今回は『そのため』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。
目次
1.『そのため』とは何を指す言葉か?
まず押さえたい定義
「そのため」は、直前の事実・理由・状況を根拠として、後続の結果・結論・行動へと論理的につなぐ順接の接続表現を指す。
意味のコア
- 直前の内容を原因・根拠として受け取る
- 結果・結論・対応へ話を前に進める
- 因果関係をなだらかにつなぐ役割を持つ
使う際の注意点(誤解されやすいポイント)
- 因果が弱い場面で使うと、論理が飛んだ印象になる
- 結果・判断・依頼など異なる役割を一語で担うため、文脈によって曖昧に響きやすい
- フォーマルな文書では、語調が軽く感じられる場合がある
文脈ごとに求められる役割が異なるため、次章では用途に応じた言い換えを整理していきたい。
2.『そのため』を品よく言い換える表現集
ここからは「そのため」を、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を整理する。
2-1. 次の行動へつなぐ(段取り)
- そこで
- 状況を踏まえて、次の具体的な行動や施策へ自然につなぐ表現。
- 例:新規顧客の反応が鈍い。そこでオンライン施策を強化する方針としました。
- 状況を踏まえて、次の具体的な行動や施策へ自然につなぐ表現。
- これにより
- 施策や変更がどのような効果をもたらすかを説明するときに用いる。
- 例:サポート体制を24時間化しました。これにより海外ユーザーにも即応できています。
- 施策や変更がどのような効果をもたらすかを説明するときに用いる。
- このため
- 直前の事実を受けて、淡々と結果や対応を述べるフォーマルな表現。
- 例:想定以上に応募が集中しました。このため一次選考の通知が遅れております。
- 直前の事実を受けて、淡々と結果や対応を述べるフォーマルな表現。
2-2. 論理で結論を導く(判断)
- したがって
- 前提から論理的に結論を導く、レポートでも使える標準的な表現。
- 例:市場規模は縮小傾向です。したがって既存事業への追加投資は慎重に検討すべきです。
- 前提から論理的に結論を導く、レポートでも使える標準的な表現。
- よって
- 決定事項や方針を簡潔に示す、やや公式寄りの表現。
- 例:全社合意が得られました。よって来期から新評価制度を正式に導入いたします。
- 決定事項や方針を簡潔に示す、やや公式寄りの表現。
- ゆえに
- 前提と結論の結びつきを強調する、格調高い書き言葉寄りの表現。
- 例:データに偏りが見られる。ゆえに本結果のみで結論づけるのは適切ではありません。
- 前提と結論の結びつきを強調する、格調高い書き言葉寄りの表現。
2-3. 結果をはっきり示す(結果)
- その結果
- 取り組みや事象がもたらした結果を、事実として明確に示す表現。
- 例:研修内容を刷新しました。その結果、新人の定着率が大きく改善しています。
- 取り組みや事象がもたらした結果を、事実として明確に示す表現。
- ひいては
- 直接の効果を越え、さらに先の波及的な影響まで見据えるときに使う。
- 例:地域連携を強化することで、ひいては企業のブランド価値向上にもつながると考えています。
- 直接の効果を越え、さらに先の波及的な影響まで見据えるときに使う。
2-4. 議論を整理して結ぶ(深化)
- 以上のことから
- これまでの論点や事実を総括し、結論へと着地させる表現。
- 例:三つの課題を検討しました。以上のことから現行システムの全面刷新が妥当と判断します。
- これまでの論点や事実を総括し、結論へと着地させる表現。
- これらの理由により
- 列挙した根拠を踏まえて、ややフォーマルに結論を示すときに用いる。
- 例:コストとリスクを総合的に比較しました。これらの理由により今回は見送りとさせていただきます。
- 列挙した根拠を踏まえて、ややフォーマルに結論を示すときに用いる。
2-5. 敬意を添えて本題へ導く(礼節)
- つきましては
- 説明を踏まえ、依頼・案内・お願いへ丁寧につなぐ定番表現。
- 例:新制度の趣旨をご理解いただけましたら、つきましては社内周知にご協力ください。
- 説明を踏まえ、依頼・案内・お願いへ丁寧につなぐ定番表現。
- 従いまして
- 決定事項や規則を受け、その必然的な対応を丁寧に伝える表現。
- 例:会場変更が正式に決定しました。従いまして参加登録情報の再確認をお願いいたします。
- 決定事項や規則を受け、その必然的な対応を丁寧に伝える表現。
3.まとめ:『そのため』の役割を切り分けて考える
「そのため」は、前提となる事実や理由を受け、結果・結論・次の行動へつなぐための便利な表現である。
しかし、その機能は一つではなく、因果の提示、結果の整理、判断の確定、依頼への橋渡しなど複数の役割が重なっているため、使い方次第で論理の精度に差が生じる。
2章で整理したニュアンス別の言い換えを踏まえ、どの局面で何を示したいのかを見極めることで、説明はより明確になっていく。
言葉の精度が説明の芯を強め、組織の対話を支えることを改めて意識したい。

