今回は『なお』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『なお』とはどんな性質の言葉か?
「なお」は、文章や会話の中で情報を付け加える場面でよく使われる言葉である。
一方で、前の内容を補足しているのか、条件を添えているのかによって役割の受け取られ方が変わりやすい。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「なお」は、すでに述べた内容に対して追加の情報や条件、補足事項を言い添えることを意味する。
接続詞として用いられる場合は話題を補い、副詞として用いられる場合は程度の上昇や状態の継続を表す特徴がある。
実務では、補足なのか注意喚起なのかが明確でないまま使われることもあり、読み手によって受け取り方に差が生じる場合もある。
こうした性質を踏まえ、次章では「なお」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『なお』を品よく言い換える表現集
ここからは「なお」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 情報をひとつ足すとき(付加)
『なお、詳細は〜』など、主文の後に別の関連事項を自然に書き添える際の言い換え。
- 加えて
- 主文と並列の新しい事実や要素を、論理的なつながりを持たせてスマートに提示する際に好適。
- 例:新商品の特徴を説明した。加えて、他社製品との明確な違いについてもデータを提示する。
- 主文と並列の新しい事実や要素を、論理的なつながりを持たせてスマートに提示する際に好適。
- あわせて
- 主文の事柄と同時に、または関連して確認・対応してほしい事項を品よく並列させる表現。
- 例:最新の契約書を送付いたします。あわせて同封の確認シートの返送をお願いします。
- 主文の事柄と同時に、または関連して確認・対応してほしい事項を品よく並列させる表現。
- さらに
- 既存の情報にとどまらず、もう一歩踏み込んだ重要な内容を文脈に乗せて補足する定番の語。
- 例:今期の売上予測を報告する。さらに来期に向けた新規事業の進捗状況も共有する。
- 既存の情報にとどまらず、もう一歩踏み込んだ重要な内容を文脈に乗せて補足する定番の語。
- そのうえ
- 前述の事柄に、読者にとって有益な情報や判断材料を重ねて提示し、説得力を高める表現。
- 例:初期費用の低さを提示した。そのうえ、保守管理のサポート体制も万全だと付け加えた。
- 前述の事柄に、読者にとって有益な情報や判断材料を重ねて提示し、説得力を高める表現。
- ちなみに
- 主文に直接の影響は与えないものの、知っておくと役立つ有益な背景や参考情報を添える語。
- 例:今週の役員会議は中止となった。ちなみに来週の定例会議は予定通りに開催する。
- 主文に直接の影響は与えないものの、知っておくと役立つ有益な背景や参考情報を添える語。
- ご参考までに
- 相手の判断を助ける材料を、押し付けがましさを完全に排除して洗練された形で提示する表現。
- 例:市場動向の調査書を作成した。ご参考までに昨年度の推移表を添付データで共有する。
- 相手の判断を助ける材料を、押し付けがましさを完全に排除して洗練された形で提示する表現。
- 申し添えると
- 相手の誤解を防ぐための配慮や、知っておくべき前提条件をへりくだりつつ的確に付け足す語。
- 例:仕様変更の件は承諾した。申し添えると、納期への影響は一切ないと確認済みである。
- 相手の誤解を防ぐための配慮や、知っておくべき前提条件をへりくだりつつ的確に付け足す語。
- 付言(ふげん)すると
- 口頭や文書で、これまでの説明に知的な補足やおまけの視点をさりげなく添えるプロの表現。
- 例:現行の運用プランを継続する。付言すると、将来的な刷新の余地も残してある。
- 口頭や文書で、これまでの説明に知的な補足やおまけの視点をさりげなく添えるプロの表現。
2-2. 注意・条件をひとつ添えるとき(但書)
『なお、対象者は〜』など、補足として制限や留意事項を差し挟む際の言い換え。
- ただし
- 前述した原則に対し、実務上の明確な例外や制限、必須の注意点を論理的に提示する定番の語。
- 例:全社員に新しい端末を支給する。ただし事前のセキュリティ研修への受講を必須とする。
- 前述した原則に対し、実務上の明確な例外や制限、必須の注意点を論理的に提示する定番の語。
- もっとも
- 前言を完全に否定せず、部分的な修正や補足、現実的な留保条件を穏やかに付け足す表現。
- 例:現行の計画案で進める方針だ。もっとも予算の進捗次第で一部変更の可能性はある。
- 前言を完全に否定せず、部分的な修正や補足、現実的な留保条件を穏やかに付け足す表現。
- とはいえ
- 前述の事実を一度受け入れつつも、見落とせない懸念点や現実的な課題を冷静に指摘する語。
- 例:新規契約件数は大幅に伸びた。とはいえ顧客対応の現場では人員不足が深刻化している。
- 前述の事実を一度受け入れつつも、見落とせない懸念点や現実的な課題を冷静に指摘する語。
- 一方で
- 一つの事象に対し、多角的な視点や相反する別の重要な状況を並列して冷静に提示する表現。
- 例:業務の効率化は大幅に進んだ。一方で社内のコミュニケーション減少を懸念する。
- 一つの事象に対し、多角的な視点や相反する別の重要な状況を並列して冷静に提示する表現。
- 念のため
- 万全を期すための確認や、ミスの発生を未然に防ぐための配慮を上品にアピールする定番語。
- 例:明日の商談資料は既に印刷した。念のため電子データも共有ドライブへ格納する。
- 万全を期すための確認や、ミスの発生を未然に防ぐための配慮を上品にアピールする定番語。
- 付記(ふき)すると
- 文書の末尾などに、本文とは区別すべき実務上の詳細ルールや注記を格調高く言い添える表現。
- 例:セミナーの申し込みを開始する。付記すると定員に達し次第受付を終了する方針だ。
- 文書の末尾などに、本文とは区別すべき実務上の詳細ルールや注記を格調高く言い添える表現。
2-3. 程度をさらに上げるとき(強化)
『なお、尽力してまいります』など、意気込みや状態をさらに高める際の言い換え。
- 一層
- これまでの取り組みや状態の度合いを、さらに高いフェーズへと格調高く引き上げる定番語。
- 例:組織体制の刷新を決定した。今後は意思決定の速度を一層高める構えである。
- これまでの取り組みや状態の度合いを、さらに高いフェーズへと格調高く引き上げる定番語。
- いっそう
- 状況の変化や時間の経過に伴い、感情や事態の度合いが目に見えて深まる様子を伝える表現。
- 例:競合の参入により市場競争は激化した。自社サービスの独自性をいっそう強化する。
- 状況の変化や時間の経過に伴い、感情や事態の度合いが目に見えて深まる様子を伝える表現。
- 一段と
- 他との比較や以前の状態に比べ、進展の度合いが明らかに一段上のレベルへ達したことを示す。
- 例:デジタル技術の導入が進んだ。その結果として業務の処理能力は一段と向上した。
- 他との比較や以前の状態に比べ、進展の度合いが明らかに一段上のレベルへ達したことを示す。
- より一層
- 現在の良好な状態に満足せず、さらに高い目標や決意を持って事態を進める意志を示す表現。
- 例:多くのご期待の声をいただいた。信頼に応えるべくサービスの品質向上へより一層励む。
- 現在の良好な状態に満足せず、さらに高い目標や決意を持って事態を進める意志を示す表現。
- ひときわ
- 周囲の状況や他の要素と比べても、その優れた状態や成果が鮮やかに際立っている様子を表す。
- 例:多くの提案が並ぶ会議室で、彼女の構築した事業モデルはひときわ異彩を放っていた。
- 周囲の状況や他の要素と比べても、その優れた状態や成果が鮮やかに際立っている様子を表す。
- なおさら
- 特定の条件が加わることで、元々そうであった状態の度合いがさらに加速する様子を指す。
- 例:事前の準備が不足していた。突発的なトラブルへの対応はなおさら困難を極めた。
- 特定の条件が加わることで、元々そうであった状態の度合いがさらに加速する様子を指す。
2-4. 状態がそのまま続いているとき(継続)
『なお健在だ』など、過去からの状況が変化なく維持されている際の言い換え。
- 依然として
- 時間が経過したり対策を講じたりしたものの、状況が変わらずに続いている様を客観的に示す。
- 例:抜本的な対策を講じた。しかし市場における不確実性は依然として解消されていない。
- 時間が経過したり対策を講じたりしたものの、状況が変わらずに続いている様を客観的に示す。
- 引き続き
- 過去から現在、そして未来へ向けて、良好な取り組みや方針を途切れさせずに維持する表現。
- 例:新規プロジェクトは軌道に乗った。今後もチームの連携を維持しつつ引き続き注力する。
- 過去から現在、そして未来へ向けて、良好な取り組みや方針を途切れさせずに維持する表現。
- 今なお
- 過去に発生した出来事の影響や状態が、現在になっても衰えず根強く残っている様子を表す。
- 例:数年前の大規模な組織改編の余波は、現場の業務フローに今なお影響を与えている。
- 過去に発生した出来事の影響や状態が、現在になっても衰えず根強く残っている様子を表す。
- 現在も
- 過去からの取り組みが一時的なものではなく、現時点でも変わらず機能している事実を伝える。
- 例:創業時に掲げた顧客第一の理念は、私たちの行動指針として現在も息づいている。
- 過去からの取り組みが一時的なものではなく、現時点でも変わらず機能している事実を伝える。
3.まとめ:『なお』に潜む複数の働きを捉える
「なお」は追加・補足・条件提示・強調など、異なる働きを一語で受け持つ便利な言葉である。
場面に応じた言い換えを知ることで文章の意図がより明確になり、伝えたい内容も過不足なく届きやすくなるだろう。

