+tmr(プラストゥモロー) 髪の本質ケア |ブランドコンセプト分析

+tmr(プラストゥモロー) 髪の本質ケア |ブランドコンセプト分析

「髪の本質ケア」という新たな価値基準で、ヘアケア業界の常識を根本から変革。

+tmrが提唱する「タンパク質に着目した髪の本質ケア」は、ヘアケア業界に蔓延する「うるおい追随型」から「本質志向型」への転換を促し、髪の存在意義そのものを問い直す革命的なコンセプトである。

単なるヘアケアブランドから脱却し、「科学的根拠と情緒価値の融合」によって新たなケアの哲学を実現する。

このことを通じて、髪も気持ちも晴れやかになる明日への希望という壮大なビジョンを分析する。

目次

1.+tmr(プラストゥモロー)とは?

「ツバキ」「ウーノ」などを手掛けるファイントゥデイホールディングス(資生堂の日用品部門が2021年5月に分離して発足)が初めて立ち上げたオリジナル新ブランドである+tmr。

同ブランドが掲げる「髪の本質ケア」という新たな価値提案。

「科学的根拠と情緒価値の融合」を軸に、従来のヘアケア業界における「うるおい一択」「感覚的ケア」という既成概念を覆し、「髪の構成要素から発想する」という根本的な価値転換を実現している。

80%以上がタンパク質で構成される髪の本質に着目し、タンパク質のもととなるアミノ酸による科学的補修アプローチを追求し、ヘアケアを通じて人々の「今日と明日」をより晴れやかにすることを目指す。

単なる商品開発論を超えて、「いい髪が紡ぐ、素晴らしい今日そして明日」という哲学的な問いから出発し、ヘアケア産業全体の在り方に新たな指針を提示している革新的なブランド戦略である。

2.コアコンセプト

いい髪が紡ぐ、素晴らしい今日そして明日

3.コンセプト評価

コンセプト評価
  • 独創性:★★★
    • ヘアケア業界の「うるおい一択」を「本質志向」へと転換させる発想の逆転
  • 魅力度:★★☆
    • 科学的根拠と情緒価値の両面による理性と感性への訴求力
  • 完成度:★★★
    • 成分処方から香り・パッケージまで一貫したコンセプト体現の完成度
  • 時代性:★★★
    • 本質志向と心の豊かさを求める現代社会に完全対応
  • 影響力:★★☆
    • レッドオーシャンのプレミアムヘアケア市場における新たなカテゴリー創造

評価軸について

  • 独創性:他との差別化、新規性、アイデアの斬新さ
  • 魅力度:ターゲットへの訴求力、感情的インパクト
  • 完成度:コンセプトが実際の商品・サービスで適切に体現されているか
  • 時代性:社会トレンドや時代背景への適合性
  • 影響力:市場や社会への波及効果、文化的意義

総評

成熟したヘアケア市場において「髪の本質ケア」という新たなカテゴリーを創造し、競合他社とは全く異なる土俵での明確な差別化を実現している。

この戦略により、機能一辺倒のヘアケア領域から脱却し、科学的根拠と情緒価値を軸とした独自の価値提供モデルを確立。

全国発売2ヶ月で累計出荷数195万個突破という結果が、その有効性を実証している。

4.誕生背景

生活者の意識変化として「本質志向」の消費行動が高まる時代背景があった。

「ものを買う時に本当に必要なものか考えて買う」という思考の浸透により、表面的な訴求ではなく本質的価値への関心が拡大している。

同時に、プレミアムヘアケア市場では「うるおい訴求」が過当競争状態に陥り、差別化が困難な状況が生まれていた。

さらに、物質的豊かさから心の豊かさへの価値観の変化を受け、単なる機能性ではなく、情緒的な満足感のあるヘアケアへの需要が拡大している。

ファイントゥデイとしては、「髪が何で構成されているか」という根本的な問いから出発。

60%以上が髪の主成分がタンパク質であることを知りながら「うるおい一択」という矛盾に着目し、「髪の本質から発想するケア」という新たな価値基準を設定する方針を決定。

この科学的アプローチの有効性が、全国発売から短期間での圧倒的な市場反応として実証されている。

5.コンセプトの特徴分析

「髪の本質ケア」は、ヘアケア業界における価値創造の新たな基準を示している。

3つの視点から分析してみよう。

注目ポイント1:「本質志向」による市場の再定義

最大の革新性は、「髪の構成要素から発想する」という本質回帰の哲学にある。

従来のヘアケア業界では、感覚的な「うるおい」「しっとり」などの表面的価値訴求が主流であったが、+tmrは「80%以上がタンパク質で構成される髪には、タンパク質に着目したケア」という論理的価値を追求している。

この発想転換により、科学的根拠に基づく新たなケアカテゴリーを創造し、ヘアケアの「本質化」を実現している。

注目ポイント2:科学的アプローチと情緒価値の融合

コアとなる「ネイチャープロテインCP処方」は、機能性と自然由来を両立させる独自の商品開発思想を表している。

パール由来タンパク質成分、アミノ酸によるダメージホール補修など、科学的な根拠を「日常ケア」に落とし込む革新的なアプローチが特徴的である。

同時に彩雲をイメージしたパッケージデザイン、フレッシュフローラルの香りなど、「機能だけでなく気持ちまでも前向きに」という総合的な価値創造姿勢を示している。

注目ポイント3:彩雲モチーフによる希望の可視化

「下を向きがちな毎日の中でふと上を見上げた時に見える吉兆のサイン『彩雲』」というモチーフ設定により、ヘアケア体験を「明日への希望」と直結させる独創的なブランディングを実現している。

この象徴的な表現により、単なる髪のケアを「人生の前向きさ」へと昇華させ、SNSでの高い注目度(9秒に1回の投稿頻度)につながっている。

6.他業界への応用可能性

この「本質志向による価値転換」戦略は、成熟した消費財業界での差別化に極めて有効である。

スキンケア業界での「保湿重視から肌構成要素重視へ」、サプリメント業界での「成分列挙から体の仕組み理解重視へ」など、従来の業界常識を科学的根拠で見直すアプローチが考えられる。

重要なのは、単なる機能追加ではなく、「なぜその成分が必要なのか」という存在意義から根本的に問い直し、消費者の本質的理解に基づく新たな価値を明確に定義している点である。

7.コンセプト言語の戦略性

「+tmr(プラストゥモロー)」という表現は、現在から未来への価値創造を示した戦略的な言語設計である。

「プラス」という向上概念「トゥモロー」という未来性を組み合わせることで、ヘアケアを単なる現在の改善から「未来への投資」へと昇華させている。

「いい髪が紡ぐ、素晴らしい今日そして明日」というコアメッセージも秀逸である。

「いい髪」という具体的価値と「素晴らしい今日そして明日」という包括的な人生価値を連結することで、日々のケアが人生全体の豊かさに繋がるという価値の拡張性を表現している。

「髪の本質ケア」という概念表現は、複雑な科学的アプローチをシンプルで理解しやすい言語に変換する高度な言語技法により、消費者の納得感を高めている点が印象的である。

8.体験・入手方法

  • 主要商品ライン(2025年8月時点)
    • IN BATH
      • シャンプー/トリートメント/ヘアマスク(スムースシリーズ、モイストシリーズ、ブライトシリーズ)
    • OUT BATH
      • アウトバストリートメント(セラムシリーズ)
  • 技術革新
    • ネイチャープロテインCP処方、アミノ・プロテイン配合による本質的補修アプローチ
  • 感覚体験
    • フレッシュフローラルの香り、彩雲イメージの視覚的癒し効果
  • 持続可能性
    • リサイクルPET約66%使用、植物由来プラスチック配合による環境配慮設計
本連載について

話題のブランドコンセプトを徹底分析するシリーズ。新商品・新サービスから既存ブランドのリニューアルまで、注目を集めるコンセプトの戦略性と仕組みを解き明かしている。

独創性・魅力度・完成度・時代性・影響力の5軸で評価し、なぜそのコンセプトが響くのか、どんな工夫が込められているのかを分析。顧客の心をつかみ、競合との差別化を実現する「価値の約束」をつくるヒントを、マーケティング実務者に提供することを目指す。

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