今回は『促進』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『促進』の一語に寄りかかる弊害
「促進」は使い勝手のよい万能語だが、頼りすぎると“何を・どの方向へ進めたいのか”が曖昧になり、説明の具体性や説得力が弱まってしまう。
- 課題を「改善」したいのか?
- 動きを「加速」させたいのか?
- 取り組みを「支援」したいのか?
- 取り扱いを広く「普及」させたいのか?
こうした異なる動きをすべて「促進」一語に押し込めてしまい、意図の輪郭が平板になっていく。
そのような“表現の偏り”が現れる具体例を取り上げてみよう。
口ぐせで使われがちな例
- 新サービスの利用を促進するための施策を検討してください。
- 社内コミュニケーションを促進する取り組みを強化したい。
- DX 化を促進する体制づくりを急いでいます。
- 若手の挑戦を促進する制度を整えています。
- 地域連携を促進するイベントを企画しています。
並べてみると、“改善”という定番に寄りかかり、説明の奥行きが薄れていたことが見えてくる。
次章では、文脈に応じて選べる品位ある言い換えを整理していきたい。
2.『促進』を品よく言い換える表現集
ここからは「促進」を 6 つのニュアンスに整理し、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を提示する。
2-1. 前へ進めるとき(主導・推進)
- 推進する
- 計画や施策を主体的に前へ進める、最も標準的で汎用的な表現。
- 例:部門横断の改革案を推進することで、実行体制を構築した。
- 計画や施策を主体的に前へ進める、最も標準的で汎用的な表現。
- 主導する
- 中心となって方向づけや意思決定を行うときに使う語。
- 例:彼が新規事業を主導することで、意思決定を迅速化した。
- 中心となって方向づけや意思決定を行うときに使う語。
- 牽引(けんいん)する
- 組織や市場を力強く引っ張る比喩的な表現。
- 例:営業部が全社の売上成長を牽引することで、好調を維持している。
- 組織や市場を力強く引っ張る比喩的な表現。
- 遂行(すいこう)する
- 任務や計画を着実にやり遂げるニュアンスをもつ語。
- 例:担当チームが年度計画を遂行することで、信頼を得た。
- 任務や計画を着実にやり遂げるニュアンスをもつ語。
- 展開する
- 成功した施策を広い範囲へ広げるときに使う語。
- 例:成功した施策を全国に展開することで、効果を最大化した。
- 成功した施策を広い範囲へ広げるときに使う語。
2-2. 速く・無駄なく進めるとき(速度・効率)
- 加速する
- 進行スピードを一段上げるときの最も直接的な表現。
- 例:デジタル化を加速することで、業務効率を向上させた。
- 進行スピードを一段上げるときの最も直接的な表現。
- 前倒しする
- スケジュールを早め、実行時期を繰り上げるときに使う語。
- 例:開発工程を前倒しすることで、早期リリースを実現した。
- スケジュールを早め、実行時期を繰り上げるときに使う語。
- 迅速化する
- 手続きや判断のスピードを上げ、遅滞をなくすときに使う語。
- 例:承認フローを迅速化することで、意思決定を早めた。
- 手続きや判断のスピードを上げ、遅滞をなくすときに使う語。
- 効率化する
- 無駄を省き、生産性を高めて進みを良くする表現。
- 例:業務プロセスを効率化することで、担当者の負荷を軽減した。
- 無駄を省き、生産性を高めて進みを良くする表現。
2-3. 実現しやすくするとき(後押し・支援)
- 支援する
- 実務的・直接的にサポートするときの最も誠実な表現。
- 例:本部が新規事業の立ち上げを支援することで、準備が円滑に進んだ。
- 実務的・直接的にサポートするときの最も誠実な表現。
- 後押しする
- 心理的・制度的に背中を押すニュアンスをもつ語。
- 例:研修制度が社員の挑戦を後押しすることで、応募が増えている。
- 心理的・制度的に背中を押すニュアンスをもつ語。
- 整備する
- 制度や環境を整え、取り組みを進めやすくする表現。
- 例:評価制度を整備することで、社員の行動指針を明確にした。
- 制度や環境を整え、取り組みを進めやすくする表現。
- 底上げする
- 全体の水準を引き上げ、取り組みを進めやすくする語。
- 例:教育投資がチーム全体のスキルを底上げすることで、成果が安定した。
- 全体の水準を引き上げ、取り組みを進めやすくする語。
- 下支えする
- 目立たない部分で基盤を支え、進行を安定させる語。
- 例:管理部門が現場運営を下支えすることで、業務を円滑にしている。
- 目立たない部分で基盤を支え、進行を安定させる語。
2-4. 動きを生み出すとき(活性化・刺激)
- 活性化する
- 組織や市場に活気を与え、動きを生み出す最も汎用的な語。
- 例:イベント開催が地域交流を活性化することで、参加者が増加した。
- 組織や市場に活気を与え、動きを生み出す最も汎用的な語。
- 喚起する
- 関心・需要・注意などを呼び起こすときに使う語。
- 例:新キャンペーンが顧客の関心を喚起することで、来店数が増加した。
- 関心・需要・注意などを呼び起こすときに使う語。
- 拍車をかける
- すでに進んでいる流れをさらに強める比喩的な表現。
- 例:新制度の導入が改革の進展に拍車をかけることで、改善が加速した。
- すでに進んでいる流れをさらに強める比喩的な表現。
- 触発する
- 刺激を与え、意欲や行動を引き出すときに使う語。
- 例:先輩の挑戦が若手社員を触発することで、新提案が相次いだ。
- 刺激を与え、意欲や行動を引き出すときに使う語。
- 拡充する
- 体制や内容を厚くし、取り組みの勢いを強める語。
- 例:サポート体制を拡充することで、顧客対応を安定させた。
- 体制や内容を厚くし、取り組みの勢いを強める語。
2-5. 内側から高めるとき(育成・醸成)
- 育成する
- 人材や能力を伸ばす、最も分かりやすい表現。
- 例:若手リーダーを育成することで、組織の自走力が高まった。
- 人材や能力を伸ばす、最も分かりやすい表現。
- 醸成する
- 文化・意識・協働姿勢などをじっくり育てる知的な語。
- 例:対話の機会を増やし、協働の風土を醸成することで、連携が深まった。
- 文化・意識・協働姿勢などをじっくり育てる知的な語。
- 向上させる
- 能力・品質・精度などを一段上げる中立的な表現。
- 例:分析精度を向上させることで、提案力を強化した。
- 能力・品質・精度などを一段上げる中立的な表現。
- 啓発する
- 意識や知識を高め、行動変容を促す語。
- 例:安全意識を啓発することで、事故率を低減した。
- 意識や知識を高め、行動変容を促す語。
- 涵養(かんよう)する
- 資質や倫理観を時間をかけて育む、品格の高い語。
- 例:倫理観を涵養する研修を通じ、誠実な文化を育んだ。
- 資質や倫理観を時間をかけて育む、品格の高い語。
2-6. 広げて根付かせるとき(普及・浸透)
- 浸透させる
- 考え方や文化を深く行き渡らせるときに使う語。
- 例:全社説明会を通じ、ミッションを浸透させる取り組みを続けている。
- 考え方や文化を深く行き渡らせるときに使う語。
- 定着させる
- 新しい制度や習慣を根付かせ、継続的な状態にする語。
- 例:新しい働き方を定着させるため、制度運用を進めた。
- 新しい制度や習慣を根付かせ、継続的な状態にする語。
- 普及させる
- 技術・サービス・仕組みを広く行き渡らせる語。
- 例:オンライン手続きを普及させることで、利用率を向上させた。
- 技術・サービス・仕組みを広く行き渡らせる語。
- 拡大する
- 範囲・規模・シェアを広げるときに使う語。
- 例:販路を拡大することで、新規顧客の獲得が進んだ。
- 範囲・規模・シェアを広げるときに使う語。
3.まとめ:語彙力が伝達の質を底上げする
『促進』に一語で寄りかかると、前進・支援・活性化・浸透といった異なる動きが同じ方向へ均され、説明の輪郭が曖昧になりやすくなる。
文脈に応じて語を選び替えることで、変化の質や背景が立ち上がり、理解の射程を高められる。
適切な語が文脈の精度を高め、説得力の基盤を支えることを改めて胸に刻みたい。

