シャー芯「uni(ユニ)」 なぜ、口コミやレビューで高評価なのか?

三菱鉛筆 シャープ替芯 uni
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三菱鉛筆から発売されたシャープペンの替芯「uni(ユニ)」が人気を集めている。

「書いた後に紙面が汚れる」「マーカーを引くと文字がにじんで汚れる」という経験を持つユーザーは少なくない。

そんな悩みに答え、ノートをキレイな状態に保つ利点を前面に打ち出したことが静かな反響を呼んだ。

ただし、「uni」はそれだけにとどまらない。

この機能的な便益を梃子(てこ)に勉強のモチベーションアップという体験価値の創出を狙ったのだ。

目次

ノートを汚さないシャープペン替芯が新登場

シャープペンの替芯市場に新たなヒット商品が生れようとしている。

2021年2月に発売された三菱鉛筆のシャープペン替芯「uni(ユニ)」だ。

日経クロストレンドの2021年8月30日 の記事によれば、売行きは好調で、同社の従来品より5倍以上も売れている店舗もあるという。

三菱鉛筆のシャープペン替芯には原材料にダイヤモンドを使用して折れにくく書き味もなめらかな「ユニ ナノダイヤ」がある。

「強い」「濃い」「なめらか」をうたう同社の人気商品だが、新商品のシャープ替芯「uni」は、そこに「汚れにくさ」をプラスしたという。

たしかにシャープペンで書くと、芯の粉でノートの紙面が不意に汚れてしまうことはある。

些細なことのようだが、神聖なノートを穢(けが)すようで決して気持ちのよいことではない。

気になる人は気になるだろう。

三菱鉛筆の商品情報サイトには、新商品の「uni」は独自成分の配合によって芯粉を紙面に強く密着させているとある。

そのため、紙面同士がすれ合ったり、手が触れたりすることで紙面が汚れるのが抑えられるという。

くっきり濃い文字が書け、それでいて筆記後のノートをキレイな状態に保てる

また、蛍光ペンなどのマーカーを引いても文字がにじみにくい。

勉強時に暗記ノートやまとめノートのように何度も見返すようなノートを作ることがあるが、そんな用途に最適なシャープペン替芯に仕上がったのだ。

13年ぶりの新商品、狙うは体験価値による差別化

三菱鉛筆の2021年1月18日付プレスリリースには、新商品の「uni」を開発するに至った経緯について触れられている。

シャープペンのメインのユーザーは学生や資格取得を目指す人たちだ。

そうしたユーザーが抱える不満を調べたところ、「書いた後に紙面が汚れる」「マーカーを引くと文字がにじんで汚れる」といった声が多く上がったという。

近年は、勉強へのモチベーションアップにつなげるため、勉強ノートをSNSへ投稿し、お互い見せ合う機会も増えている。

そこで三菱鉛筆は「紙面をキレイに保ちたいというニーズ」にど真ん中から応える新商品の投入に踏み切ったようだ。

同社が「uni」のような主力のブランドのもと、シャープペン替芯の新商品を発売するのは13年ぶりのことだという。

アマゾンのサイトでシャープペンの替芯と検索すれば、そのラインアップには三菱鉛筆以外にぺんてるやパイロットなどそうそうたる文具事務用品のメーカーが名を連ねる。

三菱鉛筆にとっては滅多にない新商品投入の機会だ。

付加価値を高めて、是が非でも差別化したいところだろう。

勉強のモチベーションアップを「uni」から

「uni」は「これからは、汚さない。」をキャッチフレーズに掲げる。

開発の経緯を読む限り、付加価値化のキーワードはさしづめ「モチベーションアップ」だろう。

ただし、ノートや筆記具など文房具のブランドがその特長訴求に向けて「勉強のモチベーションアップ」をテーマとすることは珍しくない。

たとえば、ゼブラのシャープペン、「デルガード」は細芯でも折れにくいという特長と掛け合わせ、「受験に折れるな。」と銘打つキャンペーンを実施している。

「デルガード」なら勉強やテスト中にシャープペンの芯が折れて集中力が途切れるのを防げる。

そんな商品の “守り神” 的な効果に着眼したのだろう。

ジョギングを始めるときの真新しいウェア

ジョギングを始めようとするとき、おしゃれなウェアやシューズを買い揃えたり、仕事で新しいプロジェクトが始まるときもスーツを新調したりすることがある。

いわゆる形から入ってモチベーションを高めるやり方だが、勉強と文房具も似た関係にある。

文房具は勉強に使う人が重要なターゲットであることは言うまでもない。

そんな人たちにとって勉強のよき相棒となり、「さぁ、やるぞ」といった景気づけにもなり得るのだ。

メーカーもよく心得ていて、そんな使用場面に呼応するように機能やデザインに創意工夫を凝らしてきた。

そしていつしか、文房具類はやる気にスイッチを入れるアイテムとして定着し始めたのだ。

「uni」も例外ではない。

勉強に励む人たちの微細な心理に目を向け、「汚れにくさ」という単なる機能的便益を超えた付加価値化の種を見い出している。

やる気は「風が吹けば桶屋が儲かる」式に

では「uni」の「ノートを見返すたびにキレイな状態で保たれている」という利点がどうユーザーのモチベーションアップにつながるのだろう? 

一見、「風が吹けば桶屋が儲かる」のように荒唐無稽にも思える。

どう回りまわって勉強への前向きな姿勢を引き出すようになるのだろうか?

やや説明が長くなるが、いったん「uni」のことは脇に置き、そのからくりを見ていこう。

実はこのあたりの心理的メカニズムはBJ・フォッグ博士著「習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法」に詳しい。

著者はスタンフォード大学の行動デザイン研究所の所長で、行動科学の知見をベースに20年かけて開発した「人間の行動を変える衝撃メソッド」を著作の中で惜しげなく披露している。

そのメソッドの要諦は、負担もなく今すぐにできることを「始めの一歩」として習慣にすることだ。

著者のBJ・フォッグ博士は、このシンプルな第一歩を「タイニー・ハビット(小さな習慣)」と呼ぶ。

そのささやかな習慣が、やがて、勉強やダイエットといった日々取り組まなければならない、より「大きな習慣」へ、雪だるま式に波及効果を及ぼしていく。

ここで重要なのは第一歩となる「タイニー・ハビット」を着実に続けること。

決して性急にならないことだ。

甘くみて急に難易度を上げたりせず、余裕でできると思えてもその小さな習慣をしばらく続ける。

より困難な大きな習慣へ抵抗なく向き合えるまで、自分の脳が書き換えられるのをゆっくりと時間をかけて待つのが鉄則だ。

目覚めの儀式が生活に好循環を生む

今日は素晴らしい日になる

BJ・フォッグ博士は著作の中で、自身の体験にもとづき、朝ベッドから起きて床に足をつけたら「今日は素晴らしい日になる」と声に出して言うことを奨めている。

やや気恥ずかしくも思えるその小さな習慣は、ポジティブな感情を生み、前向きな意欲を引き出す。

そして朝の時間帯に取り組むべき課題に対処する力を自身の内面に呼び込む。

その効用は朝の時間帯だけにとどまらない。

気持ちのよい一日のスタートが次第に仕事や生活全般にも好循環をもたらしていく。

かつてアサヒ飲料の缶コーヒー「ワンダ」が、朝に飲む缶コーヒー「ワンダ モーニングショット」で市場に大攻勢を仕掛けたことがある。

「朝の気付けの一杯の缶コーヒー」がそのコンセプトだ。

少なくともブランドの意図するところはBJ・フォッグ博士が主張するところと軌を一にするのだろう。

シャープペン替芯「uni」が狙うのもこの効果だ。

「何度見返してもキレイなノート」は見るだけでも気持ちがよい。

あたかも「よくできました」花丸スタンプをもらえたような感覚だ。

よくできました

ノートをキレイに保つだけではなく、「きちんとしている自分」というアイデンティティも保て、さらに気分が上がる。

そしてまた勉強ノートを見返そう、新たにつくってみようとやる気が芽生えてくるのだ。

「#勉強垢」でのノートの見せ合いが援軍に

そして、そんな替芯「uni」に心強い援軍となるここ数年のムーブメントがある。

それが前述のプレスリリースに触れられていた「勉強ノートをSNSへ投稿し、お互い見せ合う」ことの広がりだ。

その担い手の中心は勉強に励む学生や資格取得を目指す大人たちである。

インスタグラムやツイッターなどのSNSに「#勉強垢」や「#勉強垢さんと繋がりたい」といったタグを付けて投稿する。

志望校や取得する資格など目標の近い人たちとつながれるチャンスも十分にある。

たとえば同じ志望校の人たち同士でリアルな勉強ノートを見せ合うとしたら、たとえ匿名ではあってもお互いに大きな刺激となるだろう。

机に向かって勉強を頑張っている女の子

当然、見せることが前提のノートであればキレイな状態で保ちたい。

紙面が汚れていたり、マーカーを引いた文字がにじんでいたりはして欲しくないはずだ。

さらに、こうしたキレイに書かれたノートの露出の機会がSNS上で増えれば、バンドワゴン効果(周囲の評判を判断材料にする心理、いわゆる評判が評判を呼ぶこと)も期待できる。

SNSに勉強に関する投稿はしない人たちの間でも、「ノートは汚さない」ということが規範となって広がる可能性だってある。

そうなればノートを汚さない替芯「uni」の需要はますます大きくなるだろう。

恰好の文脈をテコに、ユーザーとの絆を築く

新商品は常にターゲットから注意を向けてもらい、その存在を記憶にとどめてもらわなければならない。

そのためには、この商品なら自分にどんないいことが起こるのか、具体的にイメージさせることだ。

その点で「uni」は既に、その独自スペックからターゲットに高揚感の伴う期待を抱かせる恰好の文脈を見つけている。

今の「uni」に求められるのは、その文脈のまっただ中にいる、より多くの人たちにその存在を知ってもらい(認知拡大)、実際に使ってもらうことだ(トライアル促進)

そしてできるだけ商品に愛着を持ってもらうことだ(愛着醸成)

「uni」は「勉強応援企画」と題したデジタルギフトキャンペーンを展開したが、それもユーザーを増やす取り組みの1つだろう。

このキャンペーンでは「SNS上でノートを見せ合うのに最適!」といったことは一切語らず、あくまで幅広く勉強を応援するというスタンスなのも好感が持てる。

ノートを汚さない替芯「uni」をSNS上でのノートの見せ合いに使うかどうかは、ユーザーの自主性に委ねるスタンスなのだろう。

好スタートを切ったとはいえ、替芯「uni」のロングセラーへの道は始まったばかり。

当然ながら、その特異な機能を追随する競合商品もやがて現れる。

その攻勢を無力化するほどの心理的な絆を「uni」がユーザーとどこまで築けるか? 

その関係の深化が新商品成功の鍵を握ることになりそうだ。

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