今回は『勧める』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『勧める』とはどんな性質の言葉か?
「勧める」は日常からビジネスまで幅広く使われる一方で、どの程度の意図や関与を含んでいるのかが読み取りにくい場面も少なくない。
まずは、この語が持つ性質を整理しておきたい。
意味のコア
「勧める」は、相手の判断や行動に対して、一定の方向性を示しつつ選択を促す働きを持つ語である。
その際、評価の有無、介入の強さ、立場関係といった複数の要素が重なり、文脈によって射程が変わりやすい性質を含む。
なぜ、人は「勧める」の言い換えを探すのか?
実務では、「勧めます」という表現だけでは、助言なのか提案なのか、あるいは推進の意図なのかが曖昧に受け取られることがある。
また、相手との関係性によっては、善意のつもりでも押しつけがましく響くおそれがあり、使いどころに迷いが生じやすい。
便利な反面、意味の幅が広いため、意図の精度が下がりやすい点が小さな違和感として残りやすいのである。
こうした違和感を解消するための視点を、次章で整理していく。
2.『勧める』を品よく言い換える表現集
ここからは「勧める」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 判断の材料をそっと置く(提案)
押しつけず、相手の領域を侵さない距離感を保ちながら選択肢を提示する際に適する。
- 提案する
- 現状の課題に対し、具体的な解決策や新たな案を建設的に提示する場面で使われる。
- 例:市場動向を踏まえ、若年層に向けた新サービスの導入を提案した。
- 現状の課題に対し、具体的な解決策や新たな案を建設的に提示する場面で使われる。
- 提示する
- 判断の根拠となるデータや条件を、客観的な資料として差し出す際に向く。
- 例:契約の合意を得るため、修正後の見積条件を先方へ提示した。
- 判断の根拠となるデータや条件を、客観的な資料として差し出す際に向く。
- 示唆する
- 直接的な表現を避け、含みを持たせて可能性や方向性を暗に指し示す。
- 例:部長は検討会において、現行プランが抱える潜在的なリスクを示唆した。
- 直接的な表現を避け、含みを持たせて可能性や方向性を暗に指し示す。
2-2. 価値を認めて推す(推薦)
対象の品質や能力の高さを自ら保証し、信頼を寄せる姿勢を示す。
- 推薦する
- 人や物の優れた価値を認め、特定の地位や採用にふさわしいと公に認める。
- 例:プロジェクトの完遂に向け、適任者として他部署の専門スタッフを推薦した。
- 人や物の優れた価値を認め、特定の地位や採用にふさわしいと公に認める。
- 推奨する
- 組織や制度において、ある手法や製品の使用が望ましいと公に認める表現。
- 例:情報漏洩を防ぐため、全社員に多要素認証の設定を強く推奨している。
- 組織や制度において、ある手法や製品の使用が望ましいと公に認める表現。
- 推挙する
- 敬意を払い、優れた人物をしかるべき役職や候補者として上位者に紹介する。
- 例:役員会において、次期リーダー候補として中堅社員のA氏を推挙した。
- 敬意を払い、優れた人物をしかるべき役職や候補者として上位者に紹介する。
2-3. 知見から方向を示す(助言)
専門的な立場や経験に基づき、相手が正しい決断を下せるよう導く際に使われる。
- 助言する
- 相手の悩みや迷いに対し、解決の糸口となる有益な意見を添える場面に適する。
- 例:後輩の成約率を高めるため、商談の進め方について実務的な観点から助言した。
- 相手の悩みや迷いに対し、解決の糸口となる有益な意見を添える場面に適する。
- 提言する
- 組織が抱える課題に対し、専門家として解決のための具体的指針を公に述べる。
- 例:社内ガバナンスの強化を目指し、監査役が運用ルールの厳格化を提言した。
- 組織が抱える課題に対し、専門家として解決のための具体的指針を公に述べる。
- 進言する
- 目上の人物に対し、自身の考えや改善案を礼節を保ちつつ控えめに申し述べる。
- 例:重大な損失を回避するため、事業計画の見直しを社長に直接進言した。
- 目上の人物に対し、自身の考えや改善案を礼節を保ちつつ控えめに申し述べる。
2-4. 自発的な行動を促す(促進)
相手の意思を尊重しながらも、停滞している状況を動かすために背中を押す表現。
- 促す
- 強制することなく、相手が自然に次の行動へ移るよう静かに誘導する場面に向く。
- 例:円滑な議事進行のため、司会者が参加者へ積極的な発言を促した。
- 強制することなく、相手が自然に次の行動へ移るよう静かに誘導する場面に向く。
- 奨励する
- 良い習慣や取り組みとして、積極的に行うよう周囲に働きかけ励ます表現。
- 例:生産性の向上を目的として、定時退社と有給休暇の取得を全社で奨励している。
- 良い習慣や取り組みとして、積極的に行うよう周囲に働きかけ励ます表現。
- 後押しする
- 決断を迷っている相手に対し、支援や協力を約束して実行をサポートする。
- 例:部下の海外派遣にあたり、予算の増額を認めてその挑戦を後押しした。
- 決断を迷っている相手に対し、支援や協力を約束して実行をサポートする。
2-5. 周囲に働きかけ支援する(支援・斡旋)
当事者間の間に立ち、能動的な関与によって物事を成約や実現へ導く。
- 働きかける
- 目的達成のため、関係各所に事前の根回しや協力を要請して状況を動かす。
- 例:新法案の採択を目指し、業界団体が各議員へ制度の必要性を働きかけている。
- 目的達成のため、関係各所に事前の根回しや協力を要請して状況を動かす。
- 口添えする
- 第三者が有利に動けるよう、背後から一言添えて便宜を図る実務的な表現。
- 例:円滑な融資実行のため、メインバンクの担当者へ口添えした。
- 第三者が有利に動けるよう、背後から一言添えて便宜を図る実務的な表現。
- 橋渡しする
- 異なる組織や個人を繋ぎ、新たな提携や取引が生まれる場を整える。
- 例:技術提携を実現するため、海外スタートアップと自社開発部門を橋渡しした。
- 異なる組織や個人を繋ぎ、新たな提携や取引が生まれる場を整える。
3.まとめ:『勧める』が含む関与の幅をどう扱うか
『勧める』は、相手の選択に一定の方向性を与えるために用いられる語である。
その働きには、評価・助言・後押しなど複数の側面が重なり、場面によって指す範囲が揺れやすい。
文脈に応じて言い換えを選び直すことで、意図の伝達精度が整い、対話の透明性も高まっていく。

