『そして』を品よく言い換えると? レポートや論文、ビジネス文書に!|プロの語彙力

『そして』を品よく言い換えると? レポートや論文、ビジネス文書に!|プロの語彙力

今回は『そして』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。

目次

1.『そして』の一語に寄りかかる弊害

そして」は使い勝手のよい接続語だが、頼りすぎると“何をどう関係づけたいのか”が曖昧になり、論旨の流れや説明の説得力が弱まってしまう。

  • 情報を「追加」したいのか?
  • 出来事の「順序」を示したいのか?
  • 原因から結果への「因果」を述べたいのか?

こうした異なるつながり方がすべて「そして」一語に押し込められてしまい、記述の構造が平板になっていく。

そのような“表現の偏り”が現れる具体例を取り上げてみよう。

口ぐせで使われがちな例

  • 新施策を検討し、そしてその結果を踏まえて来期の重点領域を整理してください。
  • 売上推移を示し、そして見えてきた課題点をまとめてください。
  • 事業方針を説明し、そして各部の役割を明確にしていきます。
  • 調査結果を共有し、そしてそこから導いた改善案をご提示ください。
  • 企画概要を示し、そして次のステップについてご提案します。

用例を並べると、無意識の口ぐせが主導権を握り、伝え方の幅が狭まっていたことが見えてくる。

次章では、文脈に応じて選べる品位ある言い換えを整理していく。

2.『そして』を品よく言い換える表現集

ここでは「そして」を4つのニュアンスに整理し、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を提示する。

2-1. 情報を足すとき(追加)

  • 加えて
    • 論理的に情報を積み増すときの最も知的で汎用的な表現。
      • 例:新制度は業務負荷を軽減します。加えて申請精度の向上も見込まれます。
  • さらに
    • 事実や要素を自然に追加するときの基本語で、口頭・文書どちらにも適する。
      • 例:本施策は収益改善に寄与し、さらに顧客満足度の向上にもつながります。
  • 併せて
    • 別項目を同時に提示したいときに使える、事務的で丁寧な表現。
      • 例:調査結果をご共有します。併せて次回会議の資料案も送付します。
  • そのうえ
    • 好条件を続けて提示したいときに使える、柔らかく丁寧な追加語。
      • 例:本プランは導入費を抑え、そのうえ保守体制も充実しています。

2-2. 流れを進めるとき(順序)

  • 次に
    • 手順や説明の段階を明確に示す、最も基本的な順序語。
      • 例:現状分析を終え、次に改善策の検討へ移ります。
  • 続いて
    • スムーズに話題や工程を前へ送るときに使える自然な接続語。
      • 例:第一部の報告に続いて、来期計画の概要を共有いたします。
  • その後
    • 時間の前後関係を明確に示す、報告書でも使いやすい表現。
      • 例:市場環境が変化し、その後販売戦略の見直しが進みました。
  • 引き続き
    • 同じ活動を継続するニュアンスを含む、依頼・方針提示に強い語。
      • 例:全社を挙げて、引き続き品質向上のための改善活動を推進します。
  • 次いで
    • 「次に」よりもやや格式ある語で、順位や統計の説明に向く。
      • 例:A社が首位、次いでB社、C社の順でシェアを占めています。

2-3. 結果を示すとき(因果)

  • それにより
    • 手段と結果をスマートにつなぐ、因果関係の王道表現。
      • 例:新基準を導入しました。それにより審査プロセスの透明性が高まりました。
  • そのため
    • 原因から結果を導く最も自然な語で、説明文との相性が良い。
      • 例:需要が急増しています。そのため増産体制の整備が急務です。
  • その結果
    • 事実としての帰結を淡々と述べるときに使える表現。
      • 例:複数の施策を実施しました。その結果離脱率が大幅に改善しました。
  • したがって
    • 論理的な結論を導くときに使う、ややフォーマルな語。
      • 例:原材料費の高騰と人件費の上昇が続いています。したがって、コスト構造の再設計が求められます。
  • よって
    • もっとも文語的で硬い結論語。公式文書や規程文で用いられる。
      • 例:本件は基準を満たしていません。よって再審査が必要となります。

2-4. 話題を切り替えるとき(展開)

  • 一方で
    • 対比や別視点を提示するときの基本語で、議論の整理に強い。
      • 例:売上は好調です。一方でコスト増加が課題となっています。
  • なお
    • 補足情報を添えるときに使える、事務的で品のある語。
      • 例:本件の詳細は別紙をご確認ください。なお日程は後日共有します。
  • とはいえ
    • 前の内容を認めつつ、控えめに方向を変える逆接的展開語。
      • 例:業績は改善傾向です。とはいえ油断は禁物です。
  • 別の観点では
    • 視点を切り替えて説明を続けたいときに使う分析的な語。
      • 例:売上は横ばいですが、別の観点では顧客満足度が向上しています。
  • 翻って(ひるがえって)
    • 対照的な視点に切り替えるときの知的な語。やや文語的。
      • 例:新規顧客の獲得は順調です。翻って既存顧客の離脱率には課題があります。

2-5. 重要点を際立たせるとき(強調)

  • 特に
    • 複数の情報の中で重点を示す最も自然な強調語。
      • 例:本施策は多方面に効果があります。特に教育分野での改善が顕著です。
  • とりわけ
    • 「特に」よりも格調高く、文章に品を出したいときに向く。
      • 例:新制度は幅広い層に影響します。とりわけ若年層での効果が大きいです。
  • なかでも
    • 列挙した項目の中から最重要の一点を示すときに使う語。
      • 例:複数の課題がありますが、なかでも人材確保が最優先です。

3.まとめ:『そして』に頼らない文章術

『そして』に一語で寄りかかると、追加・順序・因果といった異なる関係が同じ調子に吸収され、説明の輪郭が曖昧になりやすくなる。

文脈に応じて語を選び替えることで、展開の筋道が立ち上がり、記述の精度を高めていく。

言葉の選択が説明の奥行きを形づけ、対話の可能性を静かに支えていくことを胸に刻みたい。

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