今回は『行う』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『行う』とはどんな性質の言葉か?
「行う」は、業務や施策、対応などを進める場面で幅広く使われる言葉である。
一方で、行為の具体性や段階、意図の強さが文脈に委ねられやすい語でもある。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「行う」は、ある目的に沿って物事を実際に実行に移すことを指す言葉である。
実施・遂行・挙行など複数の行為段階を含み、行動の内容や範囲が広い点に特徴がある。
文脈によっては、行為の範囲や具体性の解釈に差が生まれ、認識のずれにつながる場合もあり、使いどころには気を配りたい。
こうした性質を踏まえ、次章では「行う」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『行う』を品よく言い換える表現集
ここからは「行う」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 実務として実際に行うとき(実施)
実務の現場で、計画を具体的な行動へと移す際の正確な表現。
- 実施する
- 計画や調査、試験などを、決められた手順に従って実際に執り行う際に最も重宝する。
- 例:新製品の市場浸透率を測定すべく、全国主要都市で大規模な街頭アンケートを実施した。
- 計画や調査、試験などを、決められた手順に従って実際に執り行う際に最も重宝する。
- 実行する
- 思考や計画の段階を脱し、強い意志を持って現実の行動へと移す決意を強調する。
- 例:経営陣はコスト削減に向けた構造改革案を可決し、即座に不採算部門の整理を実行した。
- 思考や計画の段階を脱し、強い意志を持って現実の行動へと移す決意を強調する。
- 施行する
- 法令や規則、制度などの効力を発生させ、実際に世の中や組織内で運用を開始する。
- 例:コンプライアンス遵守を徹底させるため、改定された情報管理規定を全社一斉に施行した。
- 法令や規則、制度などの効力を発生させ、実際に世の中や組織内で運用を開始する。
- 執行する
- 法律の強制力や行政上の決定、あるいは予算などの職務を、権限に基づいて取り扱う。
- 例:総会での決議に基づき、代表取締役は新たな事業年度の予算配分を速やかに執行した。
- 法律の強制力や行政上の決定、あるいは予算などの職務を、権限に基づいて取り扱う。
- 施す
- 対象に対して何らかの手を加え、状態を改善させたり特定の効果を与えたりする。
- 例:競合他社による模倣を防ぐため、独自技術の核心部分にはブラックボックス化の処置を施した。
- 対象に対して何らかの手を加え、状態を改善させたり特定の効果を与えたりする。
2-2. 任務・責任としてやり遂げるとき(遂行)
与えられた役割や約束を、プロとして最後まで全うする姿勢を示す表現。
- 遂行する
- 与えられた任務や職務を、障害を乗り越えて最後まで着実にやり遂げる姿を指す。
- 例:プロジェクトリーダーは予期せぬトラブルに直面しながらも、期日までに開発任務を遂行した。
- 与えられた任務や職務を、障害を乗り越えて最後まで着実にやり遂げる姿を指す。
- 履行する
- 契約上の義務や法的な約束事項を、一つひとつ確実に実行して責任を果たす。
- 例:弊社は契約書に定められた保守点検の義務を誠実に履行し、顧客との信頼関係を強固にした。
- 契約上の義務や法的な約束事項を、一つひとつ確実に実行して責任を果たす。
- 推進する
- 目的に向かって事業や計画を前へと進め、周囲を巻き込みながら勢いをつける。
- 例:カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーへの転換を全社プロジェクトとして推進した。
- 目的に向かって事業や計画を前へと進め、周囲を巻き込みながら勢いをつける。
- 完遂する
- 極めて困難な課題や、長期間にわたる任務を、一分の隙もなく完全にやり終える。
- 例:膨大なデータの移行作業を、不眠不休の体制で取り組むことにより、システム統合を無事に完遂した。
- 極めて困難な課題や、長期間にわたる任務を、一分の隙もなく完全にやり終える。
- 全うする
- 与えられた命(めい)や職責を、自らの信念に基づき最後まで欠けることなく終える。
- 例:定年を迎えた工場長は、三十年間にわたり一度の重大事故も起こすことなくその職責を全うした。
- 与えられた命(めい)や職責を、自らの信念に基づき最後まで欠けることなく終える。
2-3. 決断して実行に移すとき(断行)
反対意見や困難を押し切り、不退転の決意で物事を進める際の強い表現。
- 断行する
- 強い反対や障害を排し、断固とした決意をもって思い切って物事を行う。
- 例:将来の成長投資を確保するため、経営陣は創業以来初となる大規模な組織再編を断行した。
- 強い反対や障害を排し、断固とした決意をもって思い切って物事を行う。
- 決行する
- 悪条件や不確定な要素がある中で、迷いを捨てて予定通りに実行に移す。
- 例:悪天候による物流の乱れが懸念されたが、新店舗のオープンセレモニーを予定通り決行した。
- 悪条件や不確定な要素がある中で、迷いを捨てて予定通りに実行に移す。
- 敢行する
- 困難や危険、または通常では考えられない過酷な状況を承知の上で、あえて行う。
- 例:競合他社に先んじて市場を独占すべく、未開拓地域への強行軍とも言える販路拡大を敢行した。
- 困難や危険、または通常では考えられない過酷な状況を承知の上で、あえて行う。
- 強行する
- 周囲の納得が得られていない、あるいは無理がある状況で、強引に物事を進める。
- 例:一部の株主から強い異論が出たものの、取締役会は他社との合併交渉を強行した。
- 周囲の納得が得られていない、あるいは無理がある状況で、強引に物事を進める。
2-4. 公式・形式として行うとき(挙行)
儀式や公的な催しを、格式高く伝統や礼法に従って進める際の表現。
- 執り行う
- 儀式や式典などを、主催者として丁重に、かつ厳粛な手続きに従って進める。
- 例:物故社員の功績を称え、しめやかな雰囲気の中で社葬を滞りなく執り行いました。
- 儀式や式典などを、主催者として丁重に、かつ厳粛な手続きに従って進める。
- 挙行する
- 記念式典や卒業式など、公的で意義深い行事を正式に開催する。
- 例:創業百周年の節目を祝し、政財界の重鎮を招いて盛大な記念祝賀会を挙行した。
- 記念式典や卒業式など、公的で意義深い行事を正式に開催する。
- 開催する
- 集会、会議、催し物などを、場所を設けて計画的に実施する。
- 例:次世代技術の展示会をパシフィコ横浜にて開催し、三日間で一万人を超える来場者を得た。
- 集会、会議、催し物などを、場所を設けて計画的に実施する。
- 催す
- 会合や宴席などを主催して人を集め、もてなす場を作る。
- 例:長年協力関係にあるパートナー企業を招待し、日頃の感謝を伝えるための親睦会を催しました。
- 会合や宴席などを主催して人を集め、もてなす場を作る。
3.まとめ:『行う』の多義性を言い換えで活かす
「行う」は幅広い場面に対応できる便利な語だが、その内側には実施・遂行・断行・挙行といった異なる行為のニュアンスが含まれている。
場面に応じて言い換えを選び分けることで、行為の輪郭が明確になり、伝えたい意図もより自然に届いていくだろう。

