チョコモナカジャンボの人気理由 大きさやパリパリだけじゃない

森永製菓 チョコモナカジャンボ
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50年もの歴史を刻むモナカアイスの金字塔

ここ日本でモナカアイスといえば、多くの人の頭の中に浮かぶのは森永製菓のチョコモナカジャンボだろう。

名称を正確には言えないないまでも、「ジャンボモナカ」ぐらいまでなら口をついて出てくるはずだ。

後述するが、実はこの「ジャンボ」と「モナカ」がセットで思い浮かぶことが同ブランドの強さの源泉でもある。

チョコモナカジャンボは1972年の発売から50年以上も続くロングセラーブランド。

森永製菓は「チョコボール」や「ハイチュウ」など息の長い人気ブランドをいくつも抱えているが、単品ではチョコモナカジャンボが同社トップの売上げを誇る。

さらにここ20年、右肩上がりの伸長が続いているという。

昨今はワンハンドで食べられる利便性も見直され、売行きを後押ししているようだ。

チョコモナカジャンボがあまりに有名なため、モナカアイスでは他のブランドがかすんでしまうが、実はロッテアイスや森永乳業などからも人気ブランドが発売されている。

コンビニエンスストアのPB商品も含めると意外に選択肢が多いのだ。

そんな中にあって、チョコモナカジャンボはモナカアイスの約半分のシェアを握るという。

森永製菓の公式サイト「チョコモナカジャンボの歴史」によれば、発売当初は「チョコモナカ」という名前だったようだ。

「チョコレートメーカーならではのアイスを!」との意気込みから開発され、モナカの内側にチョコスプレーをして中にバニラアイスを詰めたとある。

表面の凹凸のある形状は板チョコをイメージしたという。

モナカの凹凸が18山

1980年には名前を「チョコモナカデラックス」に改め、バニラアイスの真ん中にチョコレートソースを入れて高級感を押し出す。

その後、1996年には従来の1.5倍もの大容量にし、名前も今に続く「チョコモナカジャンボ」となる。

アイスの中のチョコがソースから歯ごたえのある板チョコに変わったり、モナカの凹凸が18山(3列×18ブロック)になったりしたのもこのタイミングからだ。

「鮮度マーケティング」が生んだパリパリッの食感

では、チョコモナカジャンボはなぜ、圧倒的なシェアを握るブランドになれたのか?

最大の要因はモナカのパリパリッとした食感だろう。

中の板チョコともあいまって、出来立てのような歯ごたえが楽しめるのだ。

これは並々ならぬ森永製菓のこだわりから実現されており、同社はその取り組みを「鮮度マーケティング」と呼んでいる。

もともとチョコモナカジャンボはモナカの皮がフニャフニャにならないよう、アイスとモナカの間にチョコをコーティングしている。

しかし、それだけでは飽き足らず、森永製菓は食感が損なわないうちに消費者に届くよう、工場での製造から出荷までを5日以内に抑えることを目指している。

この鮮度へのこだわりは家庭用アイスでは異例のことらしい。

そもそもアイス業界には賞味期限という概念はなく、冬場から作りだめし、夏場の最需要期に備えることも多いという。

一方、森永製菓では抱える在庫を極力少なくし、生産したら速やかに出荷する体制を整えてきた。

小刻みに需要予測を立てて生産量を微調整する手間をすすんで負ったのだ。

予測の精度を高めるために日本気象協会と連携もしているという。

売行きが気温など気象状況と強く連動するためである。

パッケージにも「パリパリッ!」との表示があるが、この独特の食感が癖になるという人も大勢いるだろう。

その食感がブランドのエッジとなって、「何かアイスでも食べよう」と思ったときにチョコモナカジャンボが候補として頭に思い浮かびやすくなる。

もちろん、家庭用アイスの選択肢は数多く消費者の好みも分かれるため、チョコモナカジャンボとて百戦連勝ではない。

それでも消費者から選ばれる勝率がわずかでも上回れば、その僅差が小売店の取り扱いでは雲泥の差となる。

アイスクリーム売り場は常に激戦区カップアイスやスティックアイス、モナカアイスなど各ジャンルからトップクラスのブランドしかその座を仕留めることができない。

競り負ければ売り場から消える運命にあるのだ。

チョコモナカジャンボを店頭でよく見かけるようになると、その「見かける」という事実だけでよいブランドだと好意的に捉える人も世の中には一定数いるものだ。

そのためブランド力に拍車がかかり、下位ブランドとの格差はますます広がることになる。

食感にこだわり差別化に腐心した森永製菓の作戦勝ちといえよう。

トップブランドの必要条件とは?

一方で、この食感以外にも、チョコモナカジャンボの強さを支えた副次的要因がいくつかある。

パリパリッとした食感がロングセラー化の十分条件なら、それらは基本的な必要条件といえるだろう。

その一つに、チョコモナカジャンボの味わいをバニラとチョコレートに絞ったことがある。

ストロベリーやブルーベリーといったフレーバー展開には走らなかった。

チョコモナカジャンボはチョコモナカジャンボのまま、軸足がぶれることもなく、王道のブランドらしいたたずまいを消費者の記憶に残すことになったのだ。

バニラとチョコレートという飽きの来ない味わいが購入者の間口を広げることにもつながっている。

チョコモナカジャンボは大容量ということもあって20~30代の男性をメインのターゲットに据えていたが、今では子どもからシニア世代まで幅広い年代層に人気があるという。

全方位にアピールできることもロングセラーブランドの重要な資質の一つだ。

バニラモナカジャンボという姉妹ブランドの存在も大きい。

2013年から全国発売されているが、ブランドを勢いづけた要因の一つだろう。

森永製菓の公式サイトによれば、バニラモナカジャンボはチョコをお休みしてバニラアイスをシンプルに楽しみたいときに最適なモナカアイスという位置づけのようだ。

とりわけ、60~70代のシニア世代から支持を得ており、購入者の間口を広げることにも一役買った。

その一方で、バニラモナカジャンボは他社ブランドへの流出を防ぐ役割も担う。

チョコのない、モナカとアイスだけの組み合わせなら他社にも人気ブランドがあるため、そんな他社ブランドになびこうとした顧客を、バニラモナカジャンボがあれば引き留めておけるのだ。

バニラモナカジャンボは昨今、関ジャニ∞(エイト)を起用したCMの効果もあって、売上げの伸び率ではチョコモナカジャンボを凌いでいるという。

2つのブランドが互いに引き立て合い、森永製菓が「ジャンボグループ」と呼ぶブランドトータルの存在感を今後も高めていくことになるだろう。

ジャンボモナカというブランドの器(うつわ)

そしてチョコモナカジャンボの躍進を底支えしてきたのが、冒頭でも触れた「ジャンボ」であり、「モナカ」であるという事実である。

まるでチョコモナカジャンボはチョコモナカジャンボだから売れたとでも言っているようでトートロジー(同義反復)のようだが、モナカアイスで大容量(=ジャンボ)というブランドの器が間違いなく奏功している。

モナカジャンボ、すなわち「大きなモナカ」という概念は極めてわかりやすく、「何たるブランドか」が誰でもイメージできる。

たとえば同じモナカアイスにロッテアイスの「モナ王」があるが、それと比べてもひねりがなく概念化がはるかに容易でその輪郭が瞬時に起ち上がる。

この瞬発力が大事だ。

それゆえ、チョコモナカジャンボはより注意を惹きつけやすく記憶にも残りやすくなるのだ。

さらにジャンボ、すなわち「大きい」という概念は無意識のうちに二項対立的な図式を呼び起こす。

二項対立的な図式

「大きい」がチョコモナカジャンボの専売特許だとすれば、残りのブランドはこぞって「小さい」グループに寄せてられてしまう。

人の認識が単純化を好むがゆえに起こる一刀両断で、両極の間にグラデーションは一切ない。

この現象は二価志向性(two-valued orientation)というらしい。

「大きい/小さい」のように、本来は2つの価値の間にグラデーションがある場合でも、人はあたかも相補的な関係(例:生きている/死んでいる)として捉えてしまう傾向があることをいう。

この二価志向性の加担もあって、チョコモナカジャンボは消費者の頭の中の陣取り合戦を余裕で制することができるのだ。

森永乳業の人気モナカアイスに「栗入りあずきモナカ」があるが、こちらもベタで概念としては分かりやすい。しかし、二項対立的な図式を引き寄せる力はない。

「栗」や「あずき」を認めるなら、「抹茶」「いちご」があってもいい。市場細分化の端緒を開くだけである。

チョコモナカジャンボの「ジャンボ」のように他のブランドからの干渉を抑え、自らを突出する存在にできるほど、人々の認識をゾーニングにするには至らないのだ。

ロングセラー化を導いた数々の英断

バニラとチョコレートという飽きの来ない味わいに絞ったこと、軸足がぶれて見えない範囲内でのラインエクステンション、そして大容量化に踏み切り、「ジャンボ」を名前につけたこと。

その積み重ねの結果、チョコモナカジャンボは人の注意を惹きつけ記憶に残りやすいブランドとなった。

森永製菓の的確な判断がチョコモナカジャンボを最強のロングセラーブランドへと導いたのだ。

もちろん、「鮮度マーケティング」の取り組みは森永製菓の大英断だろう。

パリパリッとした食感がもたらす、単なる量感を超えた大満足な食べ応え

「ジャンボ」であることの必然性を高め、その意味合いがより納得のいくものになった。

このあたりが、大容量を打ち出してもロングセラーにはなれなかったブランドとの最大の違いである。

チョコモナカジャンボの物語において「パリパリッ!」というの鮮度は間違いなく主人公であったが、脇を固める名優たちの抑えた演技もまた光っていた。

50年もの歴史を刻む同ブランドに、そんなロングセラーブランドの本質を見たような気がする。

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