第1章 4Sスーツ×AI SPEED ORDER
スーツセレクトとは?
オーダースーツは、低価格化と短納期化が進む中で、今やすっかり市民権を得た。
ある調査によれば、スーツを所有する人の約3人に1人がオーダースーツを作った経験があるという。
販売チャネルも拡大し、従来のオーダースーツ専門店に加えて、紳士服量販店やセレクトショップ、さらにはユニクロやワークマンといった新興勢力まで参入している。

そんな競争の激しいオーダースーツ市場において、独自の立ち位置で注目を集めるのが「スーツセレクト」だ。
スーツセレクトはコナカグループが展開するブランドの一つ。
同グループの「紳士服のコナカ」が郊外のロードサイド型店舗を主力とするのに対し、スーツセレクトは都市部の駅周辺や商業施設に店舗を構え、特に若い世代に向けた低価格帯のスーツを強みとしている。
その店舗数は2025年3月時点で180店に達しており、都市生活者を中心に確固たる支持を得ている。
タイパ世代のオーダースーツ
そのスーツセレクトが展開するオーダースーツは、他ブランドとはひと味違う。
特に「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する若者層に向けて、「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」というオーダーシステムを打ち出しているのだ。

これは、既製スーツの人気シリーズである「4Sスーツ」に、最先端のAI画像採寸アプリを組み合わせたもの。
スマートフォンで簡単に採寸ができ、短時間でオーダーが完了するこの仕組みは、効率を重視する若い世代にとって非常に合理的な選択肢となった。
イメージキャラクターには俳優の杉野遥亮さんを起用し、洗練されたブランドイメージを打ち出すことで、立ち上げ直後から高い評価を獲得する。
スーツセレクトはこの「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」を武器に、オーダースーツ市場でのシェア拡大を狙っているのだ。
本記事では、「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」の独自性と、その人気の秘密に迫る。
普通のオーダースーツとは何が違うのか?
なぜこのオーダーシステムが支持されるのか?
その背景にある戦略と狙いを解き明かしていく。
第2章 既製スーツとオーダーの“いいとこ取り”
オーダースーツの壁
「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」が人気を集める理由は、既製スーツとオーダースーツの“いいとこ取り”を実現した点にある。
言い換えれば、既製スーツの手軽さと、オーダースーツのフィット感を両立させたことが成功の要因だ。
オーダーに興味はあるが一歩踏み出せない層にとって、この絶妙なバランスが背中を押すことになる。
オーダースーツは、今や価格面では既製スーツと大差はない。
5万円も出せば、体型にぴったり合った一着が手に入る。
しかし、それでもなお高いハードルが残る。

まずは納期の問題だ。
一般的なオーダースーツは平均4週間程度かかる。
着用予定が先であっても、ひと月もの間待たされるのは気が進まない人もいるだろう。
さらに、店舗での採寸や生地選び、接客にかかる拘束時間も悩ましい。
店舗の一角を陣取って、じっくりと採寸やカウンセリングを受け、短編映画一本分ほどの時間を費やす必要がある。
しかも、オーダーに不慣れと見れば、より高価な生地やオプションを次々と勧められる。
気がつけば、当初の予算を大きく超えてしまうことも珍しくない。
“行きつ戻りつ”の自由さ
「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」は、こうしたオーダースーツ特有の煩わしさを払拭した。
まず、のっけから「既製スーツか、オーダースーツか」を決める必要がないのだ。
スーツセレクトのスタンスは明快だ。
「まずは既製の4Sスーツを試し、もっとこだわりたければオーダーに」というアプローチである。
たとえば、最初は既製スーツで十分だと感じても、気に入ったなら次はオーダーに進むこともできる。
この柔軟さはオーダースーツ専門店にはない強みだ。
専門店では、一度足を踏み入れたらオーダーを断るのは難しい。
そこに退路はない。
ところがスーツセレクトなら、既製スーツとオーダーの間を自由に行き来できる。

この“行きつ戻りつ”の自由さが、既製スーツかオーダーかで迷う層に支持されることとなった。
オーダースーツは気になるが、いきなり専門店では敷居が高い。
そんなユーザーにとって、スーツセレクトの「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」は、まさに理想的な選択肢となったのだ。
では、具体的に「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」ではどのようなスーツが手に入るのか?
次章から詳しく見ていくことにしよう。
第3章 4Sスーツとは?
特徴は4つの「S」
4Sスーツは、スーツセレクトの既製スーツの中でも圧倒的な人気を誇るシリーズである。
公式サイトには「とにかく、ラク」「もう、別のスーツは着られない。」といったキャッチフレーズが躍り、その魅力を端的に伝えている。
リモートワークやハイブリッドワークといった働き方の多様化を見据えて開発されたこのラインは、見た目のきちんと感とストレスフリーな着心地、さらにイージーケアを兼ね備えている。
既製スーツの4Sスーツの価格は税込31,900 円(2025年3月時点)からとなる。
その特徴は以下の「4つのS」に集約される。
- 1. SUPER NON IRON(シワになりにくい)
- 高機能ポリエステルを採用し、シワになりにくく、お手入れも簡単だ。洗って干すだけでアイロン要らず。これにより、忙しいビジネスマンでも常に清潔感を保てる。
- 2. STRETCH(ストレスフリー)
- 縦横斜めに伸びるサークルストレッチで、膝や肘の曲げ伸ばしが楽にできる。長時間の着用でも疲れにくく、動きやすさは群を抜いている。
- 3. SOFT TOUCH(軽くソフトな着心地)
- しなやかで軽い肌触りは、まるで着ていないかのようだ。スーツに慣れていない人でも自然に着こなせる柔らかな着心地が魅力である。
- 4. SUSTAINABLE(環境に優しいリサイクル素材)
- ペットボトル由来のリサイクルポリエステルを使用し、エコへの配慮も万全だ。上質な生地感と高い機能性を両立しながら、環境負荷を軽減している。
これらの特徴は、コストパフォーマンス(コスパ)と時間効率(タイパ)を重視する若い世代の価値観に見事にマッチしているといえるだろう。
「シーンレス」な着回し力
4Sスーツの強みは、その「シーンレス」な着回し力にある。

ポリエステル素材でありながら、見た目はウールのように上品で、ビジネスシーンにも十分通用する。
それでいて、軽くて動きやすいのでカジュアルな場でも違和感がない。
文句なしのオールラウンダースーツであり、リピーターが続出するのも頷(うなず)ける。
同シリーズの人気を受け、スーツセレクトは「4Sシャツ」や「4Sパンツ」も展開しており、いずれもヒット商品となっている。
豊富なサイズバリエーション
4Sスーツが支持される理由は、快適な着心地やイージーケアにとどまらない。
もうひとつの大きな魅力は、圧倒的なサイズバリエーションだ。
アイテムによっては20種類近いサイズが揃っており、身長区分(4号〜8号)と体型区分(Y体・A体・AB体・BB体)の掛け合わせで細かく分類されている。
- 身長区分
- 4号: 約165cm前後
- 5号: 約170cm前後
- 6号: 約175cm前後
- 7号: 約180cm前後
- 8号: 約185cm前後
- 体型区分
- Y体:細身体型
- A体:標準体型
- AB体:ややゆとりのある体型
- BB体:ゆとりのある体型
たとえば、標準体型で身長170cm前後なら「A5」というサイズがフィットする。
肩幅、着丈、袖丈、胴囲などが緻密に計算されており、多くの人が「ちょうどいい」と感じるバランスに仕上がっているのだ。
パンツも同様に、股上や太もも、膝、裾の幅まで最適化されている。
その80%が裾上げ済みのテイクアウト仕様で、そのまま持ち帰れる手軽さも大きな魅力だろう。
快適なフィット感に献身してきたスーツセレクトの豊富な経験値が、この最適なサイズ設計を可能にしているのである。
他の高機能スーツと一線を画す
高機能素材を使ったスーツは他ブランドにもあるが、4Sスーツのように細かいサイズバリエーションを揃えるケースは少ない。
一般的な高機能スーツは5〜8種類程度のサイズ展開にとどまる。
軽量でストレッチの効いた素材ともなると、ある程度のサイズ誤差を吸収してくれるからだ。

身体に沿って伸び縮みするため、多少サイズが合っていなくても、窮屈さやダボつき感が少なく、自然なフィット感が得られる。
シルエットも崩れにくく、すっきりとした見た目も維持できる。
そのため、高機能スーツのブランドはあえてサイズを増やさないのである。
顧客側もサイズ選びがシンプルなほうが迷わずに済む。
オンラインショップで気軽に買ってもらえるというメリットも見込んでいるのだろう。
しかし、4Sスーツはこれを良しとしなかった。
高機能素材に安住せず、細かなサイズ展開で“ピンポイントのフィット感”を追求したのだ。
肩回りやウエストのライン、パンツのテーパード感まで計算し尽くされているため、ストレスフリーな着心地でありながら、立体的で美しいシルエットを保っている。
身体にフィットする高機能素材と細やかなサイズ展開との鮮やかな融合。
これはもはや、既製スーツというよりオーダースーツに近い感覚だ。
では、この4Sスーツが、スーツセレクトの「AI SPEED ORDER」と組み合わさるとき、どんなオーダースーツへと進化するのか?
そして、オーダースーツに興味があるが一歩踏み出せない層にとって、どんな解決策となるのか?
次の章では「AI SPEED ORDER」の仕組みと、そのメリットについて詳しく見ていくことにしよう。
第4章 AI SPEED ORDERとは?
10MINUTES/10FABRICS/10DAYS
「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」の特徴は、「10」の数字に集約されている。
すなわち、「10MINUTES」「10FABRICS」「10DAYS」だ。
これは、「10分で採寸、10種類の厳選生地、10日間で引き渡し」という、画期的なオーダーシステムである。
従来のオーダースーツは採寸や生地選びに時間がかかり、完成までには通常4週間以上を要する。
こうした煩雑さと長い納期というハードルを徹底的に排除し、オーダースーツをより身近で合理的なものにしたのが「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」なのだ。
たった10分のAI画像採寸
まずは、無料のAI画像採寸アプリをスマホにダウンロードする。

アプリ起動後に、身長や体重、年齢、性別を入力し、正面と側面の2カットを指定のポーズで撮影するだけで、採寸が完了する。
店舗ではスタッフが撮影に協力してくれるので安心だ。
これにより、肩幅や着丈、ウエスト、股下といったスーツに必要なサイズが瞬時に計測される。
さらに、アプリは4Sスーツの豊富なサイズバリエーションから、最適なサイズをピンポイントで提案してくれる。
オーダースーツ専門店であれば、メジャーで身体の各部を測り、長い時間をかけて採寸するのが一般的だ。
対して「AI SPEED ORDER」は、これを10分(実際は4~5分)で済ませてしまう。
しかも試したユーザーがびっくりするほどの精度が実現されている。
スーツモデルを選ぶ
採寸が完了すると、アプリが最適なサイズだけでなく、体型に合ったスーツモデルもレコメンドしてくれる。
スーツモデルとは、シルエットやスタイルの基本となる型紙のこと。

肩パッドがしっかり入ったブリティッシュモデルや、柔らかく軽い着心地のイタリアンモデルなどがある。
モデルによって、全体的なシルエットはもとより、ラペル(襟)の幅、ボタンの数、ポケットのスタイルなども異なる。
さらに見た目の印象だけではない。
スーツモデルごとに肩幅、胸囲、ウエストなど、必要となるゆとりの部分も含めてサイズが細かく調整されているため、どのモデルを選ぶかによってフィット感や着心地も違ってくる。
4Sスーツのオーダーシステムでは、以下の4つのモデルがある。
- SKINNY(スキニー)
- 4つのモデルの中で最も細身のシルエット。スタイリッシュな印象が際立つ。
- 若い世代を中心に人気があり、トレンド感のある着こなし。
- 極限まで膝下を絞ったスキニーパンツ。ノータック。
- ジャストフィットで若々しい印象も、動きやすさを重視する人にはやや不向き。
- SLIM TAPERED(スリムテーパード)
- スリム・シャープ・直線的をキーワードにした「現代的スリムスーツ」。
- 装飾を極力省いたシンプルデザインでオンオフともにカバー。
- 極薄の肩パットによりナチュラルなショルダーライン。
- パンツはノータックでシャープに裾口を絞ったテーパードラインが脚長効果を生む。
- BLACK LINE(ブラックライン)
- スリム・シャープ・直線的をキーワードにした「ベーシックスリムモデル」。
- 薄く肩パットを入れてブリティッシュエッセンスを加味。フォーマルな場でもクールに決まる。
- 直線的なフロントカット(ジャケットの前裾の形状のこと)でシャープなXラインを表現。
- どんな人でもスタイルアップさせる程良いスリムパンツ。ノータック。
- CLASSICO TAPERED(クラシコテーパード)
- エレガント・コンフォート・曲線的をキーワードにした「イタリアントラディショナルモデル」。
- 肩パッドを省いたナチュラルなショルダーラインで、快適な着心地。
- セミワイドラペル(ラペルは襟の形)でクラシック顔。洋服好きにもっとも人気の高いシルエット。
- パンツは傾斜の効いた1プリーツテーパードシルエット。
その4つのうち、どのモデルが最適かをアプリが示してくれるのだ。
スーツのオーダーに慣れていない初心者には不必要に迷うことがなく、有難いサービスだといえよう。
10種類の厳選生地から選ぶ
次は生地選びだ。
「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」では、あらかじめ厳選された10種類の生地から選ぶ仕組みになっている。

価格は税込49,500円(2025年3月時点)と一律で、選択の煩雑さをここでも排除している。
これにより、「10MINUTES」「10FABRICS」「10DAYS」の三拍子がそろったオーダー体験が可能になるのだ。
ただし、納期にこだわらなければ、税込42,900円((2025年3月時点)という、よりリーズナブルな生地も用意されている。
海外工場で縫製されるため、3週間ほどの納期を要するが、価格を重視するユーザーには魅力的だ。
一方、時には奮発して「ここぞというときの一着を仕立てたい」というタイミングもあるだろう。
いわゆる「一張羅」需要だ。
そうなるとインポートの有名ブランドの生地なども視野に入ってくる。
「10種類から選べば10日後」という枠組みからは外れるが、スーツセレクトには150種類以上もの生地の取り揃えがある。
納期は平均的なオーダースーツ専門店よりは短く、2〜3週間ほどで仕上がる生地もあるようだ。
サンプルスーツの試着
アプリで採寸とモデル選び、生地選びが完了したら、店舗でサンプルスーツを試着できる。

このサンプルスーツは、「ゲージ服」という採寸服も兼ねていて、試着した際の感触を頼りに、ジャケットの着丈や袖丈、パンツの股下などを微調整することも可能だ。
フィット感や着心地を確かめた上で、必要ならサイズ調整をしてもらおう。
たとえミリ単位の調整でも侮(あなど)れない。
全体のシルエットが引き締まり、より清潔でスマートな印象につながることもあるのだ。
採寸や生地選びにかかる時間が大幅に短縮されるため、ここは少し時間に鷹揚(おうよう)に、店舗スタッフとコミュニケーションをとりながら最終的な寸法を決定するのがいいだろう。
オプション選びは最後に
最後はオプション選びだ。
ボタンの種類や裏地の色柄、ラペルやポケットのデザインなどを、無料もしくは有料のオプションから選ぶ。


採寸とモデル選び、生地選びが終わっているため、仕上がりのイメージが明確な状態で選択できるのがポイントだ。
たとえば、スリムでシャープな印象を与えたい場合は、細めのメタルボタンやシンプルな裏地を選ぶ。
オン・オフ両用でスタイリッシュに見せたい場合は、遊び心のある裏地と落ち着いた水牛ボタンを組み合わせる。
オプションの数はそれなりにあるが、仕上がりのイメージ(スーツモデルや生地の色柄など)に照らし合わせることで、自ずと選択肢も絞られ、案外スムーズに選べるだろう。
ただし、有料オプションもあり、トータルの出費が想定予算を大きく超えてしまうこともある。
無駄なオプションを避け、必要な部分に予算を集中させることを気に留めておいたほうがよい。
この段階では、店舗スタッフにも理想とするイメージが共有されているで、的を射たアドバイスを随時もらえるはずだ。
既製スーツとオーダーの垣根を超えて
以上が「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」の全容となる。
そういうことなら「わざわざオーダーすることはない」と思った人もいれば、逆に4Sスーツなら「オーダーを試してみたい」と思った人もいるだろう。
既製スーツとオーダースーツの垣根が低く、両者の行き来がずいぶんとたやすい。
いずれを選んでも「簡単・リーズナブル・スピーディー」は確保される。
顧客にとって有難いのが、同じ店舗内で既製スーツとオーダースーツの選択肢があること。
既製スーツは紳士服量販店で、オーダーするならオーダースーツ専門店などと使い分けなくてもよいのだ。
第5章 稀有なオーダーシステムの背景
「型紙」はスーツの設計図
では、なぜこのオーダーシステムが実現できたのだろうか?
もちろん、東京大学発のベンチャー企業の技術を使用したというAI画像採寸アプリの存在もある。
しかし、10日間で一人ひとりの体型にフィットするスーツが仕立てられる背景には、スーツセレクトのノウハウや経験が大きく関わっている。
特に重要なのは「型紙(パターン)」の設計だ。

スーツを仕立てるには設計図ともいえる型紙が不可欠であるが、かつてのオーダースーツは顧客一人ひとりに合わせて型紙を作成していた。
そのため、手間もコストもかかり、一着の値段は20~30万円は優に超えていたのだ。
しかし、昨今のオーダースーツは様変わりしている。
「パターンオーダー」と呼ばれる方式が主流となっている。
パターンオーダーでは、あらかじめベースとなる型紙が用意されており、そこに補正を加える形で仕立てる。
この方式なら、個別に型紙を作成する必要がなく、ラインに型紙データを組み込んでおくことで生産効率は飛躍的に高まる。
スーツセレクトもこの方式を採用しているが、特徴的なのはその型紙の精度の高さである。
多くの顧客と直に向き合ってきた豊富な経験に基づき、フィット感を追求した型紙を開発しているのだ。
サイズコミュニティ―同じ体型を共有できる人たち
世の中には自分とそっくりな人が3人いると言われるが、自分と同じ体型の人を見つけるのはそれほど難しくない。

スーツセレクトは、こうした類似した体型の人々を「サイズコミュニティ」として捉え、共通の型紙で対応している。
サイズコミュニティとは、例えば身長や肩幅、ウエストといった要素が近い人々の集まりである。
もちろん、着丈や袖丈などの微調整は必要だが、同じ型紙をベースにすることで、効率的にフィット感の高いスーツを提供できる。
ただし、このアプローチが成立するためには、サイズコミュニティごとにベースの型紙が最適化されていなければならない。
一部の人にだけ目をつむってもらうというわけにはいかないのだ。
スーツセレクトは過去の膨大な顧客データを分析し、平均的な体型の傾向を把握した上で、サイズコミュニティごとの最適な型紙を設計している。
一つのサイズコミュニティごとに一つの型紙。
その集積がスーツセレクトがターゲットとするスーツ人口全体をカバーする。
既製スーツでも豊富なサイズバリエーションを誇る4Sスーツだが、オーダーでは対応できる体型の幅がさらに広がる。
ほとんどの顧客にフィットするスーツを提供できるようになったのだ。
型紙の数は多いほどよいのか?
オーダースーツブランドの中には、ベースとなる型紙の数の豊富さを競うところもある。
それでこそ、既製スーツをはるかに凌駕(りょうが)し、オーダーのオーダーたるゆえんというわけだ。
確かに、型紙が多ければ多様な体型に対応できそうに思える。
しかし、実際はそう単純ではない。
型紙の数が多いほど、どれを選ぶかのプロセスが煩雑になり、フィッター(採寸やフィッティングを行うスタッフ)の経験や技術力に左右されやすくなるのだ。
一方、型紙の選定がシンプルであれば、経験が浅いフィッターでも適切に選ぶことができ、採寸やフィット感のばらつきも抑えられる。
さらに、型紙の数が多くなると、生産ラインでの管理が複雑になり、型紙ごとに裁断や縫製の手順を細かく調整する必要が出てくる。
その結果、在庫管理や工程ごとのコストが増大し、その分がスーツの価格に上乗せされる可能性だってあるだろう。
そこでスーツセレクトは「煩雑さ」と「コスト増」というリスクを抑えるために「型紙の数は必要最低限に絞る」という戦略を選んだのだ。
言い換えれば、ターゲットとなるスーツ人口をできる限り少ない数のサイズコミュニティに割り振ったといえる。
型紙の精度、限りなく完璧へ
スーツセレクトは、型紙の数を絞る代わりに、その精度を追求した。
肩幅や胴回り、袖の付け根といった細部に至るまで、計算し尽くされたバランスで設計されている。
型紙の数は絞るものの、その精度を徹底的に高めることで、同じサイズコミュニティ内の人であれば、だれでも高いフィット感が得られる。
しかも、この「型紙精鋭化/精度追求」のアプローチは生産ラインの効率化にもつながる。
結果として、リーズナブルな価格と短納期が実現できるのだ。
こうした型紙の精度へのこだわりこそが、『簡単・リーズナブル・スピーディー』を実現する土台となっている。
終章 透明性の追求 スーツセレクトの神髄
ここで最後に、スーツセレクトのシンボルマークに注目してみよう。
シンプルな縦のラインが4本描かれたマークは、「公正・公平」を意味する“fair”の理念を象徴しているという。
生産からデザイン、流通に至るまで徹底した透明性を貫き、高品質なスーツを明快な価格で提供するという信念だ。
この透明性を重視する姿勢は、徹底的に無駄を排し、顧客にとっての効率的で合理的な選択を追求することを意味する。
そして、その理念はオーダーの基幹ラインでもある「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」にも反映されている。
最優先事項は、無駄な時間やコストをかけずに、最適なスーツを手にできること。
その結果が「10MINUTES」「10FABRICS」「10DAYS」というシステムに結実したのだ。
オーダースーツに興味はあるが一歩踏み出せなかった人たちにとっても、最適な選択肢となって今に至っている。
「簡単・リーズナブル・スピーディー」を実現した「4Sスーツ×AI SPEED ORDER」。
これからも進化を続け、多くの人に選ばれる存在であり続けるだろう。