今回は『推進』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『推進』とはどんな性質の言葉か?
「推進」は企画書や報告書、会議の場面まで幅広く使われる一方で、何をどのように進めるのかが文脈に委ねられやすく、意図の輪郭がぼやけがちな語である。
まずは、この語が持つ性質を整理しておきたい。
意味のコア
「推進」は、ある方針や取り組みに力を与え、前へ進めようとする働きを示す語である。
そこには行動の開始、継続、関与の度合いといった複数の要素が重なり、状況によって指す範囲が変わりやすい性質が含まれる。
なぜ、人は「推進」の言い換えを探すのか?
「推進します」という表現は便利だが、速度を上げたいのか、責任をもってやり切るのか、方向性を示したいのかが読み手に伝わりにくい場合がある。
また、公的文書で多用されてきた経緯から、場面によっては硬さや重さを感じさせることも少なくない。
意味は理解できても、伝わり方の精度に小さな揺れが生じやすい点が、この語の扱いにくさといえる。
こうした違和感に向き合うための言い換えを、次章で整理していく。
2.『推進』を品よく言い換える表現集
ここからは「推進」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. スピードと勢いを高めるとき(勢い)
- 促進
- 物事の進度を早め、滞りなく前進するよう環境を整える場面に適する。
- 例:海外展開の意思決定を早めるため、現地法人との情報共有を促進した。
- 物事の進度を早め、滞りなく前進するよう環境を整える場面に適する。
- 加速
- 既存の取り組みのテンポを上げ、市場の変化に即応する姿勢を示す際に使われる。
- 例:競合他社の動向を鑑み、次世代基盤の開発プロジェクトを加速させている。
- 既存の取り組みのテンポを上げ、市場の変化に即応する姿勢を示す際に使われる。
- 牽引
- リーダーが先頭に立って組織を強力に引き、目的達成へ導く役割を担う際に選ばれる。
- 例:部長が自ら営業戦略を牽引し、停滞していた大口顧客との交渉を前進させた。
- 推し進める
- 強い意志を持って計画を実行に移し、反対勢力や困難を排して進む局面で扱われる。
- 例:現場の懸念を払拭するため、丁寧に説明を尽くしながら組織改革を推し進めた。
- 強い意志を持って計画を実行に移し、反対勢力や困難を排して進む局面で扱われる。
2-2. 着実にやり切るとき(遂行)
- 遂行
- 任務や職務を最後まで責任を持ってやり遂げ、実効性を担保する場面に適する。
- 例:コンプライアンス上のリスクを回避し、複雑な合併実務を無事に遂行した。
- 任務や職務を最後まで責任を持ってやり遂げ、実効性を担保する場面に適する。
- 実施
- 策定された計画を具体的な行動に移し、事実として執り行う際によく使われる。
- 例:取締役会の承認を得たのち、全従業員を対象とする意識調査を実施している。
- 策定された計画を具体的な行動に移し、事実として執り行う際によく使われる。
- 実行
- 抽象的な構想を具体的な成果へ結びつけるため、即座に動く決断力を示す表現だ。
- 例:予算の承認が下り次第、不採算部門の統廃合を直ちに実行する方針である。
- 抽象的な構想を具体的な成果へ結びつけるため、即座に動く決断力を示す表現だ。
2-3. 方向を定めて導くとき(主導)
- 主導
- 複数の関係者の中で中心的な役割を担い、合意形成をコントロールする場面に向く。
- 例:他部署との調整会議を自局が主導し、膠着していた予算配分案をまとめ上げた。
- 複数の関係者の中で中心的な役割を担い、合意形成をコントロールする場面に向く。
- 先導
- 新たな市場や技術領域において、進むべき指針を世に示す知的な姿勢を示す表現。
- 例:業界の先駆者として、環境負荷を低減する新たな物流モデルを先導している。
- 新たな市場や技術領域において、進むべき指針を世に示す知的な姿勢を示す表現。
- 舵を取る
- 不透明な状況下で組織の進路を見極め、的確にコントロールする経営判断にふさわしい。
- 例:市場環境が急変するなか、最高経営責任者が自ら再建計画の舵を取った。
- 不透明な状況下で組織の進路を見極め、的確にコントロールする経営判断にふさわしい。
2-4. 広げ、深めていくとき(深化)
- 発展
- 既存の事業をより高い段階へ引き上げ、永続的な成長を期する文脈で扱われる。
- 例:昨対比で成果を上げた既存店モデルを、全国規模のフランチャイズへ発展させた。
- 既存の事業をより高い段階へ引き上げ、永続的な成長を期する文脈で扱われる。
- 強化
- 体制の不備を補い、競争力や安全性をより強固なものへ高めるプロセスを指す。
- 例:サイバー攻撃の脅威に備え、外部専門家を招致して監視体制を大幅に強化した。
- 体制の不備を補い、競争力や安全性をより強固なものへ高めるプロセスを指す。
- 拡大
- 事業領域や顧客基盤の裾野を物理的に広げ、市場での占有率を高める場面に向く。
- 例:アジア圏での需要拡大を見越し、ベトナム拠点の生産ラインを2倍に拡大している。
- 事業領域や顧客基盤の裾野を物理的に広げ、市場での占有率を高める場面に向く。
2-5. 協力しながら進めるとき(協調)
- 連携
- 各部門が互いに情報や資源を補完し合い、組織横断的に動く際に使われる。
- 例:開発と営業が密に連携したことで、納期厳守と品質向上の両立を実現した。
- 各部門が互いに情報や資源を補完し合い、組織横断的に動く際に使われる。
- 協働
- 異なる強みを持つ主体が共通の目的を掲げ、対等な関係で成果を出す場面に適する。
- 例:官民が協働してスマートシティ構想を立ち上げ、実証実験を開始した。
- 異なる強みを持つ主体が共通の目的を掲げ、対等な関係で成果を出す場面に適する。
- 取り組む
- 課題に対して誠実に向き合い、解決に向けて粘り強く行動する姿勢を示す語。
- 例:顧客満足度の低下を深刻に受け止め、全社を挙げて応対品質の改善に取り組んだ。
- 課題に対して誠実に向き合い、解決に向けて粘り強く行動する姿勢を示す語。
3.まとめ:『推進』という語の広さと向き合う
『推進』は、物事を前に進めようとする意思や関与を示す際に用いられる語である。
その働きは行動の強さや方向性、関係性など複数の側面が重なるため、文脈によって意味の幅が揺れやすい。
次章で整理した視点を踏まえて語を選び直せば、伝えたい意図が明確になり、説明全体の精度も自然に整っていく。

