今回は『そういえば』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『そういえば』とはどんな性質の言葉か?
「そういえば」は、会話や文章の流れの中で、話題同士を結び付ける際に用いられる言葉である。
一方で、記憶にある事柄を呼び起こしたり、話の向きを切り替えたりする場面と深く結び付いており、その働きを整理すると特徴が見えてくる。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「そういえば」は、ある話題をきっかけとして関連する事柄を思い出し、新たな話題や補足情報として持ち出すことを意味する言葉である。
単なる話題転換だけでなく、記憶の想起や関連事項の付加を伴いやすい点に特徴がある。
実務では、参考情報として受け取るのか、検討すべき論点として受け取るのかなど、認識のずれが生じることもある。
こうした性質を踏まえ、次章では「そういえば」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『そういえば』を品よく言い換える表現集
ここからは「そういえば」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 話題をなめらかに変えるとき(転換)
『そういえば別件だが』『そういえばもう一つ』など、現在の話題から自然に別の話題へ移る際の言い換え。
- ところで
- 最も汎用性が高く、本題をいったん区切って別の話題へ自然に移る際に重宝する。
- 例:来期の予算案については概ね整理できた。ところで新拠点の準備状況はどうなっているか。
- 最も汎用性が高く、本題をいったん区切って別の話題へ自然に移る際に重宝する。
- さて
- 前段を締めくくり、次の論点や本題へ意識を切り替える際に適する。
- 例:現状の課題については共有できた。さて今後の対応方針について整理したい。
- 前段を締めくくり、次の論点や本題へ意識を切り替える際に適する。
- それはそうと
- 話の流れを受け止めつつ、別の話題を柔らかく持ち出す際に向く。
- 例:市場動向については理解できた。それはそうと採用計画の進捗も確認したい。
- 話の流れを受け止めつつ、別の話題を柔らかく持ち出す際に向く。
- ときに
- やや格調を帯びながら、別の視点や話題を提示したい場面で機能する。
- 例:現行施策の成果は一定程度確認できた。ときに顧客満足度の推移はどうだろうか。
- やや格調を帯びながら、別の視点や話題を提示したい場面で機能する。
- それはさておき
- 前の話題をいったん脇に置き、別件へ移る意図を明確に示したい際に適する。
- 例:原因分析については引き続き進める。それはさておき今後の体制を整理したい。
- 前の話題をいったん脇に置き、別件へ移る意図を明確に示したい際に適する。
2-2. 思い出して話を切り出すとき(想起)
『そういえば以前も』『そういえば聞いた話だが』など、記憶にある事柄を思い起こして持ち出す際の言い換え。
- 思えば
- 過去の出来事を振り返りながら、現在との繋がりを示す場面で重宝する。
- 例:今では安定運用できている。思えば導入当初は試行錯誤の連続だった。
- 過去の出来事を振り返りながら、現在との繋がりを示す場面で重宝する。
- 考えてみれば
- 事実を改めて見直した結果として、気付きや再認識を示す際に向く。
- 例:今回の提案は新しく見える。考えてみれば以前から議論されていた内容でもある。
- 事実を改めて見直した結果として、気付きや再認識を示す際に向く。
- 振り返れば
- 過去の経緯を整理しながら、現在の状況を捉え直す場面に適する。
- 例:組織体制は大きく変化した。振り返れば小規模な部署からの出発だった。
- 過去の経緯を整理しながら、現在の状況を捉え直す場面に適する。
- 今にして思えば
- 当時は気付かなかった意味や背景を、後になって理解した際に機能する。
- 例:当時は判断に迷いもあった。今にして思えば重要な転機だったと感じる。
- 当時は気付かなかった意味や背景を、後になって理解した際に機能する。
- 今さらながら
- 時間が経過した後に改めて価値や意味を認識したことを控えめに示す。
- 例:運用開始から数年が経過した。今さらながら設計思想の重要性を実感している。
- 時間が経過した後に改めて価値や意味を認識したことを控えめに示す。
- 顧みれば
- やや格調高く、過去の経験や歩みを振り返る際に適した表現。
- 例:現在の基盤は着実に整っている。顧みれば多くの試行錯誤の積み重ねがあった。
- やや格調高く、過去の経験や歩みを振り返る際に適した表現。
2-3. 関連事項をさりげなく付け足すとき(補足)
『そういえばこれも重要だ』『そういえば別件だが関係がある』など、関連情報を自然に添える際の言い換え。
- ちなみに
- 補足情報を気軽かつ自然に添える定番表現で、幅広い場面で使いやすい。
- 例:今回の施策は来月から開始する。ちなみに対象部署は三部門を予定している。
- 補足情報を気軽かつ自然に添える定番表現で、幅広い場面で使いやすい。
- 付言すれば
- 本筋を崩さずに補足事項を知的かつ簡潔に加える際に重宝する。
- 例:基本方針については合意を得ている。付言すれば運用面は今後調整する予定だ。
- 本筋を崩さずに補足事項を知的かつ簡潔に加える際に重宝する。
- ついでながら
- 本題に関連する情報を肩肘張らずに添えたい場面に向く。
- 例:会議資料は共有済みである。ついでながら参考データも添付しておいた。
- 本題に関連する情報を肩肘張らずに添えたい場面に向く。
- 余談ながら
- 本筋から少し離れた話題を補足として加える際に適する。
- 例:新制度の説明は以上である。余談ながら他社でも同様の動きが見られる。
- 本筋から少し離れた話題を補足として加える際に適する。
- なお
- 注意点や追加情報を簡潔かつ実務的に添える際に有効な表現。
- 例:申請期限は今月末としている。なお提出方法は従来どおり変更ない。
- 注意点や追加情報を簡潔かつ実務的に添える際に有効な表現。
3.まとめ:『そういえば』がつなぐ話と思考の流れ
「そういえば」は、記憶にある事柄や関連する情報を呼び起こし、話の流れに新たな視点を加えるための言葉である。
言い換え表現の違いに目を向けることで、話題のつなぎ方や情報の差し込み方まで、より的確に表現できるようになるだろう。

