今回は『一方で』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『一方で』とはどんな性質の言葉か?
「一方で」は、複数の事柄や視点の関係を示しながら話を進めるための言葉である。
一見すると単純な表現だが、情報同士の結び付け方にはいくつかの側面がある。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「一方で」は、ある事柄を示しながら、それとは別の事柄や視点を併せて提示することを意味する言葉である。
対比、補完、並行する事実の提示などを含み、複数の情報を関係づけながら示す点に特徴がある。
実務では、比較なのか補足なのかといった情報の位置づけについて、認識のずれが生じることもある。
こうした性質を踏まえ、次章では「一方で」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『一方で』を品よく言い換える表現集
ここからは「一方で」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 比べて向きが逆と示すとき(対比)
『一方で利益率は低下している』など、対照的な事柄を並べて比較する際の言い換え。
- 他方
- 一方の事態を示した後に、もう一つの側面や立場を論理的に引き出す適した表現。
- 例:新規顧客の開拓に注力する。他方で、既存顧客のフォロー体制も並行して強化する。
- 一方の事態を示した後に、もう一つの側面や立場を論理的に引き出す適した表現。
- これに対し
- 前述の意見やデータとは異なる事実を提示し、違いを明確に比較する場面に向く。
- 例:Aプランは初期費用を抑えられる。これに対し、Bプランは運用保守の手厚さが特徴だ。
- 前述の意見やデータとは異なる事実を提示し、違いを明確に比較する場面に向く。
- 対照的に
- 二つの要素が持つ性質や状況の際立った違いを、客観的かつスマートに示す言葉。
- 例:製造部門の利益は拡大している。対照的に、販売部門の収益は横ばいの状態が続く。
- 二つの要素が持つ性質や状況の際立った違いを、客観的かつスマートに示す言葉。
- 反対に
- 予測される流れや前述の内容とは逆の事態を、端的に分かりやすく伝える表現。
- 例:上半期は受注が好調だった。反対に、下半期は市場全体の動きがやや鈍化している。
- 予測される流れや前述の内容とは逆の事態を、端的に分かりやすく伝える表現。
- 反面
- ある事柄が内包する表裏一体の性質のうち、もう一つの側面を提示する際に重宝する。
- 例:このシステムは拡張性が高い。反面、導入初期における詳細な設定に時間を要する。
- ある事柄が内包する表裏一体の性質のうち、もう一つの側面を提示する際に重宝する。
- 裏腹に
- 周囲の期待や当初の予想とは、全く逆の結果や状況が生じている状況を描く。
- 例:事前の入念な準備とは裏腹に、当日のシステム連携で予期せぬ不具合が発生した。
- 周囲の期待や当初の予想とは、全く逆の結果や状況が生じている状況を描く。
2-2. 別の角度を加えるとき(補完)
『一方で別の見方もできる』など、一つの結論に対して異なる観点を補う際の言い換え。
- 別の観点では
- 一つの結論にとらわれず、異なる切り口から物事を検証する姿勢を示すのに役立つ。
- 例:コスト面での議論が続いている。別の観点では、顧客満足度への効果も見逃せない。
- 一つの結論にとらわれず、異なる切り口から物事を検証する姿勢を示すのに役立つ。
- 別の側面では
- 物事の本質を見極めるために、これまで触れてこなかった要素を付け足す表現。
- 例:現行の運用には課題が多い。別の側面では、若手社員が経験を積む機会となる。
- 物事の本質を見極めるために、これまで触れてこなかった要素を付け足す表現。
- 異なる立場からは
- 顧客や他部署など、自分たちとは違う視点からの意見や状況を代弁する際に適する。
- 例:社内では合理化が歓迎されている。異なる立場からは、運用の懸念も上がっている。
- 顧客や他部署など、自分たちとは違う視点からの意見や状況を代弁する際に適する。
- 他面では
- 主たる議論の裏に隠れている事実や、見落としがちな影響を静かに補足する言葉。
- 例:この施策は生産性を向上させる。他面では、業務の属人化を防ぐ効果もある。
- 主たる議論の裏に隠れている事実や、見落としがちな影響を静かに補足する言葉。
- 多面的に見れば
- 部分的な評価を避け、総合的な判断を下すために視野を広げる表現として重宝する。
- 例:短期的な費用は膨らんでいる。多面的に見れば、将来への有望な投資だと言える。
- 部分的な評価を避け、総合的な判断を下すために視野を広げる表現として重宝する。
2-3. 同時に進む事実を示すとき(並行)
『一方で新規事業の準備も進んでいる』など、複数の事態が並行して進行している際の言い換え。
- 同時に
- 別々の事象がまさに同じタイミングで発生、あるいは展開している事実を伝える。
- 例:新商品の告知を開始した。同時に、特設サイトでのオンライン予約も受け付ける。
- 別々の事象がまさに同じタイミングで発生、あるいは展開している事実を伝える。
- 並行して
- 二つのプロジェクトや実務を、同じ期間内に同時進行させている実務に最適な言葉。
- 例:メイン機能の開発を進める。並行して、実務マニュアルの作成も進める方針だ。
- 二つのプロジェクトや実務を、同じ期間内に同時進行させている実務に最適な言葉。
- その反面
- 一つの行動がもたらすポジティブな影で、同時に発生している課題を伝える表現。
- 例:テレワークは業務を効率化させる。その反面、社内の雑談の機会が減少している。
- 一つの行動がもたらすポジティブな影で、同時に発生している課題を伝える表現。
- 傍ら(かたわら)
- 中心となる業務を実直を行う傍らで、別の活動も持続的に行う様子を表す。
- 例:開発部門の責任者を務める傍ら、社内の技術倫理委員会の運営にも携わっている。
- 中心となる業務を実直を行う傍らで、別の活動も持続的に行う様子を表す。
- 時を同じくして
- 異なる環境や文脈における出来事が、同じ時期に重なったことを知的に表現する。
- 例:社内改革のプロジェクトが始動した。時を同じくして、外部の市場環境も激変した。
- 異なる環境や文脈における出来事が、同じ時期に重なったことを知的に表現する。
3.まとめ:『一方で』が映し出す複眼的な視点
「一方で」は、対比だけでなく、別の観点の補足や並行する事実の提示まで担う表現である。
言葉を置き換えることで、情報同士の関係や思考の方向性を、より明瞭に伝えられるようになるだろう。

