存の説明に不足がある部分を補い、認識のズレを防ぐために用いられる。
2-3. 組織の意志を公に示す(発表)
組織としての決定・成果・方針を外部へ示す領域
- 発表する
- 新たな事実・成果・方針を、組織として外部へ明確に示す最もフォーマルな語である。
- 例:来期の新卒採用計画を、会社のウェブサイトで発表した。
- 新たな事実・成果・方針を、組織として外部へ明確に示す最もフォーマルな語である。
- 周知する
- 関係者全体に確実に行き渡らせる語で、内部統制の文脈で多用される。
- 例:社内フロアの入退館ルールが変わったことを、掲示とメールで周知した。
- 関係者全体に確実に行き渡らせる語で、内部統制の文脈で多用される。
2-4. 指示や意向を橋渡しする(伝達)
媒介者として、言葉・方針・依頼を確実に渡す領域
- 伝達する
- 決定事項や方針を誤差なく届け、次の担当が迷わず動ける状態を整えるときに使われる。
- 社長の熱い激励を全従業員へ伝達し、現場の士気を高めた。
- 決定事項や方針を誤差なく届け、次の担当が迷わず動ける状態を整えるときに使われる。
- 申し伝える
- 目上の意向を丁寧に受け渡し、関係者間の温度差を抑えたい場面で選ばれる。
- 例:顧客の改善要請を整理し、社長へ申し伝えた。
- 目上の意向を丁寧に受け渡し、関係者間の温度差を抑えたい場面で選ばれる。
2-5. 価値や意志を次へ繋ぐ(継承)
理念・文化・技術など、時間軸を超えて受け渡す領域
- 継承する
- 理念や文化を正式な形で引き継ぎ、組織の軸を長期的に保つために用いられる。
- 例:この部署の「迅速な意思決定」という文化を、新人にも継承していく。
- 理念や文化を正式な形で引き継ぎ、組織の軸を長期的に保つために用いられる。
- 受け継ぐ
- 前任者の意志やノウハウを引き受け、次の成果へつなげる語である。
- 例:前任の交渉方針を受け継ぎ、条件調整を再開した。
- 前任者の意志やノウハウを引き受け、次の成果へつなげる語である。
- 語り継ぐ
- 経験や教訓を物語として残し、組織の判断力を底上げする知的な伝達方法として働く。
- 例:プロジェクトの苦労話を新人に語り継ぎ、チームの一体感を育んでいる。
- 経験や教訓を物語として残し、組織の判断力を底上げする知的な伝達方法として働く。
3.まとめ:『伝える』が示す行為の幅をどう扱うか
『伝える』は、情報や意図を相手へ届ける行為を示す語である。
その働きは事実共有から価値の引き継ぎまで複数の側面が重なるため、文脈によって指す範囲が揺れやすい。
2章で整理した方向性に沿って語を選び直せば、意図の精度が整い、対話の透明性が自然に高まっていく。

