今回は『素晴らしい』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『素晴らしい』——便利だが単調になりがちな口ぐせ
『素晴らしい』という一語に寄りかかると、多様な褒め方の違いがぼやけ、評価の厚みが失われる。
そのような“表現の偏り”が現れる具体例を取り上げてみよう。
口ぐせで使われがちな例
- 会議での提案は素晴らしいと思います。
- この資料の完成度は素晴らしいです。
- 契約条件が素晴らしい内容で合意できました。
- 発言の切り口が素晴らしいですね。
- 納期対応が素晴らしいスピードでした。
並べてみると、“素晴らしい”という一語に頼ることで、評価の厚みが削がれていたことに気づかされる。
次章では場面別に適した表現を整理してみたい。
2.『素晴らしい』を品よく言い換える表現集
ここからは『素晴らしい』を7つのニュアンスに整理し、文脈ごとの適切な言い換えを提示する。
2-1. 卓越性・優秀さ
- 卓越した
- 専門性や能力の高さをフォーマルに評価する表現。
- 例:講師は卓越した視点で業界動向を解説した。
- 専門性や能力の高さをフォーマルに評価する表現。
- 秀逸な
- アイデア・企画の質を知的に評価する。やや硬質。
- 例:研究発表は、課題の本質を突き詰めた秀逸な分析だった。
- アイデア・企画の質を知的に評価する。やや硬質。
- 水準が高い
- 能力・品質全般のレベルの高さを客観的に示す。
- 例:契約書案は法務・実務とも水準が高い。
- 能力・品質全般のレベルの高さを客観的に示す。
- 完成度が高い
- 成果物・資料の仕上がりの良さを具体的に評価する。
- 例:設計部は完成度が高いUIデザインを仕上げた。
- 成果物・資料の仕上がりの良さを具体的に評価する。
- 見事な
- 手際や結果の良さを自然に称える。日常会話でも安全。
- 例:企画部は複雑な課題を見事な手際で整理した。
- 手際や結果の良さを自然に称える。日常会話でも安全。
- 非凡な
- 並外れた才能・発想力を評価する。やや大仰。
- 例:新規事業は非凡な発想力で課題を解決した。
- 並外れた才能・発想力を評価する。やや大仰。
- 抜きん出た
- 比較文脈で突出を示す。やや硬質だが品位あり。
- 例:この製品は抜きん出た性能を備えている。
- 比較文脈で突出を示す。やや硬質だが品位あり。
2-2. 適切性・完璧さ
- 理想的な
- 条件・手段が最も望ましい状態であることを示す。
- 例:経営陣は理想的な条件で提携を実現した。
- 条件・手段が最も望ましい状態であることを示す。
- 申し分ない
- 欠点がないことを丁寧に伝える。成果物評価で最適。
- 例:検査結果は申し分ないものだった。
- 欠点がないことを丁寧に伝える。成果物評価で最適。
- 完璧な
- 強い肯定。構成・設計などの完成度に適用しやすい。
- 例:完璧な構成の報告書が提出された。
- 強い肯定。構成・設計などの完成度に適用しやすい。
- 最適な
- 選択肢比較で最も適合することを示す。
- 例:この戦略は最適な対応策として採用された。
- 選択肢比較で最も適合することを示す。
- 上質な
- 素材・サービスの質の高さを控えめに示す。
- 例:この製品は上質な素材が高く評価されている。
- 素材・サービスの質の高さを控えめに示す。
2-3. 感動・心に残る印象
- 心に響く
- 理念・メッセージが感情へ届くことを自然に表す。
- 例:顧客の心に響く言葉が企画の方向性を決めた。
- 理念・メッセージが感情へ届くことを自然に表す。
- 印象的な
- 記憶に残る価値を中立的に示す。汎用性が高い。
- 例:印象的な事例紹介で聴衆を引きつけた。
- 記憶に残る価値を中立的に示す。汎用性が高い。
- 感銘深い
- フォーマルな場面に適した硬質な感動表現。
- 例:式典のスピーチは感銘深いものだった。
- フォーマルな場面に適した硬質な感動表現。
- 胸を打つ
- 強い共感を呼ぶ内容を簡潔に伝える。
- 例:顧客の体験談は胸を打つ内容だった。
- 強い共感を呼ぶ内容を簡潔に伝える。
- 心打たれる
- 聞き手側の感情の動きを自然に表す。
- 例:紹介された事例は心打たれる内容だった。
- 聞き手側の感情の動きを自然に表す。
2-4. 革新性・独創性
- 画期的な
- 技術・手法の新規性を強調する代表表現。
- 例:開発部は画期的な技術で競争力を高めた。
- 技術・手法の新規性を強調する代表表現。
- 先駆的な
- 業界に先んじる取り組みを品位高く評価する。
- 例:当社の施策は業界で先駆的なものと評価された。
- 業界に先んじる取り組みを品位高く評価する。
- 独創的な
- 創造性に基づく新しい提案・設計を評価する。
- 例:デザインチームは独創的な提案を行った。
- 創造性に基づく新しい提案・設計を評価する。
- 斬新(ざんしん)な
- 新しさ・新奇性を手短に示す。やや軽め。
- 例:新サービスは斬新な発想で設計されている。
- 新しさ・新奇性を手短に示す。やや軽め。
2-5. 際立ち・変化の大きさ
- 顕著な
- 数値・現象の目立つ変化を客観的に示す。レポート向き。
- 例:売上の顕著な改善が報告されている。
- 数値・現象の目立つ変化を客観的に示す。レポート向き。
- 目覚ましい
- 急速な進歩・発展を前向きに伝える。
- 例:新規事業は目覚ましい成長を遂げてきた。
- 急速な進歩・発展を前向きに伝える。
- 飛躍的な
- 段違いの向上を簡潔に示す。技術・生産性に適合。
- 例:この一年で技術力は飛躍的な進歩を遂げた。
- 段違いの向上を簡潔に示す。技術・生産性に適合。
- 群を抜く
- 比較で圧倒的な優位を表す。やや硬質。
- 例:本製品は耐久性が群を抜く評価を得ている。
- 比較で圧倒的な優位を表す。やや硬質。
2-6. 対応力・判断力
- 的確な
- 判断・指摘が正確で適切。会議・レビューで最適。
- 例:上司は会議で的確な指摘を行った。
- 判断・指摘が正確で適切。会議・レビューで最適。
- 冴(さ)えた
- 発想・切り口が鋭いことを簡潔に伝える。
- 例:エンジニアは冴えたアイデアで課題を解決した。
- 発想・切り口が鋭いことを簡潔に伝える。
2-7. 美しさ・デザイン性
- 洗練された
- 無駄がなく統一感のある美。UI・資料評価で最強。
- 例:新アプリは洗練されたデザインで高評価を得ている。
- 無駄がなく統一感のある美。UI・資料評価で最強。
- 美麗な
- 視覚的な美しさをやや文学的に表す。
- 例:美麗な装飾のブースが来場者を魅了した。
- 視覚的な美しさをやや文学的に表す。
- 優美な
- 柔らかな美を儀礼的に評価。使用は文脈選択が必要。
- 例:優美な旋律が会場を包み込んだ。
- 柔らかな美を儀礼的に評価。使用は文脈選択が必要。
3.まとめ:『素晴らしい』を言い換え、説得力を高める
『素晴らしい』という一語に寄りかかれば、成果のどこが優れているのかが曖昧になり、説明の厚みが削がれる。
だが文脈に応じて適切に言い換えれば、評価の具体性が増し、伝え方の説得力を高める。
語彙の選択が説明の奥行きを広げ、理解の広がりを編み上げていくことを改めて胸に刻みたい。

