今回は『選ぶ』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『選ぶ』とはどんな性質の言葉か?
「選ぶ」は日常からビジネスまで幅広く使われる一方で、どのような基準や立場で決めたのかが見えにくくなりやすい語である。
まずは、この言葉が持つ性質を整理しておきたい。
意味のコア
「選ぶ」は、複数の対象の中から一つ、あるいはいくつかを決定する行為を示す語である。
その過程には、比較・評価・整理・決定といった複数の側面が重なり、文脈によって示す範囲が揺れやすい性質を含む。
なぜ、人は「選ぶ」の言い換えを探すのか?
実務では、「選ぶ」と書くだけでは、どれほど吟味したのか、誰の判断なのかが十分に伝わらないことがある。
軽く決めた印象を与えるおそれもあり、責任や重みが曖昧に映る場面も少なくない。
さらに文章内で繰り返すと、思考のプロセスが平板に見えるという課題も生じる。
こうした揺れを整える視点を、次章で示していく。
2.『選ぶ』を品よく言い換える表現集
ここからは「選ぶ」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 複数から一つを決めるとき(選択)
- 選択する
- 提示された複数の案から、自身の判断で最善の一手を取り出す基本の表現。
- 例:現地の輸送コストを最優先し、鉄道による物流ルートを選択した。
- 提示された複数の案から、自身の判断で最善の一手を取り出す基本の表現。
- 選定する
- 一定の基準に基づき、客観的な妥当性をもって対象を定める場面に適する。
- 例:弊社は製品の安全性を重視し、国内有数の部品メーカーを選定した。
- 一定の基準に基づき、客観的な妥当性をもって対象を定める場面に適する。
- 絞り込む
- 多くの候補を精査し、最終決定に向けて段階的に数を減らす際に向く。
- 例:市場調査の結果を受け、広告展開の対象を首都圏の20代に絞り込んだ。
- 多くの候補を精査し、最終決定に向けて段階的に数を減らす際に向く。
- 決定する
- 議論や検討を経て、最終的な結論や意思を確定させる際として扱われる。
- 例:理事会は収益改善に向け、不採算部門の売却方針を正式に決定した。
- 議論や検討を経て、最終的な結論や意思を確定させる際として扱われる。
- 取捨選択する
- 必要なものを取り、不要なものを捨てるという明確な意志を示す表現。
- 例:限られた予算内で最大の効果を出すべく、実施施策を取捨選択した。
- 必要なものを取り、不要なものを捨てるという明確な意志を示す表現。
- 選び取る
- 多くの可能性の中から、信念を持って自律的に決定する姿勢を示す。
- 例:彼は安定した地位を捨て、挑戦の機会が多い新規事業への道を選び取った。
- 多くの可能性の中から、信念を持って自律的に決定する姿勢を示す。
2-2. 比べて適否を見極めるとき(判断)
- 見極める
- 対象の本質や適否を鋭く見抜き、誤りのない決断を下す場面に使われる。
- 例:投資家は事業計画の実現性を鋭く見極め、出資の是非を判断している。
- 対象の本質や適否を鋭く見抜き、誤りのない決断を下す場面に使われる。
- 見定める
- 事態の推移や真偽を慎重に確認し、将来の方向を確定する際に使われる。
- 例:経営陣は新技術の普及率を冷静に見定め、設備投資の時期を計った。
- 事態の推移や真偽を慎重に確認し、将来の方向を確定する際に使われる。
2-3. 優れたものを選り抜くとき(抽出)
- 厳選する
- 厳しい基準を設け、一切の妥協なく最良のものを少数選ぶ姿勢を示す。
- 例:弊社は原料を厳選し、他社との差別化を図る最高級モデルを開発した。
- 厳しい基準を設け、一切の妥協なく最良のものを少数選ぶ姿勢を示す。
- 精選する
- 質が高いものの中から、さらに純度を高めるように慎重に抜き出す際に向く。
- 例:企画案の中から精選された数点のみを、最終プレゼン資料に掲載した。
- 質が高いものの中から、さらに純度を高めるように慎重に抜き出す際に向く。
- 選り抜く
- 多数の選択肢から、際立って優れた対象だけを抽出する場面にふさわしい。
- 例:社内公募により選り抜かれた精鋭たちが、次世代プロジェクトを担う。
- 多数の選択肢から、際立って優れた対象だけを抽出する場面にふさわしい。
2-4. 必要なものだけ残すとき(選別)
- 選別する
- 種類や性質、優劣に基づいて対象を区別し、必要なものへ分ける際に向く。
- 例:物流センターでは、出荷基準に適合する良品のみを選別している。
- 種類や性質、優劣に基づいて対象を区別し、必要なものへ分ける際に向く。
- 峻別(しゅんべつ)する
- 混同しやすい二つの事象を、私情を排して厳格に切り分ける姿勢を示す。
- 例:担当者は事実と憶測を峻別し、顧客への報告内容から主観を排除した。
- 混同しやすい二つの事象を、私情を排して厳格に切り分ける姿勢を示す。
2-5. 組織で正式に決めるとき(選任・採択)
- 採択する
- 会議や公的な場で、提出された議案や案を「これにする」と認める場面に向く。
- 例:株主総会において、剰余金の配分に関する第一号議案を無修正で採択した。
- 会議や公的な場で、提出された議案や案を「これにする」と認める場面に向く。
- 採用する
- 人材や方法、提案などを組織の利益のために取り入れる判断を指す。
- 例:開発現場の負担軽減のため、外部コンサルタントが提案した新手法を採用する。
- 人材や方法、提案などを組織の利益のために取り入れる判断を指す。
- 選考する
- 資格や能力を審査し、候補者の中から適任者を特定する手続きとして扱われる。
- 例:二次面接の結果、指導力に長けた外部人材をマネージャー候補として選考した。
- 資格や能力を審査し、候補者の中から適任者を特定する手続きとして扱われる。
- 抜擢する
- 通例を破り、実力を高く評価して重要な役割や地位へ特別に選ぶ場面に適する。
- 例:経営層は若手の発想力を買い、入社三年の社員を新支店長に抜擢した。
- 通例を破り、実力を高く評価して重要な役割や地位へ特別に選ぶ場面に適する。
- 選任する
- 役職や職務を遂行する人物を、公式な手続きに則って選ぶ場面に使われる。
- 例:監査体制を強化するため、法務に精通した外部有識者を監事に選任した。
- 役職や職務を遂行する人物を、公式な手続きに則って選ぶ場面に使われる。
- 登用する
- 適性や才能を見込み、それに見合う地位や重要な任務に選び就ける際に向く。
- 例:女性管理職の比率向上を目指し、各部門で実績を上げたリーダーを登用した。
- 適性や才能を見込み、それに見合う地位や重要な任務に選び就ける際に向く。
2-6. 進む方向を定めるとき(志向)
- 志向する
- 自身の信念や価値観に基づき、あるべき姿や目標を定めて進もうとする表現。
- 例:当社は持続可能な成長を志向し、環境負荷の低い生産体制へ転換した。
- 自身の信念や価値観に基づき、あるべき姿や目標を定めて進もうとする表現。
- 方針を固める
- 組織やチームが目指すべき路線を協議し、確固たる合意を形成する際に向く。
- 例:自治体は観光資源の再開発を促進すべく、民間に運営を委託する方針を固めた。
- 組織やチームが目指すべき路線を協議し、確固たる合意を形成する際に向く。
- 舵(かじ)を切る
- 現状の路線を大きく転換し、新たな方向を「選ぶ」決断を比喩的に示す表現。
- 例:既存事業の停滞を受け、同社は海外市場への本格進出に大きく舵を切った。
- 現状の路線を大きく転換し、新たな方向を「選ぶ」決断を比喩的に示す表現。
2-7. じっくり吟味して決めるとき(吟味)
- 吟味する
- 質や内容が基準に叶っているか、時間をかけて深く検討して選ぶ際に向く。
- 例:法務部は契約書の条文を細部まで吟味し、将来のリスクを最小化した。
- 質や内容が基準に叶っているか、時間をかけて深く検討して選ぶ際に向く。
- 精査する
- 細部まで厳密に調査し、正確なデータに基づき判断を下す場面に適する。
- 例:提出された見積書を精査し、過剰な計上項目がないことを確認した。
- 細部まで厳密に調査し、正確なデータに基づき判断を下す場面に適する。
- 検討のうえ決める
- あらゆる条件を多角的に分析し、納得のいく判断に至るプロセスを示す。
- 例:複数のシステムを比較検討のうえ、拡張性に優れたクラウド型を決めた。
- あらゆる条件を多角的に分析し、納得のいく判断に至るプロセスを示す。
3.まとめ:『選ぶ』を精度高く使うために
『選ぶ』は、複数の対象から何かを決める行為を示す語である。
その働きには判断の過程や決定の重みなど複数の側面が重なり、文脈によって射程が揺れやすい。
前章で整理した観点に沿って語を選び直せば、説明の輪郭が整い、伝達の精度も自然に高まっていく。

