今回は『例えば』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『例えば』とはどんな性質の言葉か?
「例えば」は、具体例を添えて説明を補う場面でよく使われる言葉である。
一方で、例示なのか比喩なのか、あるいは仮定なのかが文脈によって揺れやすく、受け手ごとに捉え方が分かれることもある。
まずは、この語の輪郭を大づかみに整理しておきたい。
意味のコア
「例えば」は、ある内容をわかりやすく伝えるために、別の事例や仮の状況を引いて示すことを意味する。
具体例の提示だけでなく、比喩や仮定の導入にも用いられ、文脈によって働きが変化しやすい点に特徴がある。
実務では、補足として使われているのか、具体的なケースを示しているのかによって、受け取り方に差が生じる場合もある。
こうした性質を踏まえ、次章では「例えば」を言い換える際に使える表現を整理する。
2.『例えば』を品よく言い換える表現集
ここからは「例えば」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 別のものを引いて示すとき(例示)
『例えばこれがある』など、具体的な事例を挙げて情報の解像度を高める際の言い換え。
- 一例を挙げると
- 多くの選択肢の中から、代表的な一つをピックアップして紹介する際に重宝する。
- 例:弊社の強みは多岐にわたるが、一例を挙げると独自の物流網による即日配送がある。
- 多くの選択肢の中から、代表的な一つをピックアップして紹介する際に重宝する。
- 具体的には
- 抽象的な方針を、実際の行動や目に見える数値などの具体策へ落とし込む際に適する。
- 例:働き方改革を推進する。具体的には、コアタイムのないフルフレックス制を導入した。
- 抽象的な方針を、実際の行動や目に見える数値などの具体策へ落とし込む際に適する。
- 〜を例に引くと
- 過去のデータや他社の成功事例を引用し、主張の裏付けとして具体例を示す際に用いる。
- 例:前期のキャンペーンを例に引くと、動画広告の導入が成約率の向上に寄与している。
- 過去のデータや他社の成功事例を引用し、主張の裏付けとして具体例を示す際に用いる。
- 典型的には
- その事象において「よくあるケース」を具体例として提示し、理解を促す際に有効である。
- 例:機材トラブルは、典型的には日常的なメンテナンスの不足によって引き起こされる。
- その事象において「よくあるケース」を具体例として提示し、理解を促す際に有効である。
- 代表的なところでは
- 網羅的な説明を避け、誰もが知る主要な具体例から優先的に提示する際に向く。
- 例:当社の技術は身近な製品に使われており、代表的なところではスマートフォンの基板がある。
- 網羅的な説明を避け、誰もが知る主要な具体例から優先的に提示する際に向く。
- 顕著な例としては
- 数ある事例の中でも、特に目立った成果や変化が見られる具体例を強調する際に適する。
- 例:地域活性化の顕著な例としては、廃校を活用したこの宿泊施設の成功が挙げられる。
- 数ある事例の中でも、特に目立った成果や変化が見られる具体例を強調する際に適する。
- 象徴的なのが
- その事象の本質や特徴を、最も鮮明に表している具体例を一つ提示する際に用いる。
- 例:顧客志向への転換が進んでいる。象徴的なのが、相談窓口の刷新である。
- その事象の本質や特徴を、最も鮮明に表している具体例を一つ提示する際に用いる。
2-2. 同じ話をほぐして伝えるとき(補足)
『例えばこういうことだ』など、相手の理解を助けるために「噛み砕いた例」を補う際の言い換え。
- 具体的に言うと
- 概念的な説明の後に、実務上の動きがイメージできる「具体的な作業例」を添える際に重宝する。
- 例:管理業務を効率化する。具体的に言うと、承認印を廃止して電子決済へ移行した。
- 概念的な説明の後に、実務上の動きがイメージできる「具体的な作業例」を添える際に重宝する。
- もう少し言えば
- 言葉足らずな部分を補い、より具体的なシチュエーションを例示して情報の精度を上げる。
- 例:子育て世帯の就業を支援する。もう少し言えば、育休後の復職支援制度を新設する方針だ。
- 言葉足らずな部分を補い、より具体的なシチュエーションを例示して情報の精度を上げる。
- 平たく言えば
- 専門外の相手に対し、身近な事象を例に出して本質を分かりやすく説明する際に適する。
- 例:このクラウドサービスは、平たく言えばネット上に自分専用の倉庫を持つようなものだ。
- 専門外の相手に対し、身近な事象を例に出して本質を分かりやすく説明する際に適する。
- 噛み砕いて言うと
- 難解な理論を、具体的なメリットや日常の動作に置き換えて例示する際の知的な表現。
- 例:サブスクリプションの仕組みを噛み砕いて言うと、初期費用を抑えて手軽に試せる形だ。
- 難解な理論を、具体的なメリットや日常の動作に置き換えて例示する際の知的な表現。
2-3. 仮の話として先を示すとき(仮定)
『例えばこうなったら』など、不確定な状況を「仮の具体例」として想定する際の言い換え。
- もし仮に
- 可能性が低い事態や、あえて厳しい条件を「例え話」として設定し、議論を深める。
- 例:もし仮に資材の調達が滞った場合でも、予備の在庫で一ヶ月は稼働を維持できる。
- 可能性が低い事態や、あえて厳しい条件を「例え話」として設定し、議論を深める。
- 仮に申し上げると
- 相手の気分を害さないよう配慮しつつ、「もし〜という例があるなら」と前提を置く表現。
- 例:検討段階ではあるが、仮に申し上げると、新規事業の拠点を福岡に置く案がある。
- 相手の気分を害さないよう配慮しつつ、「もし〜という例があるなら」と前提を置く表現。
- 一つのケースとして
- 決定事項ではなく「数ある可能性の一例」として提示し、検討の幅を広げる際に適する。
- 例:一つのケースとして、繁忙期のみ外部の専門チームに業務を委託する選択肢がある。
- 決定事項ではなく「数ある可能性の一例」として提示し、検討の幅を広げる際に適する。
2-4. 印象的にたとえるとき(比喩)
『例えば〜のようだ』など、他の物事になぞらえて「例え話」を展開する際の言い換え。
- いわば
- 目の前の状況を、誰もが知る別の事象に置き換えて「例え」を提示する際の定番。
- 例:この新サービスは、経営者にとってのいわば羅針盤のような役割を果たす。
- 目の前の状況を、誰もが知る別の事象に置き換えて「例え」を提示する際の定番。
- 〜にたとえるなら
- 抽象的なビジネス上の立ち位置を、乗り物や役割などに置き換えて具体的にイメージさせる。
- 例:現在の我々の立ち位置を登山にたとえるなら、ようやく五合目に到達した段階だ。
- 抽象的なビジネス上の立ち位置を、乗り物や役割などに置き換えて具体的にイメージさせる。
- 言ってみれば
- 複雑な提携関係や戦略を、直感的に理解しやすい「例え」で表現し直す際に重宝する。
- 例:この業務提携は、言ってみれば双方の弱点を補い合うパズルのようなものだ。
- 複雑な提携関係や戦略を、直感的に理解しやすい「例え」で表現し直す際に重宝する。
- さながら
- 現場の様子が、まるで別の何かのようであると、具体例を持って臨場感豊かに描写する。
- 例:新店オープンの様子は、さながらお祭りのような活気に満ちあふれていた。
- 現場の様子が、まるで別の何かのようであると、具体例を持って臨場感豊かに描写する。
3.まとめ:『例えば』を分解して説明力を磨く
「例えば」は一語で例示・補足・仮定・比喩まで担える便利な語だが、その内側には説明の方向を調整する複数の働きが含まれている。
場面に応じて言い換えを選ぶことで、伝えたい焦点や論理の流れも、より自然に伝わっていくだろう。

