スーツブランド「ONLY」とは?
創業の地は京都
京都発のスーツブランド「ONLY(オンリー)」。
品質とコストパフォーマンスに定評のある老舗のブランドだ。
創業は1976年。
すでに半世紀近い歴史を刻み、紳士服の分野で独自の進化を遂げてきている。

本ブログではこれまでオーダースーツ専門店のブランドをいくつも取り上げてきたが、ONLYはそれらのブランドと立ち位置がやや異なる。
「吊るし」といわれる既製スーツとオーダースーツの双方に力を入れているのだ。
後述するが、実はこのことがスーツのオーダーに慣れていない人には決して小さくないメリットを生む。
現在、北海道から九州まで全国主要都市に 33店舗(2025年2月時点)を展開し、そのうち6店舗は創業の地・京都に構える。
ONLYを語るうえで欠かせないのが、創業者・中西浩一氏の存在だ。
日本の紳士服業界において権威ある「高松宮技術奨励賜杯賞」を受賞した経歴を持ち、卓越した技術と理念をブランドに息づかせている。
そして、今回の記事で焦点を当てるONLYのオーダースーツブランド 「テーラーメイド(ONLY Tailor Made by KOICHI NAKANISHI)」 もまた、中西氏が監修を務め、その名を冠する特別なラインである。
「テーラーメイド」とは?
その名の通り(「ONLY」は唯一、無比の意)、ONLYは「ほかにはない、ONLYだけの確かなスーツ」というブランドコンセプトを貫いている。

その象徴が、オーダースーツブランド「テーラーメイド(ONLY Tailor Made)」 だ。
このラインでは、「豊富な生地・オプション・モデルから選び、国内の自社工場で仕立てることで、世界に一着、あなただけのオーダースーツ」を実現することを掲げている。
価格は 48,000円(税込)~ と手の届きやすい設定ながら、納期は最短2週間というのも魅力のひとつだ。
品質へのこだわりも徹底しており、公式サイトでは、佐賀県の自社工場での縫製や、店舗スタッフの高い採寸技術について強調されている。
では、実際にONLYのオーダースーツはユーザーからどのように評価されているのか?
ネット上に寄せられた口コミやレビューを俯瞰的に見てみよう。
オンリーの口コミと評判
初心者・リピーターともに高評価
これまで本ブログでは数多くのオーダースーツブランドを取り上げ、実際のユーザーが寄せる口コミやレビューを精査してきた。
その中でも、ONLYのオーダースーツは極めて高い評価を得ているブランドのひとつだ。
特筆すべきは、ネガティブな意見が極端に少ない点にある。
オーダースーツは、濃密な接客を伴うため、ユーザーとスタッフの相性が結果に影響を及ぼすことも珍しくない。
些細なすれ違いが不満へとつながり、レビューに辛辣な言葉が並ぶこともある。
しかし、ONLYに関しては否定的なコメントが(皆無ではないにせよ)滅多に見かけないのだ。
また、新興のオーダースーツブランドの場合、「初めてオーダーしました!」という初心者の書き込みが目立つ傾向があるが、ONLYは異なる。
口コミを俯瞰すると、初心者とリピーターの割合は概ね7:3。
初めてのオーダーに感動を覚えたユーザーが、その満足感を胸に再び足を運ぶブランドであることがうかがえる。
さらに、リピーターの声には「ONLYならではの魅力」への言及も多く、単なる「最初の一着」ではなく、「次の一着もここで」と思わせる確かな理由が綴られている。
ではここから、それら口コミやユーザーレビューから浮かび上がるONLYの高評価のポイントを詳しく見ていこう。
評価ポイント①:フィット感や着心地
多くのユーザーが口を揃えて絶賛するのが「身体にぴったりと馴染む着心地」だ。

オーダースーツだから当然と思われるかもしれないが、実はブランドごとに大きな差が出る部分でもある。
リーズナブルな価格や短納期を追求した結果、カスタマイズの幅が限られ、実際には着丈や袖丈程度しか調整できないブランドも少なくない。
そのため、オーダーしたにもかかわらず肩周りが窮屈だったり、背中に余計なシワが入ったりするケースも見受けられる。
一方、ONLYのオーダースーツは着た瞬間に「おっ、しっくりくる」「長時間着ても疲れない」というレベルに仕上がる。
これは、ONLYの仕立てそのものに確かな技術とシステムが備わっている証拠だろう。
なお、記事の後半では、ONLYがこの課題をどのようにクリアしているのか、その秘密に迫っていく。
評価ポイント②:心地よい接客
ONLYの口コミの中で最も多くの評価が集まるのが 「接客の質」である。
多くのユーザーが、まるで感謝状を書くようなトーンでスタッフの対応を称賛している。
たとえば、次のような声が寄せられている。
- 「洗練されているのに、決して敷居が高くない。心地よい接客だった。」
- 「店員さんが親身に対応してくれて、自分ではうまく言葉にできない要望も汲み取ってくれた。」
- 「セールをしないというポリシーに、ブランドの誇りを感じる。」
接客に関する口コミは他のブランドにも見られるが、ONLYの場合、「丁寧で親切」という一般的な評価を超えている。
「ほどよい距離感でプレッシャーを感じさせない」という絶妙なバランスに言及するユーザーが多いのが特徴的だ。
スタッフや店舗が異なっても、どこか統一感のある接客スタイルが貫かれている。
これは偶然ではなく、ブランド創設者・中西浩一氏の哲学が根付いている証なのかもしれない。
評価ポイント③:コストパフォーマンスの高さ
ONLYのオーダースーツは 48,000円(税込)~ という手の届きやすい価格帯だが、それ以上に「コスパの高さ」が評価されている。

事実、より低価格のオーダースーツブランドはいくつも存在する。
しかし、ユーザーの口コミを見ると、「この価格で、この品質なら満足度が高い」という声が多い。
単なる安さではなく、価格以上の価値を感じさせる仕立てのよさが評価されていることが分かる。
そこのことを端的に示すのが、とあるユーザーの以下のコメントだろう。
百貨店で同じクオリティのオーダースーツを作ろうとすれば、もっと高額になる。
ONLYが提供するのは、単なるお手ごろ価格のオーダーではなく、「価格と品質の最適解」なのだ。
評価ポイント④:優れた機能性
口コミやレビューではあまり目立たないものの、ONLYのオーダースーツに備わる「機能性」に対しても、一定の評価が寄せられていることが分かる。
特に、「軽い、動きやすい、シワになりにくい、自宅で洗える」といった実用性の高さを挙げる声が多い。

京都発の老舗ブランドというと、「100%ウール」を基本とし、クラシックな仕立てを重視する印象を受ける。
しかし実際は、ONLYはポリエステルウールなどの機能性素材を積極的に採用し、実用性と着心地を両立させている点が評価されているようだ。
伝統を守るだけでなく、ユーザーのニーズを柔軟に取り入れる姿勢こそが、ONLYの強みのひとつといえるだろう。
ここまで以下の4つの評価ポイントを挙げてきた。
- 着心地やフィット感
- 心地よい接客
- コストパフォーマンスの高さ
- 優れた機能性
こうした4つが揃うからこそ、ONLYは多くのユーザーを魅了し、一度袖を通した人が再び選びたくなるブランドになっているといえる。
次章から、高評価の源泉ともいえるONLYの仕立ての秘密に迫り、同ブランドならではの特徴をいくつか挙げてみたい。
オーダースーツのブランドをこれから選ぼうとしている人たちには有益な情報となるはずだ。
特徴1.ゲージ服による精密な採寸
パターンオーダーとは?
ONLYのオーダースーツは「パターンオーダー」という仕立て方式を採用している。
これは予め用意されたパターン(型紙)をもとに、顧客の体型や好みに合わせて調整を加えるオーダー手法だ。
スーツの「型紙」はいわば設計図。

その設計図を一人ひとりの体型や好みに合わせて一から書き起こす昔ながらのフルオーダーとは対極をなす。
パターンオーダーでは既存の型紙(通常は50〜100種類程度)を生産工程に前もって組み込んでおき、その型紙に最小限の補正を加える形で、低コストかつ短納期を実現している。
熟練の職人が手縫いで仕立てる「ハンドメイド・フルオーダー」と比べると、工程の多くがマシンメイドで合理的・効率的な生産が可能となる。
このパターンオーダーが昨今幅広く市民権を得る“お手ごろ価格”のオーダースーツブランドでは主流なのだ。
ONLYでは、長年にわたる顧客データの蓄積をもとに、スタイル・シルエット・フィット感のバランスを最適化した型紙設計を極め、より多くの人にフィットするパターンオーダーを実現している。
とはいえ、スーツを初めてオーダーする人にとっては、「どの型紙を選ぶべきか」「そこにどの程度サイズ調整を加えるべきか」という点が悩みどころになるだろう。
その微妙なさじ加減が、フィット感や着心地、さらにはスーツ全体の美しさに大きく影響することも少なくないからだ。
そこで、ONLYのパターンオーダーでは「ゲージ服」と呼ばれるサンプルスーツを活用する。

ゲージ服は仕上がりのシルエットや着心地をリアルに体感し、より理想的な一着を導き出すための「補正幅」を判断する重要なステップを担う。
ゲージ服を着て分かること
ONLYの店舗には、幅広いサイズ展開のゲージ服が用意されている。
基本的な採寸(首周り・バスト・ウエスト・肩幅・ヒップなど)を終えた後、自分のサイズに近いゲージ服を試着するのだ。
ゲージ服は「採寸服」とも呼ばれ、一見すると「着丈や袖丈を決めるための補助ツール」のようにも思えるが、それだけではない。
実際に袖を通すことで、スーツのフィット感・着心地・シルエットをリアルにシミュレーションできることこそが、ゲージ服の本質的な役割である。
試着することで、ぼんやりとしたスーツのイメージがより具体的になり、「もう少しスリムなシルエットがいい」「着心地にゆとりを持たせたい」など、自分でも気づいていなかった潜在的なニーズが明確になっていく。
実際に、試着時の典型的なフィードバックとして、以下のような声が挙がる。
- 「全体的にもう少しスリムにして、すっきり見せたい。」
- 「肩が少し突っ張る感じがする。」
- 「袖丈を短くして、手首が少し見えるぐらいが理想。」
- 「着丈が短めでカジュアルに見えるので、もう少し長めにしたい。」
このようにゲージ服を着ることで、スーツのフィット感やデザインに対する「自分なりのこだわり」が浮かび上がるのだ。
ゲージ服×フィッター
ここに、ONLYのフィッター(店舗スタッフ)の技術が加わることで、フィッティングの完成度はさらに高まる。
ONLYのスタッフは、一人ひとりの好みや着用シーンをヒアリングしながら、「まだ言語化できていないニーズ」を引き出していく。
たとえば、以下のようにスタッフの一言で初めて気づくポイントもある。
- 「胸周りはもう少しゆとりがあった方が快適ですよ。」
- 「肩のフィット感がもう少しゆるやかなほうが、腕の動きがスムーズになります。」
こうしたプロの視点が加わることで、単なる「自分の好み」ではなく「より洗練されたフィット感」へと導かれていく。
まさに二人三脚で理想のスーツをつくり上げるプロセスだ。
実際、ONLYの公式サイトにはゲージ服の画像が掲載されている。
サイズ調整の目安となる「白いライン」が随所に施されており、たとえば袖丈なら、このラインを目安に理想の長さで折り返し、ピンで留めることで完成時のイメージを明確にできる。
「袖をほんの少し短くしただけで、全体のシルエットがこんなにも変わる」—— そんな意表を突く発見が体感できるのも、ONLYのゲージ服とフィッターの技術が相まってこそなのだ。
採寸技術を高水準に保つ
この精密なゲージ服によるフィッティングの仕組みは、実はONLYの創業者であり、マスターテーラーでもある中西浩一氏のアイデアによるものだという。
一般的なオーダースーツブランドでは、フィッターの経験や技術レベルによって仕上がりにバラつきが生じやすい。
しかし、ONLYでは「ゲージ服」という共通の基準を用いることで、フィッターの技術レベルを一定以上に保つことができる。
その結果、ONLYのオーダースーツに対するクレーム率は1%以下と業界最低水準を維持している。
口コミやレビューにおいても、「想像以上のフィット感」「一度着たら他ではオーダーできない」という声が多く寄せられており、ゲージ服による採寸の精度の高さが、ブランドの信頼を支えていることが分かる。
ここまでの説明でONLY独自のゲージ服が重要な役割を果たしていることがおわかりいただけただろう。
単に「サイズを測る」だけでは終わらない。
「ゲージ服×フィッターの技術×最適化された型紙」という三位一体のアプローチで、一人ひとりに最適なスーツを生み出すシステムが確立されているのだ。
これこそが、ONLYが多くのユーザーに選ばれ続ける理由のひとつなのである。
特徴2.豊富なオーダースーツモデル
オーダースーツの「モデル」とは?
ONLYに限らず、多くのオーダースーツブランドでは「モデル」という概念が存在する。
これはスーツの基本的なシルエットやデザインの型を指し、ブリティッシュ、アメリカン、イタリアンなどのスタイルに大別される。
オーダースーツ初心者にとっては、「理想のシルエット」といきなり問われても具体的にイメージするのは難しいものだ。
しかし、ブランド側が提案するいくつかのモデルを比較することで、漠然としていたイメージが次第に明確になってくる。
こうしたモデルはシルエットやデザインなどの見た目の違いにとどまらない。
モデルごとに肩の構造、ウエストの絞り具合、ラペルの幅などが異なり、フィット感や着心地にも大きな影響を与える。
ONLYには6つもの選択肢があり、選ぶ際は「一番人気のあるものを」などと無難に決めようとせず、店舗スタッフのアドバイスを受けながらじっくり検討するのがいいだろう。
ONLYの6つのモデル
ONLYのオーダースーツには、以下の6つのモデル が用意されている(2025年2月時点)。
- ブリティッシュトレンドモデル
- 英国らしいハイウエスト×タイトフィット。肩幅が狭く、肩のラインがしっかり入るロープドショルダーと襟のラインがスッキリ見えるハイゴージがシャープな印象を演出。
- マンハッタンモデル
- 英国調のデザインとは対照的に、ナチュラルなショルダーラインと細めのラペルで、よりシャープに仕立てた都会的なモデル。
- ブリティッシュベーシックモデル
- 端正で気品のあるスクエアショルダー。セミタイトなシルエットに、ハイゴージ&カッタウェー(ジャケットの前裾が大きく開いたデザイン)がしなやかな表情を加える。
- ソフトコンストラクションモデル
- 肩パッドなしの軽やかな着心地。カミーチャ袖(肩部分にギャザーを寄せて仕立てる袖付けのこと)の柔らかさと、イタリアンノッチのエレガンスさが特徴。
- モンテカルロモデル
- シャープなフォルム×安定感のあるラペル。ナチュラルショルダーとコンパクトな肩周りが特徴のクラシックモデル。
- インターナショナルモデル
- 世界基準のナチュラルショルダースタイル。コンフォータブルフィット × イタリアンノッチで汎用性が高い。
初めての人はどのモデルを選ぶか?
これだけの選択肢が揃っているのは、ONLYの大きな特徴のひとつだ。
しかし、オーダースーツ初心者であれば「どれも魅力的に見えるが、違いがよく分からない」 ということもあり得るだろう。
ある程度スーツに詳しい人なら「ラペルの幅」「肩の構造」「シルエット」といった差異の要素にすぐに目がいくが、初心者には直感的に判断しにくいことも多い。
そこで、モデル選びをスムーズにするために、「体型」「用途」「着心地」 の3つの視点に沿って選び方のポイントを書き添えておこう。
① 体型に合わせて選ぶ
まずは 体型にフィットするモデルを選ぶことが重要だ。
- がっちり体型・肩幅が広い人
- 「ブリティッシュベーシックモデル」 を選ぶと、肩のラインがしっかりとした構造で引き締まった印象に。
- 細身・肩幅が狭めの人
- 「モンテカルロモデル」 なら、コンパクトな肩周りで無理なくフィット。シャープなフォルムが細身の体型を引き立てる。
- 標準体型でバランスを重視したい人
- 「インターナショナルモデル」 は、世界基準のナチュラルショルダーを採用し、幅広い体型に適応。
また、ラペルの幅も体型の印象を左右する重要な要素のひとつ。
細身の人はやや広めのラペルを選ぶと、華奢な印象を緩和できるのだ。
② 用途(着用シーン)で選ぶ


- フォーマルな場面や信頼感を重視するなら
- 「ブリティッシュベーシックモデル」 は、端正なデザインと構築的な肩のつくりで、品格のある印象を演出。
- 都会的でモダンな印象を加えたいなら
- 「インターナショナルモデル」は、クラシックとモダンを両立した汎用性の高いモデル。
- 外回りや商談が多いなら
- 「ブリティッシュトレンドモデル」 や 「モンテカルロモデル」で、スタイリッシュなシルエットを演出し、第一印象を強調するのも一案。
- 出張や移動が多いなら
- 「ソフトコンストラクションモデル」を選べば、肩パッドなしの軽さで長時間の着用も快適に。
③ 着心地の好みで選ぶ
「どのモデルも甲乙つけがたい」「1つに絞る決め手がほしい」という場合は、着心地の好みを優先するというのもありだろう。


- しっかりしたフィット感を求めるなら
- 「ブリティッシュベーシックモデル」 や「ブリティッシュトレンドモデル」 は、構築的なシルエットで、かっちりとした着用感が魅力。
- リラックスした着心地を重視するなら
- 「ソフトコンストラクションモデル」 や「マンハッタンモデル」なら、肩周りが柔らかく、長時間の着用でも快適。
- 適度なフィット感と快適さのバランスを求めるなら
- 「モンテカルロモデル」や「インターナショナルモデル」は、細身すぎず、ゆったりしすぎず、絶妙なフィット感を提供。
ONLYのオーダースーツモデルを選ぶ際は、「体型」「用途」「着心地」 の3つの視点を持っておくと、納得のゆく選択ができるだろう。
最初は「なんとなく違う気がするけど、何が違うのか分からない」という感覚かもしれない。
しかし、3つの視点からあれこれ検討を重ねるうちに、たとえ初心者であってもそれぞれのモデルの特徴が見えてくる。
そして、ふとした瞬間に「これがしっくりくる」「これが自分の求めていたスーツだ」という感覚が降りてくる。
ONLYの6つのモデルは、ただの選択肢ではない。
自分の理想のスーツ像を探るための「入り口」 なのだ。
特徴3.自社工場「オンリーファクトリー」
熟練の職人が全工程を一貫管理
ONLYのオーダースーツを語るうえで、自社工場「オンリーファクトリー」の存在は欠かせない。
これまで紹介してきたように、 独自のゲージ服を活用した採寸技術や多彩なスーツモデルの展開は自分だけの理想の一着を仕立てるために大きく寄与する。
しかし、それだけでは完成しない。
着心地の良さや、美しいシルエットへと昇華させる最後の決め手となるのが、自社工場「オンリーファクトリー」での丁寧な仕立てなのだ。
佐賀県が拠点の自社工場では、生地の裁断から縫製、最終仕上げに至るまで、熟練の職人たちによって一貫した生産管理が徹底されている。


多くのオーダースーツブランドが、中国をはじめとする海外工場に生産を委託する中、ONLYは国内生産にこだわり、高い品質を維持し続けているのだ。
こだわりのアイロンワーク
生産工程でいかにこだわっているかの例を1つ挙げてみよう。
職人技の象徴ともいえるのが「アイロンワーク」 だ。
スーツの生産工程と聞くと、裁断や縫製をイメージしがちだが、アイロンワークもまた、仕立ての質を左右する極めて重要なプロセスである。
単にシワを伸ばす作業ではなく、生地にクセをつけて立体的なフォルムを生み出し、直線的な布を人体の丸みに沿わせるための、職人技が求められる工程だ。
ONLYでは、このアイロンワークをマシンプレスに頼りすぎることなく、熟練の職人が手作業で仕上げる。
ONLYのスーツに寄せられる「身体にぴったりとフィットするのに窮屈さがない」「シルエットが美しく、自然にサマになる」という口コミは、こうしたひと手間かけた職人の技術の賜物(たまもの)なのだろう。
工場がものづくりの中枢を担う
ONLYの自社工場は、単にオーダースーツを生産するだけではない。
ブランドのものづくりの中核としても機能している。
新商品/新技術の開発、型紙(パターン)の最適化、受注データの統合など、生産に関わるさまざまな工程を支えている。
その代表的な例が、ONLYの「空(くう)」と名付けられた超軽量縫製技術だ。
肩パッドや芯地、裏地を極限まで抑え、まるでスーツを着ていないかのような軽やかさを実現するこの技術は、オーダースーツ市場でも高い評価を受けている。
こうした独自技術の開発と実用化がスムーズに進められるのは、自社工場を持つONLYならではの強みだ。
通常、縫製技術の改良や新技術の導入には、試作と調整を繰り返す膨大な時間とコストがかかる。
しかし、ONLYでは、自社工場内で試作と改良を何度も行い、実際の生産ラインへの導入も柔軟に対応できる。
データから最適な型紙設計
さらに、オーダーのデータを自社工場で一括管理できる仕組みも、スーツをオーダーする人たちの細かなニーズをつかむうえで大きな強みとなっている。
そのひとつが先に触れた「型紙」の設計だ。

パターンオーダーでは短納期・低コスト化に向けた効率的な生産体制を実現しつつ、一人ひとりに合ったフィット感や着心地をどう確保するかが重要となる。
そこで重要な役割を果たしているのが、ONLYに蓄積された膨大なオーダーデータだ。
綿密なデータ分析から、実際に多くの人がサイズ調整をするポイントがわかってくる。
たとえば、肩幅や胸の厚みとフィット感の関係などが確かな解像度で見えてくるのだ。
その傾向を反映することで、最初からフィットしやすい型紙の設計を行えるようになる。
ONLYの型紙は、そうしたアップデートを繰り返す中で、より多くの人に自然にフィットするように進化してきたのだ。
その型紙を生産ラインに組み込んでおけば、オーダー時の補正作業が最小限に抑えらえ、年間 2 万着超の効率的な量産が可能となる。
職人たちによる工程管理、たゆまぬ技術開発、そして緻密なデータ分析を融合させたONLYのものづくり。
その根幹を支えているのが、自社工場 「オンリーファクトリー」なのである。
特徴4.機能性を極めたONLYの生地
そもそも「機能性生地」とは?
圧倒的な生地バリエーションの豊富さもまた、ONLYの魅力のひとつだろう。
ONLY独自の「オリジナル生地」はコストパフォーマンスの高さで定評があり、さらに格式のあるインポート生地まで幅広く取り揃えている。
そんな数多くの選択肢の中でも、注目を集めているのがONLYの「機能性生地」 だ。
一口に「機能性生地」といっても、その種類は多岐にわたる。
以下に昨今のスーツ市場で需要の高いものをざっとまとめておこう。
- 快適性を高めるもの
- ストレッチ性や軽量性を向上し、動きやすさやストレスフリーな着心地を実現。
- 夏場なら通気性(エアリー性)や接触冷感(クールタッチ機能)を備えた生地も人気。
- 耐久性を向上させるもの
- 防シワ性や撥水(はっすい)性を持たせ、シルエットの美しさを長く維持。
- 耐摩耗性を高め、スーツの劣化を抑える設計。
- メンテナンス性を向上させるもの
- 洗濯機で洗えるウォッシャブル仕様や速乾性を強化し、お手入れを簡単に。
- 環境配慮型のもの
- リサイクルポリエステルや、環境負荷の少ないウールを使用したエコ・フレンドリーな素材。
既製スーツであれば、こうした機能性を備えた生地は珍しくない。
しかし、ONLYは「オーダースーツの生地」においても、機能性を最大限に追求することに注力している。
「トラベラー」シリーズ
ここで、ONLY が扱う機能性生地の代表例を挙げてみよう。
ONLYのオリジナル生地の一つで、高い人気を誇る 「トラベラー」シリーズ だ。


ウール30%・ポリエステル70%の混紡生地を採用し、防シワ性と回復性に優れ、長時間の移動や出張でも美しいシルエットを保つ。
カバンに入れて持ち運んでも、すぐに元の形状に戻るため、出張や旅行が多いビジネスマンにとって頼れる一着となる。
さらに、縦にも横にも伸縮する2WAYストレッチを採用しており、軽量かつ動きやすい着心地を実現。
長時間の着用でもストレスを感じにくい設計となっている。
特筆すべきは、この「トラベラー」シリーズにジャージー素材が登場したことだ。
同素材のスーツは値段も手ごろなうえに、以下のような特徴がある。
- キックバック(生地の復元力)が強く、防シワ性に優れる
- 軽量で、長時間着ても疲れにくい
- 繊細な光沢があり、高級感のある仕上がり
ジャージー素材のスーツは、ONLYの既製スーツでも不動の人気だが、ついにオーダースーツにも採用されたのである。
ドレッシーな雰囲気を持ちつつ、カジュアルな動きやすさを兼ね備えた新感覚の生地といえる。
なぜ高機能生地を開発できるのか?
ではONLYはなぜ、これほどまでに機能性とコストパフォーマンスを両立した生地を開発できるのか?
それはひとえに生地の仕入れから生産まで、すべてを自社でコントロールしているからである。
- 国内外の織物産地・生地メーカーと直接取引
- 直接取引によって中間業者を排除し、コストを大幅に削減。
- 大量発注によってONLY側の交渉力が増し、細かな仕様の調整や独自開発が可能に。
- 自社工場「オンリーファクトリー」の存在
- 仕入れた生地を実際に検査・試験し、品質を徹底管理。
- 試作品をスピーディーに仕立て、産地やメーカーと改良を重ねながら最適な生地を実現。
この一貫体制により、ONLYは「高機能×高品質× 高コスパ」のオリジナル生地を生み出し続けている。
オリジナル生地はONLYでしか手に入らないこととも相まって、シーズン限定品などは早期に完売することも珍しくないという。
機能性を高める有料オプション
ONLYでは、スーツの快適性やメンテナンス性を向上させるため、「インビジブルファンクション」「空仕立て」「ホームウォッシュ仕様」 などの有料オプションも用意している(価格は2025年2月時点)。
インビジブルファンクション(税抜 5,000円)
スーツの外観を損なうことなく、快適性を向上させる隠れたディテールのこと。
- ウエストベルト部分の裏側に伸縮する芯地を内蔵し、約3~4cmの伸縮を実現 → 長時間の着用でもウエスト周りが快適。
- パンツのセンターライン(クリース)に特殊樹脂加工を施し、折り目を半永久的にキープ → アイロン掛け不要で、いつでも端正な印象をキープ。
空仕立て(税抜 10,000円)
スーツの内部には通常「芯地」と呼ばれる補強材が入っている。
ONLYは独自の「空(くう)」という超軽量縫製技術を採用し、その芯地を最小限に抑えることで驚異的な軽さを実現。
- 軽量かつ柔らかく、長時間着ても疲れにくい
- まるでカーディガンのような着心地で、リラックスしたフィット感
ホームウォッシュ仕様(税抜 5,000円)
ONLYの既製スーツで人気の「ホームウォッシュ」を、オーダースーツにも適用可能に。
- 自宅の洗濯機で洗えるため、クリーニング不要
- 速乾性が高く、常に清潔な状態を保てる
ONLYのオーダースーツは、ただサイズの合う「オーダー」ではなく、快適さ・機能性・実用性を極限まで追求した一着となる。ビジネスシーンでの快適さを求める人にとって、的を射た選択肢といえるだろう。
特徴5.既製スーツを参考にできる
既製とオーダーの双方に注力
ONLYがスーツ専門店として一線を画す理由のひとつに、既製スーツとオーダースーツの両方に注力している点が挙げられる。
ONLYの店舗では、常時500~1,000着の既製スーツを取り扱っており、これがオーダースーツを仕立てる際の「参考モデル」として機能するのだ。



オーダースーツは、自分だけの一着をつくれる魅力がある反面、生地選びからディテールのカスタマイズまで、数多くの選択肢に直面する。
- 生地の選択(色や柄、質感、機能性など)
- モデルの選択
- ラペル(襟)の形状
- フロントボタンの数やデザイン
- ジャケット背面のベント(スリット)の仕様
- 袖口のボタン処理やデザイン
- 裏地の色や柄の選定
オーダースーツに慣れた人なら、この選択のプロセスを醍醐味の1つとして楽しめるが、初心者にとっては決して簡単ではない。
どの組み合わせが理想の一着になるのか、具体的なイメージが湧きにくいことも多い。
ところがONLYでなら、店舗で扱う既製スーツに目をやりながら選ぶことができる。
実際の完成イメージを確認できるため、オーダーの不安が軽減され、より納得感のある選択が可能となるのだ。
既製スーツを参考にするメリット
メリット①:生地の仕上がりがわかる
生地のサンプルだけでは、実際にスーツとして仕立てたときの光沢感・柄の出方・生地の厚みなどが分かりにくい。
- 「この生地でスーツを仕立てたら、どんな雰囲気になるのか?」
- 「光の当たり方で色合いはどう変化するのか?」
- 「生地のハリやドレープ感(落ち感)はどの程度なのか?」
こうしたポイントを、既製スーツの実物を見ながら確かめられるのは大きなメリットといえるだろう。
メリット②: オプションデザインの確認
オーダースーツでは数々の無料や有料のオプションを選ぶことによって、細かいディテールを決めていくステップを踏む。
- 「ラペルの形状によって、スーツの印象はどう変わるのか?」
- 「フロントボタンの数や配置によって、バランスはどう見えるのか?」
- 「ベントの種類で動きやすさに違いはあるのか?」
これらは、平面のデザインサンプルだけではなかなかピンとこないことも多い。
しかし、既製スーツを手に取って、実際のフォルムやディテールを立体的に確認ができれば、理想のスーツ像がより明確になるだろう。
メリット③: サイズ感の感触をつかむ
実際の採寸はゲージ服を試着したうえで行うが、その手前で既製スーツに袖を通し、どこがネックになるのかの感触を得ることもできるだろう。
「どのくらいのサイズ感やフィット感がストライクゾーンなのか」 という点は、試着してみないと分かりにくい。
- 「肩幅はどの程度ジャストなほうがいいのか?」
- 「ウエストのシェイプを強めると、どういう印象になるのか?」
- 「袖丈や着丈の長さによって、どう全体のバランスが変わるのか?」
既製スーツを試着することで、自分の体型に最適なサイズ感のおおよその目安をつかむことができる。
もちろん、既製スーツなのでサイズがぴったりとはいかない。
しかし、「もう少しタイトなほうがいい」「動きやすさを優先したい」などと事前に感触をつかんでおくことはできる。
その後にゲージ服を用いた詳細な採寸が続くが、その際の有効な道しるべとなり得るだろう。
既製スーツによる一種のリハーサル効果といえる。
オーダースーツは自分だけの一着を仕立てる楽しさがあるが、選択肢が多い分、初心者にとっては迷いが生じやすい。
しかし、ONLYでは既製スーツを参考としながら、リアルな完成イメージを思い浮かべることができるため、より納得のいく選択が可能となるのだ。
「想像ではなく、実物を見ながら選べる」——ONLYが「既製×オーダー」の両輪で展開することによって生まれた、他のブランドにはない強みといえる。
ONLY——半世紀の研鑽が、今に活きる
本記事では、スーツブランド「ONLY」のオーダースーツに焦点を当て、その魅力を紐解いてきた。
公式サイトでうたわれる「高品質」「精緻な採寸技術」「優れたコストパフォーマンス」は決して誇張ではなく、実際のユーザー評価やブランドの歩みからも、その確かな実力がうかがえる。
ONLYのものづくりの根底には、マスターテーラー・中西浩一氏の思想が息づく。
半世紀以上にわたる研鑽がオーダースーツの随所に結実し、初心者からリピーターまで多くの支持を集めているのだ。
オリジナル生地の開発、機能性の追求、自社工場による品質管理——。
ONLYは、伝統に安住することなく、革新を続けている。
その歩みは、これからどのような進化を遂げるのか?
ONLYが切り拓く 「次のオーダースーツのスタンダード」 を、これからも見届けていきたい。