『もっと』を品よく言い換えると? レポートや論文、ビジネス文書に!|プロの語彙力

『もっと』を品よく言い換えると? レポートや論文、ビジネス文書に!|プロの語彙力

今回は『もっと』を文脈に応じて品よく言い換える方法を整理する。

目次

1.『もっと』の一語に寄りかかる弊害

「もっと」は使い勝手のよい強調語だが、頼りすぎると“どれだけ・どの方向へ深めたいのか”が曖昧になり、説明の精度や説得力が弱まってしまう。

数量・質・追加といった異なる変化が一語に回収され、記述の輪郭が平板になっていく。

そのような“表現の偏り”が現れる具体例を取り上げてみよう。

口ぐせで使われがちな例

  • 売上をもっと伸ばすための施策を検討してください。
  • 説明をもっと分かりやすくまとめてください。
  • 業務効率をもっと高める方法を探っています。
  • 顧客満足度をもっと向上させたいと考えています。
  • 企画内容をもっと具体的に示してもらえますか。

例を重ねると、表現の幅よりも慣れた言い方が先に立っていたことが分かる。

次章では、文脈に応じて選べる品位ある言い換えを整理していく。

2.『もっと』を品よく言い換える表現集

ここでは「受け入れる」を6つのニュアンスに整理し、文脈に応じて品よく・知的に言い換える方法を提示する。

2-1. さらに足すとき(追加・付加)

  • さらに
    • 情報や要素を自然に積み増す、最も汎用的な追加表現。
      • 例:本施策は収益改善に寄与し、さらにブランド価値の向上にも広がりを見せています。
  • 加えて
    • 論理的に話を重ねたいときの定番で、資料・説明文と相性がよい。
      • 例:新機能は操作性を高め、加えて保守コストの削減にもつながっています。
  • その上
    • 好条件を続けて提示したいときに使える、やや柔らかな追加表現。
      • 例:本プランは費用を抑えられ、その上サポート体制も手厚く整えられています。
  • しかも
    • 意外性や強調を伴う追加に向く、ポライト寄りの口語表現。
      • 例:本製品は軽量で扱いやすく、しかも耐久性にも優れています。

2-2. 程度を上げるとき(程度・評価)

  • 一層
    • 状態や評価をもう一段高めたいときの最も品位ある表現。
      • 例:新体制により、業務効率が一層向上しています。
  • さらなる
    • 名詞を修飾してレベルアップを示す、ビジネス文書の王道。
      • 例:海外展開に向け、さらなる成長投資を行います。
  • 一段と
    • 変化の度合いが明確なときに使える、やや情緒を含む表現。
      • 例:新サービス導入により、顧客満足度が一段と向上しています。

2-3. 比べて上を示すとき(比較)

  • 〜を上回る
    • 期待値・計画値・基準値を超えるときの最も明確な比較表現。
      • 例:今期は計画値を上回るペースで受注が進んでいます。
  • 〜に比べて
    • 差分を示しながら改善・向上を伝える、汎用的な比較語。
      • 例:解約率は昨年度に比べて改善しています。

2-4. 丁寧に頼むとき(依頼・要請)

  • 引き続き
    • 現状の取り組みを肯定しつつ、継続的な「もっと」を依頼する語。
      • 例:プロジェクト成功に向け、引き続きご協力をお願いいたします。
  • 可能であれば
    • 相手の負担を抑えつつ依頼したいときのクッション表現。
      • 例:可能であれば、来週中に一次案をご共有ください。
  • 今以上に
    • 現状を評価しつつ、もう一歩の向上を丁寧に求める語。
      • 例:安全管理について今以上にご留意いただけますと幸いです。
  • もう少々
    • 時間や量を控えめに追加でお願いしたいときに使える柔らかい表現。
      • 例:資料提出にもう少々お時間をいただけますでしょうか。

2-5. もう一歩深めるとき(深化)

  • より深く
    • 分析・検討・理解を「もっと深く」行う際の知的で自然な表現。
      • 例:顧客視点からより深く検討し、改善策を示します。
  • もう一段階
    • ステップアップを具体的に示す、わかりやすい深化表現。
      • 例:分析の粒度をもう一段階細かくし、要因を特定します。

2-6. 勢いが増すとき(感情・勢い)

  • ますます
    • 状態や期待がさらに強まる様子を自然に伝える定番語。
      • 例:市場環境の変化により、需要はますます高まっています。
  • 拍車がかかる
    • 進行中の動きが加速する様子を鮮やかに描く表現。
      • 例:人材不足を背景に、自動化へのニーズに拍車がかかっています

3.まとめ:語の選択が説明の射程を広げる

『もっと』に一語で寄りかかると、量・質・追加・深化といった異なる方向性が同じ調子に吸収され、説明の焦点がにじみやすくなる。

文脈に応じて語を選び替えることで、意図の向きや強さが立ち上がり、記述の精度を高めていく。

語彙の選択が説明の奥行きを形づけ、対話の可能性を静かに支えていくことを胸に留めたい。

よかったらシェアしてください!
目次